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ロシアは外交的勝利を革新 トランプ大統領はウクライナの原発所有計画に夢中

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プーチン大統領とトランプ大統領の電話会談が終わり今後の協議の枠組みが作られた。ロシア側は外交的勝利を確信したとBBCが皮肉交じりに伝えている。このニュースの一貫として「トランプ大統領が原発の所有に意欲を見せた」という記事が出ている。前回は「チョルノービリ(チェルノブイリ)」を意味していると考えたのだがREUTERSはザポロジェ(ザポリージャ)だと書いている。

とにかくトランプ大統領は不動産獲得ゲームに夢中になっているようだ。ロシアはトランプ大統領と交渉するためには何をすべきなのかというコツを的確に掴んだようだ。「モノポリーゲーム」で遊んであげればいいのである。

仮にトランプ大統領が米軍の最高司令官として信頼できるのであればトランプ大統領に働きかけて日米同盟の維持を訴えるのが得策ということになるし、そうでないのならばそれなりの対策を検討すべきだ。みなさんがどう思われるのかはこちらからはわからないが、ご意見のある方はコメント欄なりQuoraなりにフィードバックをお寄せいただきたい。

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従前のBloombergの報道ではトランプ大統領は在ウクライナの資産分割を協議しているものとされていた。ロシアがザポロジェ(ザポリージャ)の原発を管理し、アメリカはチョルノービリ(チェルノブイリ)を管理すると行った具合だ。

16日夜には大統領専用機で記者団に対し、「特定の資産の分割」方法を両者が既に話し合っており、その中には発電所も含まれると語った。これはウクライナ南部ザポリージャ州でロシアが占拠する原子力発電所を指している。

米ロ首脳協議へ、ウクライナ抜きで進展も-トランプ氏が資産分割示唆(Bloomberg)

この記事が頭にあったため「ロシアとアメリカが分割協議をしているのだろう」と思っていた。が、REUTERSの見立ては違っていたようだ。

また、ホワイトハウスの声明によると、トランプ大統領はウクライナの原子力発電所の運営を支援し、場合によっては米国が所有する可能性を示唆した。ロシア軍が占拠するウクライナ南部のザポロジェ原子力発電所に言及しているとみられる。

米ウクライナ首脳が電話会談、トランプ氏は原発の米所有を提案(REUTERS)

つまり「どの原発なのか」に言及していないことこそが、今回のポイントということになる。トランプ大統領は最低でもチョルノービリは取れると考えており「交渉の天才である自分が関与するならばザポロジェもなんとかなるのではないか」と思っている可能性があるということだ。

ただしその「警備計画」は極めて曖昧。まずはヨーロッパにウクライナを支援させるという構想を持っている。これまではアメリカがヨーロッパの資産と権益を守ってきたのだから、今度はアメリカがヨーロッパを利用するということなのだろう。一方でリストラ策も検討しておりNATOから最高司令官を引き上げるという構想が持ち上がっている。実際の影響はさておき、象徴的には非常に大きな意味を持つだろう。特にロシアは大きな意味を見出すはずだ。

ロシアはとにかく今の軍事作戦を継続できればよい。プーチン大統領はおそらくカードは持っていないが「停戦合意の用意がある」とカードをちらつかせつつトランプ大統領とダラダラと交渉をすれば良いのである。安倍総理との間に交わされた「北方領土2島返還の可能性」と極めてよく似た手法である。

プーチン大統領の手法にもそれなりのパターンというものがあるようだ。

2014年にはソチ五輪で融和・強調の姿勢を見せヨーロッパが安心したところでクリミア半島の併合に動いた。今回はトランプ大統領にホッケーの試合を持ちかけている。ある意味これは「攻撃のフラグ」だが、トランプ大統領はプーチン大統領の姿勢に好印象を持っていると伝えられている。

トランプ大統領はおそらく「交渉の天才である自分が軍隊を直接指揮できるようになれば効率的にアメリカの権益を守れるだろう」と考えているようだ。これに「口うるさい軍のトップをリストラすれば自分たちの思い通りに操れる」とか「いっそAI化してしまえばいいのではないか」などと考える人達が同調する形となり、軍のトップのリストラ計画が進行している。

国防総省は政治的リスクなどを訴えて再考を求める考えだが、トランプ大統領と側近たちを説得しきれるかどうかは未知数である。

こうなると「一度何らかの混乱が起きるまでトランプ大統領は考えを改めない」可能性がある。そして日本もその混乱の影響を受けるかもしれない。

保守化した最高裁判所はトランプ大統領が白人・キリスト教の秩序を回復してくれるのではないかという期待を寄せていた。しかしシロウトの発想というものは恐ろしいもの専門家が考えつかなかったような憲法秩序の破壊につながっている。

同じように共和党タカ派も「トランプ大統領は対中国封じ込めに利用できる」と考えて協力してきた可能性がある。しかし、何故かトランプ大統領は軍隊を「アメリカの不動産警備業」と考え始めている。対中国シフトという大目標は次第にぼやけ始めているようだ。

その一つのあらわれの1つが対イランである。対中国シフトを強化したいならばイラン都の全面戦争は避けるべきだろう。だが、アメリカはイエメンにあるフーシ派拠点を攻撃してイランに圧力をかけている。

イスラエルのネタニヤフ首相の政権維持のためにはイランという強い敵が必要だ。このためイランに対する攻撃をアメリカにけしかけているようだ。イスラエル高官の御用達になっているアクシオス経由で「トランプ大統領がイランに対して核合意の期限を2ヶ月に設定した」というニュースが入ってきている。

アクシオスの記事は、仮に合意がまとまらなければイスラエルとアメリカがイランの軍事施設を攻撃するだろうという見込みを宣伝しているというというのがポイント。緊張が劇的に高まることがわかっているためアメリカ側の高官は時間の引き伸ばしで抵抗したようだが「だったら二ヶ月は待ってやる」ということになったようだ。

このアクシオスの情報を加味して整理し直すと、トランプ大統領は不動産の管理に執心しなおかつ軍隊を「交渉の道具」と考えていることになる。それ以外の軍への投資は単なる無駄金ということになり日本の防衛にはさほど関心がないのだろうと予想することができる。

多くの人は「トランプ大統領に戦略的視点がない」と主張するがそうは思わない。しかしその戦略的視点の正体はモノポリーゲームにどう勝ち抜くかというものであり、自由主義陣営の盟主としての存在感を確保するためにどのように同盟国と協力するかという日本が期待するものではなさそうだ。

本来ならば日本の政治は「日米同盟中心主義か国連中心主義か」という不毛な対立から脱却し、新しい状況にどう適応するのかを考え始めなければならないのだろうが、そのような兆しは全く見られない。

冒頭に宣言したとおり「米軍の司令官としてトランプ大統領に期待できるか」という評価は読んでいる方にお任せしたい。ご意見のある方は何らかの形でフィードバックを頂きたい。

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