中国がICBMを発射した。核爆弾を管理する部隊の発射だそうで、狙いは太平洋島嶼地域だった。ホワイトハウスから反応はない。イスラエル情勢で頭が一杯になっている。日本政府は「注視」を繰り返すのみである。ただ昨日書いたようにこの無能な体制はもうすぐ終わる。問題は次の総裁候補たちだ。「分析を急ぐ」と言っている。つまり答えがない。
ここから「アメリカが同盟主義を捨てると自動的に自民党の支配体制も崩れるのだろう」と考えた。つまり、論理的に積み重ねてゆくと選挙も憲法も全く関係ないということになる。
さらに自民党はこのポストアメリカ支配時代の答えを持っていない。だから今ある状態が崩れると自動的に自民党支配体制が終わり対抗勢力の立憲民主党や維新も自動消滅することになる。
中国がICBMを発射した。時事通信は言及していないが共同通信播種後を「核ミサイル部隊を管轄するロケット軍が」としている。ターゲットはハワイを含む太平洋島嶼地域である。アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドに向けて警告を発している。あるいはこの「警告」が主目的だったのかもしれない。
44年ぶりと表現されているが、実際には実験と実務的な訓練を積み重ねてきたと考えられている。比較的長かった緊張緩和の時代が終わり次の対立期に入りつつあることがわかる。
冷静に考えると中国の狙いはある程度絞り込める。アメリカが中心となり中国の封じ込め政策を進めている。これに危機感をつのらせた中国は自国の安全を維持するために核爆弾の存在を意識するようになったのだろう。APは国内向けのメッセージも含まれているのだろうと書いている。アメリカの同盟国を牽制すると同時に自国にも「我が国は核爆弾を持っているから安全である」と示せる。新たな対立を前提にした時代が始まりつつあるのだ。
ところが日本政府は「高い緊張感を持って状況を注視する」と言い続けている。毎日のように世界情勢が変化しつつあるとニュースが飛び交っているのに、これまで何も分析してこなかったのだろうか?と不思議な気持ちになる。
小泉進次郎総裁候補は
政府を挙げて警戒監視をしっかり強めて、中国側の意図を分析してもらいたい
中国ICBM、小泉氏「重大な挑戦」 石破氏「異例の事態」―自民総裁選(時事通信)
と言っている。
何を言っているのだ、あなたは政府を自らが率いたいと志願しているのではないかと突っ込みたくなるが「これが彼の持ち味なのだろう」と諦める他ない。
ただ石破茂氏も「分析はこれからだ」と言っている。石破氏は防衛戦略に一定の知見がある。だがそれでも何も言えないんだなと思った。事態の深刻さを感じさせる。
極めて異例の事態だ。どういう目的を持った弾道弾だったのか、これから分析しなければならない
中国ICBM、小泉氏「重大な挑戦」 石破氏「異例の事態」―自民総裁選(時事通信)
自民党総裁選はこの2名に高市早苗氏を加えた3名で争われる公算が高い。高市氏は総理大臣になっても靖国参拝を続けるとしている。首脳同士の対話はほぼ不可能になるのだろうが爽快感を優先する人たちから強く支持されている。
高市早苗氏はアメリカの強さを背景に対話を遮断してでも中国に強い打ち出しをしたい。平たい言葉で言えば「ナメられたら終わり、ガツンと言い続けるべき」というのが戦略だ。
では小泉・石破両氏の戦略とはなにか。おそらく彼らはアメリカが出方を決めるまで独自の見解を出してはいけないと感じているのではないかと思った。小泉氏は本当に無能の可能性があるが石破氏が言葉を濁しているところからは日本の安全保障戦略の現在地が見えてくる。
- 独自の戦略を持たないことが戦略
なのである。
あくまでも論理的に考えるとなのだが、この戦略は2つの前提条件から成り立っている。まず、アメリカ合衆国がこれまでのような同盟優先主義を維持しなければならない。
この戦略が破綻しつつある。
東西緊張緩和が解けたことでアメリカは「国益上は同盟を維持したいが、同盟はもういらないのではないか」というジレンマにさらされた。NATOはユーゴスラビア紛争がありこのジレンマは解消されたが太平洋地域では中国などを仮想敵国に仕立て同盟を維持する戦略に出た。中流層を囲い込むために中国を敵視し「製造業をアメリカに戻す」と言い続ける必要もあった。
しかしアメリカの一般大衆はこの戦略は自分たちのためには役立っていないのではないかと気が付き始めた。まず共和党が大衆運動に乗っ取られ安全保障関連で強い影響力を持つ共和党関係者はハリス氏に接近している。
ハリス氏が中流層をなだめつつ同盟を維持できればアメリカの同盟重視戦略は維持できる。だが、トランプ政権の二期目はどうなるかわからない。またトランプ氏の後継者とされるJDヴァンス氏も同盟(正確には民主党的=偽善的な=エリートが支配する外交戦略)には懐疑的だ。リベラルなエリートが中流階級を追い詰めた結果戦争にゆくしかなくなったがその大義は明確でなかったと著書の中で述べているそうだ。おそらくかつてメインストリームだった中流階層はこうした被害者意識をつのらせている。
JDヴァンス氏は重要な人物だ。アメリカの中流階級が持っている屈折した気持ちを代弁しているからである。つまり同盟重視主義が民主的に修正される可能性はそれなりに高いということになる。
バンス氏がイラクに送らた時代のアメリカは同盟維持のために多少のいざこざが必要とされていた。ところがこの情勢がロシアのウクライナ侵攻で逆転する。これまでは「煽る必要」があったがこれを抑える必要が出てきた。バイデン政権はこれに対する答えを持っていない。だからウクライナ紛争もイスラエルの暴走求められない。つまりハリス氏もこれを止められないだろうということになる。
今回のICBM発射について気になることがある。アメリカが声明を発表していないようなのだ。BBCは周辺諸国が騒いでいると言う記事を書いている。APも中国の国内向けのメッセージだろうと論評している。だが、どちらにもホワイトハウスの反応が書かれていない。
大統領選挙まで40日あまりのアメリカでは両陣営ともイスラエル情勢で頭が一杯になっている。バイデン大統領は国連総会でガザ地区の和平交渉を急ぐべきと主張した。民主党の一部にイスラエルへの反発が強まっている。トランプ氏はゼレンスキー大統領を「セールスマン」呼ばわりした。つまりアメリカの納税者からカネをむしり取っていると主張している。
日本は台湾海峡有事と太平洋島嶼諸国の緊張という2つの懸案事項を抱えているが、アメリカが明確な声明を発表するまでは「分析し注視する」としか言えない。
- 独自に安全保障戦略を考えないのだから当然戦略はない
アメリカがなにも反応しなければ「分析、情報収集、注視」を言い続けることになる。国民がこれに気がついたときが自民党体制の終わりだ。
だがこれは同時に自民党批判に依存してきた維新と立憲民主党の終わりにもなるだろう。批判する対象がなくなれば当然政党の存在意義は失われる。
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