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アメリカ合衆国が在日米軍に作戦権を付与 日本への揺るぎないコミットメントを約束

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防衛大臣と外務大臣が参加する日米2+2が開催された。今回のメインテーマはアメリカ側の在日米軍の権限拡大だった。時事通信が報道しているが日本側の報道を見ても一体何が行われたのかがよくわからない。なお指揮命令系統とは「米軍が自衛隊を指揮します」という意味ではない。

そこで捜索範囲を拡大し英語情報にまで手を広げてみた。背景にはトランプ氏の台頭に焦りを募らせる日本側が永続的なコミットメントを要求したことがあるようだ。代わりに日本側は台湾有事の際に日本の基地を使えるようする約束をしている。

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今回の件について調べると、政府の声明をそのまま伝えて憶測で埋めるのが報道と考える日本のメディアと背景情報を取材する英語メディアの質の違いがよく現れている。と同時に日米同盟推進の日本の議員たちのどこか不自然で不安げな反応も説明がつく。

日本でこの問題を取り上げた共同通信は「有事の際のアメリカの関与が強まる懸念」があると指摘している。組織再編の背景を説明をしない日本政府に対して憶測で間を埋めるしかない。

だがポリティコ(欧州版)は全く違った書き方をしていた。国務長官と国防長官の発言として「トランプ氏が大統領になったとしても(even if)」関与を残すようにしたと書かれている。

Speaking to the media after meeting their Japanese counterparts, both Austin and U.S. Secretary of State Antony Blinken sought to reassure Japan that the security commitments would remain intact even if Donald Trump wins the American presidential election in November.

US revamps Japan command amid China’s threats(Politico)

アメリカ側の説明によると、それは日本側の非公式な懸念に応えるためのものだった。

国会答弁で日本政府はよく「外交上の問題なのでお答えしかねる」という表現が使われる。実は東西冷戦が終わった時点で日米同盟が見捨てられるのではないかという不安を抱えていて、それが今でも続いている。

安倍政権が「限定的集団自衛権」で日本の領土にあるミサイルでグアムの基地を守ってあげるなどと約束するのはこの見捨てられ不安の顕著な現れである。だが日本ではこの見捨てられ不安は「語ってはいけない重大な秘密」とみなされる。故に日本国民はこの政府が持っている不安を共有できない。結果的に唐突感が生まれ憶測の原因になる。

Japanese officials in private raised concerns about Trump’s lack of interest in shoring up the alliance system, both in Europe and in Asia.

US revamps Japan command amid China’s threats(Politico)

では、アメリカ側はこれにどう応えたのか。これが長島氏の「様々な意見があった」の内容である。

バイデン政権はアメリカ軍を整理し対中国包囲網を形成しようとしていた。中国の脅威を誇大宣伝することで「民主主義陣営対専制主義陣営」という東西冷戦に代わる構造を作ろうとしたわけだ。このためアフガニスタンからの撤退を試みるがこの作戦がロシアによるウクライナ進行を誘発した。

世界情勢が混乱すると今度はハマスがイスラエルを攻撃しアメリカはウクライナとイスラエルという2つの厄介な問題を抱えることになった。結果的に中国包囲網を作ることはできなくなり、台湾への武器供与を通じてプレゼンスをかろうじて確保するというのが現在アメリカができる精一杯の軍事活動になった。そしてそのまま大統領選挙に突入し「とても外交安全保障について語るどころではない」状態が生まれている。

安倍政権では解釈改憲でこの見捨てられ不安を払拭しようとしたが岸田総理は更にこれを前に一歩進め「防衛増税を通じてアメリカの気持ちを引き止める」という手段に出る。国内の根回しが不十分だったこともあり、今でも財源の見通しがついていない。本来ならば景気を好転させて国民生活を豊かにしてから増税というのが筋だが岸田総理にはそのような組み立て能力はない。

実は駐日米軍はハワイに拠点があるインド太平洋軍の出張所扱いで独自に作戦を実行できなかった。そこで駐日米軍に作戦の立案機能を持たせて「出張所から支社」に格上げしようとしたのだろう。このイニシアチブがどこからでたのかは定かではない。

当初オースチン国防長官は「大将級の作戦司令本部ができる」と説明していたようだが、今回の決定では中将級(これまでと変わらない)にとどまるようだ。首脳会談が行われてから「誰を派遣するのか」ということになり話がまとまらなかったのかもしれない。日本側の要求に応えようとしたが「ほぼゼロ回答だった」というところから日本側が働きかけたと考えたほうが良さそうだ。

内部でどのような議論があったのかはよくわからない。ウクライナやイスラエルなどのややこしい問題を抱えているのに「日本まで面倒を見ていられない」という意見は出たかもしれない。日本に固有の問題はなくせいぜい朝鮮半島有事と台湾有事の補給基地のような扱いである。本来ならば作戦機能は必要がない。

だが日米同盟への強い信頼を背景にしてきた自民党にとって見れば日米同盟の弱体化は党の存続に関わる一大問題である。

大統領選挙が迫り「もしトラからほぼトラ」などと言われるようになり日米同盟推進の人たちはかなり焦っていたのではないかと思う。そんななか人事的にはゼロ回答だが形式的には作戦立案の権利を与えるというのが今回の約束だったのではないかと思う。ただそれが「どんな作戦」で「いつ実行されるのか」は依然曖昧なままだ。

もちろんこの内容でアメリカの政権がトランプ氏に変わったときの盤石の備えができたなどとはとても言えない。トランプ氏は現在「民主主義を終わらせる」と解釈されかねない発言を繰り返している。それでも日本側には「日米同盟は未来永劫日本を守ってくれるはず」という保証を必要とする人が大勢いたのだろう。こうした背景を考えると自衛隊の処遇や憲法上の位置づけなどという「些末」な問題が政治的アジェンダとして語られることはなさそうだ。

日米同盟の将来に深刻な影がさしていると考えると野党側もこれに代わる対立軸を作ることはそれほど難しくないだろう。だが「日米同盟の将来には不安がある」とほのめかした時点で不安耐性が極めて低い日本人は野党の言うことは聞かなくなるはずだ。

日米同盟と憲法九条はすでに信仰の域に達している。それは東大寺の巨大な大仏のようなものなのだ。

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