ざっくり 核密約の存在がアメリカの行政文書で正式確認

  • 1960年の安保改正を目前にアメリカ側が日本側に核持ち込みを容認するように求めてきた。
  • 日本側が密約によってアメリカの依頼に応じていたことがアメリカ側の行政文書で分かった。
  • 政府は核密約に対して曖昧な態度を取り続けているが逆に非核三原則解除の議論もなかったことにされている。
  • 周辺国で核兵器の脅威が高まる中、この問題は「部屋の中の象」になってしまっており、我が国の安全保障を語る上で大きな弊害になっている。
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「内政干渉だ」 ラーム・エマニュエル駐日大使のXのアカウントが一時お祭り状態に

ラーム・エマニュエル駐日大使のXのアカウントが一時炎上した。きっかけは札幌と東京でそれぞれ出された同性婚の制限が違憲または違憲状態という判決だった。ラーム・エマニュエル駐日大使の発言そのものは民主党的価値観にそったものであり特に意外な感じはない。

むしろ、日本人が持っている独特の「上下」関係の感覚がわかり興味深い炎上となった。細かな反論が多いことから「多様性敵視警察」のような人たちがいて自警団活動を行なっていることもわかる。

日米同盟をめぐる人々の感情は複雑かつ鬱屈したものとなりつつある。岸田総理が扱いを間違えれば4月の訪米は大惨事となるだろう。

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トランプ氏の外交政略が判明 同盟国の頭越しにロシアや中国との直接交渉も?

前回はCNNの記事を参考にトランプ氏がNATOなどの同盟国との関係を見直そうとしているという説をご紹介した。ただCNNには一種の偏りがあり必ずしも公平とは言えない。今回は違った角度の記事を紹介する。共和党寄りだがどちらかというとエスタブリッシュメント系の共和党支持と考えられるBloombergの記事だ。つまり共和党支持ではあるがトランプ氏の外交戦略に好意的かどうかはわからない。

トランプ氏はNATOを2つのブロックに分けようとしている。国防費の目標を達成した国と達成していない国である。目標を達成していない国に対しては新しい関税をかけるとしている。トランプワールドでは関税は懲罰として機能する。経済と安全保障がごっちゃになっているトランプ流の解決策だ。

またウクライナの支援は引き上げられる可能性があるそうだ。こうすればウクライナは停戦をせざるを得なくなる。そこで「仲介」に割って入り「アメリカが主導して仲介を成し遂げたと主張する」という作戦になっている。民主主義という大義がない分だけわかりやすい「作戦」だ。

これを日本に置き換えるととんでもない状況が生まれるが、Bloobergは仄めかし程度にしか書いていない。実際には東アジアではまだウクライナのような問題は起きていないからだ。ただアメリカが危機を作り出して「ニーズを高める」ことは十分に考えられる。

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「日本とサウジアラビアが我々をカモにしている」 40年変わらないトランプ氏の感覚が日米同盟を再び揺るがす

CNNが「米国のNATO離脱、トランプ氏の本気度はかなりのもの」というオピニオン記事を書いている。社説のような感覚のもので公平な報道記事ではないがトランプ政権でNATO離脱が起こり得るかを分析した内容だ。

アメリカのエスタブリッシュメントの間では「アメリカの国益はNATOなどの同盟国との強い結びつきによって支えられている」という見解が広く浸透している。日本もアメリカのエスタブリッシュメントたちに対してこの見解を売り込んできた。結果的に日本は安定した通商環境を低いコストで享受することができていた。

しかしながらトランプ氏はこの見解に賛同していないようだ。その根拠として挙げているのが1987年のニューヨーク・タイムズに掲げられたトランプ氏の意見広告である。全面広告でトランプ氏は「日本をはじめとする他国はアメリカを食い物にしている」と主張した。さらにニューハンプシャー州の演説で日本とサウジアラビアが「我々をカモにしている」と断定している。トランプ氏は「昭和」の感覚をいまだに持っておりこれが外交戦略の基本になっている。

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フィンランドで右派のストゥブ大統領が誕生 核兵器の域内通過を容認

フィンランドで大統領選挙が行われた。昨今の大統領選挙は泥試合になることが多いのだがフィンランドの大統領選挙は国営放送を見ながら「どうやら私が負けたようだ」と素直に認めるという穏健なものであったと伝えられている。これこそが民主主義のあるべき姿だと賞賛する人がいた。

表面的な穏健さとは裏腹に安全保障上は大きな意思決定が行われた。これまで中立を貫いていたフィンランドはNATOの核の下に収まり域内の核兵器通過を容認するものと見られている。核兵器に対して拒絶反応が強い日本にとっては非常に考えさせられる内容だ。

ヨーロッパでは「脱アメリカ」の議論も始まっている。ドイツの軍事産業のトップがNATOが脱アメリカを目指すにしても10年程度はかかるだろうとの見通しをBBCに伝えた。これも日米同盟に依存しきっている日本から見ると非常に考えさせられる内容である。

日本の政治は「政治とカネ」の問題に夢中だが世界情勢は大きく変化しており通商国家である日本にとっては極めて厳しい状況になっている。これまでの安全保障議論の枠組みであった左右対立ではもう議論を扱えないのだ。

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2012年以降のアメリカと日本の同盟関係をあらためて整理する

前回トランプ氏のNATOを軽視する発言を書いた時に安倍総理とトランプ大統領の関係について触れた。この時に「実際にはどういう関係性だったのだろう?」と思った。当時既に安保法制についてのブログ記事を書いていた記憶はあるのだが、改めて思い起こしてみると曖昧な点も多い。「意外と忘れているものだな」と感じ、個人的にまとめておくことにした。

安倍・岸田両氏とも自分のリーダーシップを誇張しレガシーを残すために安全保障と防衛を利用したがる傾向がある。日本の有権者は「アメリカの大統領と強く結びついたリーダー」に安心感を覚える傾向にあるため特に安倍総理は親密な関係をアピールし続けていた。さらに憲法解釈が多少歪んでも「アメリカとの関係さえ盤石であれば多少の矛盾は致し方ないのではないか」と感じていた人も多いはずだ。

だが実際のアメリカの大統領の対応は極めて冷ややかなものだった。オバマ大統領は安倍総理との接触を避け続けた。安倍総理が右傾化しすぎているという懸念があったからだ。トランプ大統領に至っては「安倍さんはうまく騙せたと思っているらしいが」などと発言している。

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村山政権や菅直人政権との比較 「総理大臣がすぐ現地入りすればいいってもんじゃない」問題を考える 

先日来、国と地方行政のトップがなかなか被災地に入らない問題について「どこか冷淡だ」という記事を書いている。冷淡だと思う人もいればマスコミに先導されておかしな政府批判を展開しているのではという人もいるだろう。

ここでは視点を変えてこれまでの政権がどうだったのかについて考えたい。特に菅直人総理大臣の直接介入は現場を混乱させており貴重な反面教師になっている。つまり「すぐに現場入りすればいいってもんじゃない」ことはわかる。ではどうするべきなのか。さらに岸田総理の今回の行動はどう評価すべきなのだろうか。

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羽田空港事故とダイハツ事件 日本に蔓延する「現場に安全対策を押し付ける」失敗とその弊害

【訂正】羽田空港事件では「やっぱり誘導装置は作動していなかった」とする報道が出ている。この記事は「誤誘導装置が作動していた」が「管制官は気がついていなかった」ことを前提に書いているが、当局の発表とマスコミ報道は以前かなり混乱しているようだ。

当局と当事者が管理責任を追求されることに敏感になっており事故原因調査に支障が出かねないという本稿のラインを修正するものではないが情報が更新されたためここに追記しておく。


羽田空港の事故について調べていると「原因の究明」の他に「現場のキャパ問題」があることがわかる。原因究明に重きをおく今の調査方法では管制官が悪いのか海上保安庁が悪いのかという過失配分にばかりが注目されることとなり「キャパの問題」は置き去りにされるだろう。

実は同じような問題がダイハツにもあった。こちらも「現場がズルをしていました、ごめんなさい」と総括されたと言う事例である。ダイハツ事件ではトヨタのトップがヒーローのように扱われており「これからトヨタイズムをしっかり叩き込みます」という総括になっている。そんなことを考えていると今度は「海上保安庁側も忙しすぎた」と言う報道が出てきた。

安全・安心を支えている使命感の強い人たちが押しつぶされようとしているのではないか。そんな危機感を覚える。こうした人たちは使命感が強い故に大きな声を上げることはない。ある日突然ペシャンコに押しつぶされてしまう。

マネジメントが責任を取らず全ては現場の中間管理職に押し付けられるという図式は日本社会では既に常識になっているようだ。日本では敗軍の将ほど兵について語りたがる。

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オスプレイの飛行差し止めについて初動に重大な食い違い 背景にある日米の文化差

オスプレイの飛行差し止めについてようやく国防総省が情報共有を約束し当面の飛行の差し止めを表明した。この間、数日間ではあるが日米政府のコミュニケーションに不安を感じさせる情報の遅れが見られた。つねに遠慮がちな日本政府が米軍との間にコミュニケーションパスを確立していないということがわかった。また、米軍も日本のシビリアンコントロールに対して強い警戒心を持っているようだ。このように概観すると日米同盟が意外と脆弱な基盤の上にかろうじて成り立っていることがわかる。

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オスプレイの飛行差し止めに関して日米で言い分が食い違う 国防総省は当面は飛行継続の考え

オスプレイの事故後の対応が錯綜している。日本側は原因がわかるまで飛行を中止するように要請したと主張しているがアメリカの国防総省側は「そんな話は聞いていない」と言っている。実際には事故後も飛行が確認されていた。国防総省側は「原因がわかったら必要な措置を講じます」と言っている。一体何が起きているのか。

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