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Macユーザーはなぜ信者と呼ばれるのか

最近、ヤフオクで中古Macばかりをみている。Macが必要なわけではない。なんとなく新しいものが買いたいだけだ。ジャンク沼と呼ばれる症状だそうである。だが、ヤフオクでMacをみていると「プロダクトとしての失敗」がよくわかるなあと思った。

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まず、壊れたものがよく売れてゆくという現実がある。どうやら壊れたものを修理して転売するような人たちが一定数いるらしい。つまりそれほど壊れやすいということになる。だいたい壊れる場所は決まっているので直し方のノウハウも溜まるようである。動作品になればプレミアムがつき少々古いものでも売ることがができる。つまり、Macは壊れやすく割高なコンピュータなのである。これを支えているのが信者という存在である。Macユーザーはユーザーではなく信者と呼ばれることがある。

Macbook Early 2008: core2duo

今回買ったMacAir Late 2010にも持病がある。この頃作られたMacbookにはグラフィック性能に問題があるらしく画面が乱れた製品が数多く売られている。グラフィックカードが熱に弱くハンダにヒビが入ってしまうらしい。これを直すためにオーブンで焼いたりヒートガンで温め直すという手法が紹介されている。リフローというそうだ。ものによっては全く表示できなくなるものもある。外部ディスプレイを持っていない人はそのまま壊れたと思うようだ。また数年使っていると電池が使えなくなる。Macbook Airでは使えなくなるばかりではなく膨らんでしまう。爆発しないようにするための措置のようだが、見た目はかなりショッキングである。

iMacにも持病がある。iMacは一体型のスリムコンピュータだが薄さと静かさを追求したためにこちらもグラフィックカード障害が起こるらしい。こちらも排熱処理の問題である。画像が乱れたものが多く出回っている。液晶の方に障害が及ぶと画面が黄変するそうだ。こうした障害が現れるようになったのも2010年以降である。徐々にスリム志向・静音志向が強くなり排熱に問題が出たのだろう。

こうした障害が起こるのはMacが外見を重視してきたからである。ではなぜ2008年から2010年頃が境になっているのか。色々考えてみてスティーブ・ジョブズの健康問題なのかもしれないと思った。2003年に脾臓ガンにかかり2008年に肝臓に転移が見つかった。外見重視のプロダクトが出てきたのはこの頃からである。もともと強引な物言いで知られ敵も多かったスティーブ・ジョブスだが、この頃から穏やかになったという話があるそうだ。2010年には薄型のiPadが発表された。実際のオペレーションはティム・クックが担当するようになる。そして2011年に亡くなってしまう。

Macbookが最初に発表されたのは2008年だそうだ。普通の茶封筒からノートコンピューターが取り出されて観衆が湧くというスピーチが有名である。ユーザーのあっと驚く姿が見たい、いつまでも先進的なメーカーでありたいというAppleの姿勢がよくわかるスピーチである。このコンセプトはCMでも使われた。CPUは元々あったCore2DuoだがMacのために専用の小さなチップを作ったそうだ。

小ささにこだわったせいで自分で改造することもできなくなった。2010年以前のMacには自分でメモリを交換できるものが多かった。中を開けてハードディスクを交換することもできた。ところが最近は小さな場所にユニットを詰め込んであり一旦スペックを決めたら後から変更できないものが多い。最近ではIntel製のCPUを捨てて独自のCPUへの移行を計画しているそうだ。独自だと自分たちで一から設計できるので彼らが目指している理想的でコンパクトなプロダクトが作れる。

かつてのMacは使い勝手が良かったのだが、利用者が少数派だったのでMacを使う理由が必要だった。クリエイターのコミュニティとも繋がっているので彼らがやりたい仕事がすぐにできるようになっていた。OSの操作性の変更はOS9からOSXに移行した時の一回だけでありそのあとは一度操作を覚えれば継続的に使えるようになっている。Macを買う理由はMacが欲しいからではなく、Macの方が簡単に仕事ができるからだった。

iPhoneが出てくるまでのユーザーなら「なぜあえてMacなのか」というようなことを一回は聞かれていたはずである。つまり実用性からMacを選んでいたとしてもある種の信仰として語らざるを得なかった。

だが最近のMacは本当に信仰である。その信仰はおそらくは小さくてコンピュータのように思えないコンピュータだろう。問題はその路線がもう変えられないということなのかもしれない。

Appleは以前から失敗作を世に送り出してきた。中でも有名なのが透明でファンがないというCUBEという製品である。CUBEは明らかに失敗作だった。この頃はポリカーボネートと呼ばれるプラスティックの成形技術に自信を持っていたようだが今となってはプラスティック製の製品はそれほどありがたがられない。だが、スティーブ・ジョブスは短い間にCUBEの発売を取りやめてしまったそうである。WIREDこの記事はCUBEが取りやめられた時のことを書いている。もちろん思い切ったコンセプトのものを出すこともあるのだが失敗だとわかると潔く引っ込めてしまえるというのがAppleのいいところだった。

なぜスティーブ・ジョブスは自分のアイディアを否定することができたのか。それはおそらく彼自身の意思決定だったからだろう。自分で考えたことは自分で撤回することができるのである。

おそらく今のMac信者はAppleを否定できないだろう。スティーブ・ジョブスは亡くなってしまい彼の敷いたレールを否定することができる人が消えてしまったからである。

かつてのMac信者と今のMac信者はこの意味で意味合いが大きく変わっているように思える。金属製で小さなMacという路線を否定できる人がいないのだ。

ただAppleは昔のような製造業ではないのかもしれない。もう一つの側面にiCloudによる統合があるのだが、iCloudは2011年から始まったサービスのようである。スティーブ・ジョブズの時代にはMobileMeというサービスがあったがむしろ脇役だった。クラウドによる統合はおそらくスティーブ・ジョブズが健康であればこれほどうまく行かなかったのかもしれない。

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