企業再生に成功したJALとこれから失敗しそうなトヨタ自動車グループの比較 鍵は現場と経営の一体感の醸成

ロイター通信がJALの女性新社長について書いている。さまざまな分析ができるのだがここは「現場力」に焦点を当てて分析を試みたい。このためには失敗事例が必要だ。まだ改革が始まったばかりのトヨタ自動車と自民党の例を挙げたい。

JALの経営の失敗は現場と経営の乖離にあった。民主党の依頼で経営再建に乗り出した稲盛和夫氏は経営の神様と言われたが、自分が表に出ることはなく、代わりに整備士出身者を抜擢して社長に据えた。

稲盛氏は「神様」だけあってJALの経営再建を自分がスターになれるチャンスととらえなかった。だが凡夫は違う。凡夫は自分が「神様」になりたがるのだ。

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JAXAの自己採点は60点だがBBCは高評価 おもちゃ技術も使い日本が5番目の月面到達国に

JAXAのSLIMプロジェクトが成功し日本が世界で5番目の月面到達国になった。日本の評価は辛口で「ぎりぎりの60点」だった。大学の試験で言えばかろうじて単位は落とさずに済んだというレベルだ。だがなぜかBBCが大絶賛している。コスト削減につながるかなり貴重な成功で「目標の99%は達成できたのでは」と言っている。意外と評価が高いんだなと感じてうれしくなった。

今回のプロジェクトは日本らしさがつまった良い成功事例だった。派手なことはやらないが職人一人ひとりの研鑽の積み重ねが世界的に大きく評価されたのだ。おもちゃの技術も使われているなどと伝えられている。

おそらく政治が下手に介入しないことも良かった。アメリカでも月面着陸プロジェクトが進行しているがスケジュールが延長になっている。実はトランプ政権時代に政治的な思惑でスケジュールが早まっていた。

今回使われたSORA-Qには27,500円という値段がついているがAmazonではすでに高い値段がついて売られていた。「走行中に地球を見上げるボタンをタップすると、視点が上に上がり地球が見えるぞ!」というギミックが搭載されているそうだ。

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腐敗と疲弊の原因と指摘されるダイハツの「白水天皇」 わかったこととますますわからなくなったこと

「トヨタは悪くない、全て現場のせいだ」と総括されたダイハツ問題だが、管理職側にかなり問題があったことがわかってきた。週刊文春が「「開発スケジュールが過度にタイト」ダイハツ“不正の温床”を生み出した「天皇の独裁体制」の実態 「責任者を置かず、現場に責任を……」」という記事を出しているのだが、わかったこととますますわからなくなったことがある。

今回のテーマはわかったことよりもわからないことの方が多い。よくハーバード・ビジネス・レビューに掲載されているケーススタディのような独特の趣がある。特に技術畑出身の経営者にとっては示唆に富む課題となっているのかもしれない。技術者の理想が必ずしも経営的に良いこととは限らないのだ。

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官公庁からInternet Explorerがなくせなかった理由

インターネットエクスプローラー(IE)のサポートが終わった。セキュリティ対策が行われなくなるため専門家は「何か問題があってもメンテナンスされていない無防備な家に住み続けるようなものだ」と警鐘を鳴らしている。1年前からIEがなくなることはわかっていたにも関わらずIEの置き換えは進んでこなかった。これはなぜなのだろうか?と考えた。まず「日本のベンダーはガラパゴス化していて技術者がいない」のではないかと考えたのだがQuoraで聞いたところ「そんなことはない」という。日本の技術者は優秀で常に新しい仕組みに備えているというのである。では何がいけないのか。

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イマドキの若者はおじさんたちのダサさをファッションに取り入れている

最近、YouTubeで20代のファッションの研究をしている。BEAMSが「ハズし方」について研究しているコンテンツがあった。最初は「なるほどなあ」と思いながら見ていたのだが、だんだん怪しくなって来た。多摩川でダサいおじさんファッションを見てそこからインスピレーションを得ていると言い出したからだ。

嘲笑される側のおじさんとしていい気分ではない。

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頭が小さいほどスタイルが良い女性だと考えられるようになったのはなぜなのか?

Quoraに「日本で頭が小さい女性がスタイルがいいと考えられるようになったのはいつ頃からなのか?」という質問があった。ミスユニバースで三位入賞した伊東絹子さんが八頭身美人という言葉を流行らせたという回答が複数ついていた。

その後、児島明子さんがミスユニバースで優勝した。1960年代になるとツイッギーというイギリス人女性が来日しミニスカブームが起きた。つまり頭が小さいだけでなく小枝のように細い女性が「グローバルスタンダードなのだ」という認識が徐々にできあがっていったことになる。

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言ったもん負け文化が蝕む日本の大組織

コロナも落ち着いているし岸田政権は少なくとも選挙期間は安泰だろうと思っていたのだが早速問題が起きた。年金通知書が97万人に誤送付されていたというのだ。原因はわかっておらず「業者が間違えたから」という説明がされている。後藤厚生労働大臣の最初の仕事は謝罪になった。

間違った通知書をもらった人たちは次の年金支給に向けて不安が募る。だがマスコミではあまり大騒ぎにはなっていない。年金の支払額に問題はない(と厚生労働省は説明している)上に大多数の年金受給者にとっては他人事だからなのだろう。

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イタリア・モードの誕生と発展

前回はサルトリアというイタリアの職人服が日本ですっかり定着しているということを書いた。今回はこれとは違う流れの「モード」について書く。近代モードはフランスで始まった。創始したのはシャルル・フレデリック・ウォルトというイギリス人だった。聞き馴染みのある名前だなと思ったのだが2015年にこのブログで取り上げていた。

フランスはヨーロッパ宮廷文化の中心地であり、今でもファッションの都である。だがイタリアはそうではなかった。ではイタリアでモードが発展したのはなぜだったのか。

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クラシコ・イタリアとイタリアのアパレル産業

メイド・イン・イタリアの服を見ていると明らかに異なる二つの系統がある。一つはアルマーニやベルサーチと言われるデザイナーが作る服である。イタリアではモーダと言われる。もう一つは紡績工場で作った服を職人が作っている。サルトリア(縫製技術)を持った職人をサルトと呼ぶそうだ。総合紳士服ブランドになったところもあるがジャケット専業メーカー・パンツ専業メーカーも存在する。日本には両系統が入ってきているのだが現在ではサルトリアの方が主流である。

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セレクトショップ御三家と「新御三家」

バラバラに買ってきた洋服の整理をしている。「セレクトショップ系のものが目立つな」と思ったのだが一体何がセレクトショップなのかがわからない。そこでセレクトショップについて調べてみた。

もともと戦後の日本の男性ファッションの歴史はヴァンヂャケットあたりから始まる。アメリカのIVYリーグのファッション(ブルックス・ブラザーズのことらしい)を持ち込んで国内生産したというのが始まりだと思う。代表の石津謙介さんはメディアにたびたび登場しTPOという言葉を定着させた。だがヴァンヂャケットは1970年代半ばごろから急速に業績が悪化し1978年に倒産してしまう。皮肉なことにあまりにも好調すぎたため経営を急拡大させたことが倒産の原因だったようだ。つまり大きすぎて潰れてしまったのだ。

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