防衛省が統合作戦司令部を発足させた。産経新聞が【独自】として日本が長射程ミサイルの運用を始めるという記事が出ておりかなり驚いた。更に驚いたことにコメント欄では「独自に核兵器を持つべき」という声も散見される。トランプ大統領がウクライナを見捨てつつある中で日本人の意識も変わりつつあるのだなあと感じた。ただし共同通信は「日米連携が基本」と産経新聞とは真逆の印象の記事を出している。
総論として「どうしよう、どうしよう」と迷いを深め、何も決められなくなるといういつもの日本病の症状が出ているのだなあと診断せざるを得ない。
石破総理はこの件について何も情報発信をしていない。もうこの人では日本の将来はもたないだろう。
統合作戦司令本部というものが作られたそうだ。バイデン政権下で日米同盟の深化/強化が進められていた頃の名残なのだろう。ヤフーニュースのコメント欄も見てみたが一体それが何を意味するのか、政府が何を目指しているのかなどはさっぱりわからなかった。
さらに産経新聞が「<独自>長射程ミサイル運用原則、日本主体で発射 24日発足の統合司令部 米軍頼らず」という記事を出している。かなり力(りき)んだ内容だ。しかし共同通信は「司令部、長射程ミサイルも運用 反撃能力で米の協力不可欠」という表現になっている。まるで真逆。
この2つの記事からおそらく日本の政権が国家方針を決めきれていないんだろうなということがわかる。だからそれぞれが好き勝手な報道を行っている。今回はその傍証として王毅外相の訪日について別のエントリーで研究する。おじいさん政治家たちが完全に王毅外相にリーダーシップを奪われており、日本政府は中国の一方的な既成事実づくりに反論できなかったようだ。
共同通信の記事を読むと、防衛省・自衛隊が「日本がアメリカの下請けになる」という指摘をかなり気にしていることがわかる。このため「日本の防衛装備品は日本が独自に運用しますよ」と強調している。しかし実際にはアメリカの援助なしにはやって行けないシステム構成になっている。さらに産経新聞はこれを勝手に言い換えて「日本もいよいよアメリカと対等になるのだ」という印象操作を行っている。
トマホークを使う場合は当面米軍のシステムを利用する予定。結果的に米軍の指揮に組み込まれるのではないかとの懸念があるが、防衛省幹部は「発射などの判断は日本側が独自に行う」と強調した。
司令部、長射程ミサイルも運用 反撃能力で米の協力不可欠(共同通信)
産経新聞は元号表記になっていて極めて読みにくい。ちなみに現在は令和6年度・令和7年である。司令部は作られたものの「統合指揮ソフトウェア」の開発は2026年には完成せず、2027年になるということ。別のエントリーでマイナンバーカードについてまとめるつもりだが日本のITベンダーはまともにソフトウェア開発ができなくなっているため「これもどうなる変わらないよなあ」という気がする。仮に意気込みが本当だったとしても実効性のある政策は作れない。作ったとしても実行できない。これが現在我々が直視すべき日本の姿である。
ただ、直ちに運用できるわけではない。7年度に先行配備する長射程の米国製巡航ミサイル「トマホーク」の運用には互換性のあるシステムを持つ米軍の支援が欠かせない。また、主軸となる長射程の国産巡航ミサイル「12式地対艦誘導弾能力向上型」も7年度から配備されるが、一元運用に必要な「統合指揮ソフトウエア」などの段階的整備には9年度まで要する。
<独自>長射程ミサイル運用原則、日本主体で発射 24日発足の統合司令部 米軍頼らず(産経新聞)
産経新聞のコメント欄において、識者たちは日本が独自運用ができるという印象をできるだけ払拭したかったようだ。一方でトランプ大統領の台頭に揺さぶられていることもあり一般コメンテーターレベルでは「独自核武装もやむを得ないのではないか」という指摘も見られ「日本も変わったものだなあ」と感じた。
とはいえ全体議論(ここでは産経新聞と共同通信)を見ると「アメリカについて行ったほうがトクなのか」「もうあてにできないのではないか」という相反する気持ちに揺れている人が多いことがわかる。いつまでもメリット・デメリットを考えて意思決定ができず、結果的に眼の前の現実に押し流される。
いつもの日本病がここでも発症しているのだなあと感じた。