宮崎県の日向灘沖で震度6弱の地震が発生した。人的被害は確認されていないそうだが「南海トラフ地震の兆候なのではないか」として警戒が高まっている。だがその警告を見ても一体どの程度心配しなければならないのかが全くわからない。
どうしてこうなったのかを考えるとやはり政治的な意図がきっかけになっていることがわかる。政治は災害を必要としている。こうした条件のもとでは専門家も何も言わないという選択肢はなかっただろう。仮に地震が起きてしまった時に「あの時何も言わなかったではないか」と批判される可能性がある。
結果的に曖昧な情報が一人歩きし偽情報の蔓延と慣れを生み出してしまう。
Yahoo!ニュースに注意報の内容が出ていた。気象庁からの引用だそうだ。平常時に比べ相対的に高まっていると書かれているだけであり具体的にどれくらい高まっているのかがさっぱりわからない。つまり行動の指針にならない。
本日(8日)16時43分頃に日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生しました。この地震と南海トラフ地震との関連性について検討した結果、南海トラフ地震の想定震源域では、大規模地震の発生可能性が平常時に比べて相対的に高まっていると考えられます。今後の政府や自治体などからの呼びかけ等に応じた防災対応をとってください。
もう少し詳しく調べてみよう。
気象庁の会見によると具体的には数百回に一度なのだそうだ。例えば平時に1000回に一度だったとする。これが2倍になると500回に一度ということになる。つまりほとんど起きないが起きないわけではない程度ということになる。
この情報は南海トラフ沿いで巨大地震が過去に繰り返し起き、短期間で続発した例もあることから導入された。ただ、必ず起きると伝える地震予知情報ではない。平田会長は記者会見で「世界の事例ではマグニチュード(M)7以上の地震発生後、1週間以内にM8級以上の地震が起きるのは数百回に1回ぐらい」と説明。それでも「普段より数倍、(地震が)発生する可能性が高くなった」と話した。
そもそもなぜこんなことになっているのか。
東京新聞が今年の3月に「科学的に妥当とは言えない」…南海トラフ発生「70〜80%」めぐり新論文 東京電機大の橋本学特任教授らという記事を出している。実は過去の古文書が証拠として採用されており科学的ではないと指摘されている。
時間予測モデルを巡っては、13年の政府の委員会が確率を検討した際、地震学者たちが採用に反対。だが、当時は論文としてモデルを正式に否定したものがなかった。防災・行政側の委員が、確率を下げると防災予算の獲得に影響するなどと強く主張したことから、高確率が出るモデルを採用した経緯がある。
「科学的に妥当とは言えない」…南海トラフ発生「70〜80%」めぐり新論文 東京電機大の橋本学特任教授ら
それでもこのモデルが採用されたのはなぜだろうか。第一にごく稀にしか起こらないのだが実例はある。だから、実際に地震が起きた時に「なぜ予測できなかったのだ」と結果論で批判される可能性がある。つまり責任回避のためには危険な方を採用したほうがいい。だが、科学者が声高に警告しても無視されることなど珍しくない。例えば気象災害についての警告は政治から無視され続けている。また、実際に地震が起きるまで志賀原発の下にある断層は無害だとされていた。
おそらく南海トラフ地震は予算獲得が難しい地方に予算を配分するために政治的に利用されている。そのスローガンが国土強靭化だ。
国土強靭化は二階幹事長が和歌山に公共工事利権を引き込むために利用されてきた。この時に合理的な検証を求める声を感情的に恫喝して黙らせるという手法が採用されている。何か災害が起きると「それ見た事か」と結果論で騒ぎ出すのが日本人だ。
二階幹事長にこのように言われると地震学者などひとたまりもないだろう。
さらに、民進党の蓮舫代表を念頭に「かつて『300年に1度の洪水のためにスーパー堤防を造るのか』と批判された方が野党第一党の大幹部の中にいる」とも指摘。野党からのヤジに「黙って聞け」と反論する一幕もあった。
自民党のミスター公共事業二階俊博幹事長が「国土強靱化」連発、安倍晋三首相も「国民運動として進める」とエール
それでも数百年に一度でも起きる可能性があるならば備えておくべきだという声はあるだろう。確かにその通りだ。しかし、今後地域で同じような地震が起きるたびに「数百回に一度かは当たりますからね」と連呼されることになると想像してみるといい。
気象庁は広い地域に震度7の地震が起きる可能性があると書いている。だが注釈がある。「可能性を整理しだだけで実際の予測ではない」と言っている。
なお、この被害想定は、発生過程に多様性がある南海トラフ地震の一つのケースとして整理されたものであり、実際にこの想定どおりの揺れや津波が発生するというものではありません。また、南海トラフ巨大地震は、千年に一度あるいはそれよりも発生頻度が低く、次に発生する南海トラフ地震を予測したものではないことにも留意が必要です。
南海トラフ地震で想定される震度や津波の高さ
例えばこんなことを言い出す人もいる。厳密に考えれば「こんなことあり得ない」と科学的に証明することなど不可能だ。実際に宝永南海地震と宝永大噴火は歴史的に近い時期に起きたためにこの二つを関連づけて考える人もいる。
だが、仮に地震が起こらない状態は続けば注意を呼びかけられた地域住民たちはおそらく「ああまたか」と思うようになるはずである。Jアラートみたいなものである。だが北朝鮮からのミサイルもおそらく数百回に一度は大惨事を起こすかもしれない。現在は衛星発射実験と兵器使用を区別していない。つまり北朝鮮が衛星発射実験を兵器使用に切り替えても捕捉できないのだ。
今回、岸田総理も外遊と長崎の平和祈念式典の出席について検討をするという。確かに大災害予報が出ているのだから当然といえば当然に思えるが、確率は数百分の一である。ただ、エマニュエル駐日大使が長崎の式典のボイコットしたため、岸田総理も出席したくないと考えているかもしれない。その言い訳には使えそうだ。
また、お盆シーズンなので観光客が減少する可能性がある。各地のホテルも「絶対安全なんですよね?」と聞かれれば「注意報が出ていますからね、数百回に1度は本当に地震があるかもしれません」と答えざるを得ない。
政府は偽情報を拡散させないようにと言っているが、こうした曖昧な女医ほう提供はは返って偽情報を誘発するだろう。例えば冒頭に挙げた野口健氏の発言も「厳密には起こらないとは言い切れない」のだからこれを偽情報だと断定することは難しい。だがあまりにも極端な想像なので「考えるのが怖くなった」というコメントがついている。つまり考えてもどうしようもないから考えないようにするという極端な反応になってしまうのだ。
極端な「リアルな想像」と慣れによる無関心というあまりにも極端な二極化が政治的な利権誘導に端を発していると考えるとこれもまた政治的人災なのかという気がする。