ロシアの哨戒機が領空侵犯を行った。「対話路線」の岸田外交の手詰まりが招いた総決算のような事件だ。日本政府には言葉ではなく実行力のある行動が求められる。
こう書くと「この人は対立の激化を望んでいるのでは?」と不安になる人が出てくるかもしれないので落ち着いて最後まで読んでいただきたい。
当初は航空路だけを見て「ピンポンダッシュのようだ」と思った。だが事態は意外と深刻だったようだ。
まず共同通信の記事を読む。ほとんど何も書いていない。単に「可能性」を羅列している。
- 日本側の火炎弾(フレア)発射は異例
- ロシア側の哨戒飛行は航空自衛隊の対応を確認するのが目的との見方があり、意図的な領空侵犯によって日本側の出方を探っていた可能性もある。
- ロシア機の領空侵犯はこの合同演習と関連した日本への軍事的けん制の可能性もある。
- 欧米に追随する日本とロシアの関係は冷え込んでいる。ロシアはおそらく非を認めることはないだろう。
この記事で共同通信の配信を取り上げずにYahoo!ニュースを取り上げたのは理由がある。JSF氏の解説がついている。このソノブイ投下で弾薬倉が開いており航空自衛隊が緊張したのではないかと言う指摘である。中から落ちてくるものが何なのか自衛隊にはわからない。
侵入機の写真は爆弾倉の扉が開いており、実際にソノブイを投下した可能性があります。
日本はバイデン大統領に追従する形で防衛費の増額を「自発的に」表明した。その後もアメリカ追従を貫いている。当然ロシアの反発は想定できるのだから何かあったときの対応を議論しておく必要があった。
すずつきの艦長が事実上更迭されている。中国に説明するために処分を差し出した形になっている。可能性は4つある。
- 日本政府が命じた。
- 緊張激化に憤る艦長が義憤にかられて勝手にやった。
- 海上自衛隊の艦船の装備が貧弱でどこを航行しているのかよくわからなくなっている。
- 乗組員と艦長の士気が落ちていてうっかり領海侵犯したが気が付かなかった。
1であれば政府が説明を回避するために艦長を中国に差し出したことになる。だが2〜4であれば政治の側が何らかの対応を行う必要がある。だが自衛隊は憲法外の存在なので公式な発言ができない。だから政府がきちんと説明をする必要があるだろう。だが政府はその義務を怠った。
今回の偶発的な事象で仮に衝突がおきたとする。岸田総理は責任を取ってくれるだろうか。すずつきの事例から類推する限り「現場に責任を押し付けるのではないか」と思える。これは危険にさらされる現場を更に萎縮・反発させるだろう。
岸田総理は政治とカネの問題でも統一教会の問題でもきちんとした内部調査をしなかった。問題を隠蔽する狙いがあったのだろうが、内部に溜まっている不満を吸い出し問題を解決する機会も逃している。今回のすずつきの処分でも同じ様な姿勢がうかがえる。とにかく問題解決をめんどくさいものと考えて逃げたがるのである。
岸田総理は「毅然とした対応」を支持したそうだ。だがその具体的内容は極めて杜撰なものだった。これも共同通信が書いている。
- 米国をはじめとする関係国との緊密な連携
- 国内と国際社会への適切な情報発信
総裁選を優先した林芳正官房長官は「注視して警戒する」と言っている。
具体策の欠落と「対応は注視だけ」という姿勢は岸田政権では一貫した対応だった。
力強い発言とは裏腹に「え、実は何もしないんですか?」という姿勢はネット保守を増長させる。根拠なく「憲法9条が手足を縛っているのだ」と主張し「中国やロシアにナメられている」と言う高市早苗氏の言葉に一定の説得力を持たせてしまう。すべて「政府は何もしてくれないのではないか」という不安に根ざしている。
つまり「今ある諸問題を認めずに注視し続ける」姿勢は却って対立を激化させる要因になる。まずは状況が変化しつつあり問題の回避が(日本だけではなくどこの国にとっても)難しくなりつつあることを認めるべきだろう。
岸田政権の無能さは実力の欠如ではない。目の前の問題を捉えて解決しようという意欲のなさに起因している。