海上自衛隊の護衛艦「すずつき」が今月4日、中国浙江省沖の中国領海を一時航行したと共同通信が伝えている。ネットでは「中国に一泡吹かせてやった」とする声が多かった。だがなぜ遅れて報道されたのか、なぜ外務省が慌てて調査すると言っているのか、なぜ岸田総理がいない間に報道されたのかなど、報道には不自然な点が多い。
自衛隊の不祥事が相次いで見つかる中で文民統制上深刻な問題が起きているのではないかとすら思える。
すずつきの中国領海航行はすでに中国側には技術上の不手際だったと説明されているが日本国民にはなんらの説明も行われていない。本当に知らなかったのか本当のことが言えないのかはわからないが、なんらか日本国民には説明できない理由があるのだろう。
やりたい放題の中国に対して十分に対応できていないという鬱積した気持ちは海上自衛隊・海上保安庁・日本国民の間で広く共有されているかもしれない。
中国は尖閣諸島沖の日本のEEZなどを中国公船が度々航行しており6月には日本のEEZの中にポッカリとあいた公海にブイも設置されている。日本政府の対応は及び腰でブイの設置に対しては何らアクションを起こしていない。また中国が海警法が制定されていこう尖閣諸島沖の警備を担当する人たちにとっては日々危険な状況が続いている。
仮にこれが日本政府の対抗措置だったとすると日本政府は「技術的にたまたま間違えてしまいました」程度のことを言うのがやっとだったことになる。間違いなのだから今後は再発防止に務めなければならない。つまり、岸田政権はこの程度のことしかできないし言えないことを意味する。
しかし、実際には政府が自衛隊をきちんとコントロールできていないと考えたほうが何かと辻褄が合う。
特定秘密の問題では「資格保持者」だけでは現場が回らないという事情が浮き彫りになっているという。実は問題が顕在化するまで待っていた可能性がある。つまり海上幕僚長の首と引き換えに「政治の要求は日々厳しくなってきているが待遇改善が追いついていない」と示すことができる。制服組にはそこまで差し迫った気持ちがあるということになる。
また防衛費使い残しの問題でも「直前になって何でも買ってやるからリストを作ってこいと言われた」などというXの投稿が出回っている。政府は現場に諮ることもなく外交を優先し予算の倍増を計画した。だが現場自衛官の待遇改善や新規自衛官の待遇改善に使われることはなく防衛装備品の調達計画もいかにも場当たり的だ。不満を感じる人が位てもおかしくない。
憲法改正議論も政治家同士のおもちゃになっており自衛隊は憲法上未だに明確な位置づけがない。このような状態で「士気を保て」と言われてもそれは無理というものだろう。
今回の件と関係するかはわからないが「すずつき」の一般公開が中止されている。理由は説明されていないが艦長らに対して何らかの調査が行われるものと考えられている。さらに、今回の発表も岸田総理の不在を狙って「政府関係者複数人」からマスコミに通達された可能性がある。
仮にすずつきの艦長に対して何らかの処分が行われたとする。おそらくネットにいる人たちを中心に「彼らは「正しいこと」をしたのになぜ処分されるのだ」という反発が出るだろう。
一方で独断専行を許せば文民統制という自衛隊の最も重要な統制規範が破られることになる。自衛隊を軍隊と呼ぶことには問題はあるだろうが「軍事組織には規律が必要だ」という点に異議を唱える人はいないだろう。
中国はまるで「詰将棋」のように緻密に中国に有利な状況を作り出そうとしている。一方で日本のやり方はどこか場当たり的で戦略的一貫性がない。
岸田政権に対する風当たりは強まっており時事通信の政権支持率はついに15%台にまで落ち込んだ。また自民党政権よりも政権交代のほうが望ましいとする人が増えている。こんな状態では自衛隊の中に渦巻いている問題を抜本的に解決することなど望めそうもない。
今後、自民党政権は自衛隊接待の「裏金問題」などへの対応に追われることになるだろう。Quoraではそもそも輸出を許されない防衛産業には未来はなく多額の裏金を使ったうえで接待するような旨味はないというようなコメントが寄せられた。防衛産業から撤退したい企業が多いのではないかというのだ。真相解明と防衛産業の立て直しにはにはかなり腰を入れた調査が必要になるはずだが自分たちの派閥の裏金問題すら処理できなかった岸田政権に自衛隊の裏金問題を処理することなどできるはずもない。
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