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日本のカメラ産業はなぜ振るわなくなってきているのか

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デジタルカメラ市場が縮小しているそうだ。オリコンのこの記事によると、2010年に比べると2019年には30%にまで落ち込んでいるそうだ。70%も減っていることになる。日本でのきっかけになったであろうスマホブームを作ったiPhone3Gsが発売されたのは2009年だったそうである。スマホがあれば大きいカメラなどいらないというのが正直なところかもしれないがそれにしてもかなりの減り具合である。

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オリコンのこの記事でCANONの人はものづくりの大切さを訴えて「良い写真を撮影したいというニーズは消えない」と言っている。確かにその通りなのかもしれない。

もちろん良い材料もある。インスタグラムの台頭もあり「良い写真を残したい」というニーズは出てきている。このため本格派だが持ち運びに便利なミラーレスの需要は底堅いそうだ。

実際に使ってみるとスマホと同じように液晶画面を覗きながら思い通りに画面構成をコントロールできるという意味ではミラーレスは使いやすい。

シェアはCANON・オリンパス・SONYと続くそうだが価格帯としてはスマホと競合する価格帯なのだそうだ。

このため、カメラ業界は別業種への進出を始めている。

減益をカバーするため、両社は対策を講じている。キヤノンは、商業印刷やネットワークカメラ、メディカル、産業機器の四つを新規事業に位置付けて収益源の拡大を狙っている。ニコンは、工作機械などの材料加工事業を新たな注力分野として掲げている。

デジカメ販売、8年で7割縮小 岐路に立つカメラメーカー

得意分野を元にそれが売れそうな先を探しているというものだ。一見コアコンピテンスの追求に見える。だがよく見ていると「何かが違うぞ」と思える。どこにでてもそこには「統合」と「顧客理解」という壁がある。

それなりにシェアがあるオリンパスはカメラ事業で赤字を出しているそうである。だが、レンズは中核技術で医療用に転用もできるために撤退に慎重なのだそうだ。つまり、カメラ事業は儲かる医療用のために存続しているような状態なのである。

映像事業の2019年3月期売上高は486億円で全体の6%。営業赤字は182億円(18年3月期は12億円の赤字)まで拡大しており、事業継続に厳しい視線が注がれる。それでも事業を続ける理由を「医療事業との関係だ」と映像事業担当役員の杉本繁実は語る。

大赤字のカメラ事業、オリンパスが撤退か存続かを決める判断基準

このことからわかるのは大切客は医療関係者であり、カメラユーザーは眼中にないということだ。これがAppleと違っている。Appleのメイン顧客は一般消費者なので彼らの声を全力で聞く。だからAppleはターゲット顧客のために完璧なものを作ろうとし、カメラメーカーは自分たちの事情を消費者に押し付けて中途半端な製品を出してしまうのだろう。

最近いろいろなカメラを探している。性能としては申し分のないものが多いのだが「あれ?」と思うことも多い。最近オリンパスのレンズを手に入れたのだが壊れている。ヤフオクにはこうした壊れかけのオリンパスレンズが出回っている。オリンパスはおそらく光学が得意で関心が高いのだろうが電子制御系に弱いのだ。レンズのフレキケーブルが壊れてしまいズームが出来なくなってしまうらしい。またフィルムにあたるセンサーの調達先も公表しないことが多いようだ。つまり自社製ではないのである。

オリンパスはおそらく光学系にしか興味がないのだろう。

その上でオリンパスの経営者は「自分たちの強みをわかってもらいたい」の一点張りだ。その上で「大得意なレンズをたくさん買ってもらえると儲かるから、そのためにはカメラを買ってもらえるといいなあ」と願望を語ってしまっている。

とはいえ事業単体の黒字化が重要課題であることに変わりはない。収益改善のカギを握るのは交換レンズだ。「レンズに必要なボディーを買ってもらえるビジネスが理想だ」と杉本は語る。

大赤字のカメラ事業、オリンパスが撤退か存続かを決める判断基準

カルロス・ゴーン被告について調べていて、ヨーロッパの人たちは分析してwhyとhowを重要視するが、日本人は自分たちの気持ちをわかってもらおうとして共感を重要視するというような仮説を立てた。実はこれは政治・司法システムだけの問題ではない。日本人は自分が動かずに相手にわかってもらいたいと考えてしまう。ところがお客さんはわかってあげる必要はなく、従って忘れ去られてしまうのだ。

さらに、CANON/SONY/Panasonicといろいろなカメラを試してみたのだが、ソフトウェアが恐ろしく使いにくい。各社がそれぞれソフトウェアを出しているのだが、OSがアップデートされると使えなくなったり、新しいカメラでは古いソフトウェアが使えなかったりする。

スマホが優れているのは「小さい」ということもあるのだが、自動でインスタグラムやYouTubeにアップロードしたりiCloudに写真を保存したりすることができるからだ。つまり統合が進んでいる。特にAppleはこの統合が得意である。さらにマーケティング戦略にも優れていて自分たちの店舗から情報を得て「今何が必要とされているのか」ということを正確につかんでいる。

日本のカメラメーカーは二つの欠点を抱える。

  • 自分の得意分野は得意だが興味がないものにはとことん興味がない。その興味がないものの中に「お客さん」が含まれる。
  • 不得意なものを捨てて誰かパートナーを探すということが得意ではない。実際には自前でできていなことも多いがそれを隠したがる。

総合すると「村意識が捨てきれない」のである。例えばオリンパスの場合にはPENシリーズというレトロなカメラをもっていてこのデザイン資産は活かせるはずである。Panasonicは電子機器に強いのだからその強みを生かすということもできる。ただ、その強みを持ち寄ってそれを一つの製品に生かすことができない。おそらくは会社の中にも子会社やセクションの分断があり協力が進まないのだろう。

このことから日本のカメラメーカーは三つの問題を抱えていることがわかる。

  • 日本人は問題を分析せず自分たちの気持ちをわかってもらいたがる
  • 日本人は自分の興味のあるもの以外には興味がない
  • 日本人は不得意さをカバーするためにお互いに協力できない

日本人は協力できず相手を理解しようという気持ちにもなれないのだろう。だから良い資産を持っていてもそれを生かす製品づくりができなくなっているのだ。

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