中国のハッカーがアメリカ財務省から文書を盗み出したとして話題になっている。当局は中国政府の支援を受けたハッカーの仕業と断定した報告書を送ったそうだ。
これはあくまでも「アメリカのニュース」として扱われているのだが、当然日本に対知るサイバー攻撃が気になる。石破政権が何もしないのは中国の富裕層に期待している体と思うのだが、マスコミの無反応も少し気になる。中国に忖度していると言うよりも自分たちの頭で考えられなくなっているのかもしれない。問題意識は極めて希薄だ。
ABCニュースが「中国系のハッカーがアメリカ財務省から情報を盗み出した」と報道している。これと同時にソルト・タイフーンと呼ばれるハッキング集団についても扱っていた。ソルト・タイフーンはアメリカの要人の発言や行動履歴を盗み出そうとキャリアを狙っているようだ。最近9社目のキャリアが被害社リストに入ったばかりである。
当局は議会に対して中国政府の支援を受けたハッカーが財務省から文書を盗み出したとする報告書を送ったそうだ。
当然名指しされた中国政府は反発しているが自国の情報が何者かに盗まれている以上は何もしないわけには行かないというのがアメリカ政府の考え方のようだ。
ここでふと「日本の情報はどうなのだろう」と気になった。もちろんアメリカ合衆国ほど関心を持たれていないという可能性は十分にあるが、もしかしたら「気がついていないだけ」なのかもしれない。
記憶力の良い人は2023年の事件について覚えているだろう。ワシントン・ポストが日本の防衛省からの情報漏洩について扱っている。アメリカから指摘があったが浜田防衛大臣(当時)は「情報漏洩は確認されていない」と主張していた。盗まれるのも問題なのだが気が付いていないとしたらもっと問題だ。いずれにせよ日本の防犯意識と防犯能力はこの程度である。
国民民主党は早期に能動的サイバー防御について検討するように石破政権の申し入れていた。2024年中に法案を作るべきというのが国民民主党の主張だった。しかし石破政権は「予算を通すこと」で頭が一廃になっており、どうにかして三党協力の枠組みを維持したい。当然議論を長引かせようとしている。
NHKにサイバー攻撃についてまとめたセクションがあった。どうやら年末の繁忙期にインフラ系の会社(交通と金融系)が随分狙われているらしい。
JALにサイバー攻撃がありチケット発券系のシステムが障害を起こした。同日に三菱UFJ銀行が狙われ、後日にりそな銀行、みずほ銀行も被害にあったようだ。
これらの事件は「個別の案件」として扱われておりなおかつその後にどこの国から(もちろんこれは日本も含めてだが)から狙われたのかという情報が開示されることはない。また相次ぐ被害を受けて日本国政府が動いたというニュースはなくマスコミもそれを問題視することはない。被害があった・大変だった・被害が収まった・ああ良かったねという「天災」のような扱いになっている。
中国からアメリカへの攻撃に関しては「中国政府が関与していると決めつけるのはよくないのではないか」とか「アメリカ合衆国のプロパガンダなのでは」という人もいるかも知れない。しかしもはや「中国政府は盗む」という前提に立って政府を挙げた対応を急ぐべきなのではないかという気がする。ご近所さんを疑いたくないという人はいるだろうが、いずれにせよ泥棒がいるのだから家に鍵をかけて防犯意識を高める必要がある。
また現状維持バイアスが強い日本でこの手の指摘をすると「何でも政府が対応すべきなのではないか」と言い出す人が出てくる。誰かが何かを指摘すると自動的に「いやその主張は間違っているのではないか」という理由を探し始める日本人は多い。
加えて石破政権には政権固有の問題もある。アメリカ合衆国では日本政府の高官が中国系企業から賄賂を受け取ったのではないかという疑惑の目が向けられている。その企業の幹部は岩屋毅氏(現在の外務大臣だ)も工作の対象になっていたと主張している。中国寄りとみられる現在の政権が果たして中国に対して主張すべきところは主張してくれるのかと自問してみたが「やはりそれはあまり期待できないのだろうなあ」と言う気がする。
マイナ保険証や電子処方箋システムの導入にあたってはデータの不備が見つかっている。日本政府のデジタル・プロジェクト管理能力はかなり劣ったもので、とてもサイバー・セキュリティの行政指導など出来ないだろう。
現在は地方自治体の電子化に向けた議論が行われているが地方は「専門人材がおらず仕様書がまとめられない」という声も出ている。こちらもおそらくサイバー・セキュリティどころではないというのが実態のはずだ。
日本政府には国民の安全を守る能力も意思もないということになるうえに石破政権になったことで「中国からの攻撃」にたいして本当に真剣に向き合ってくれるのだろうか?という疑念も湧く。
ただ石破政権への不信感は一種安倍政権に対する疑念に似ていることに気がついた。
石破政権が中国に依存しようとしているのと同じように安倍政権はアメリカに対する依存度が強い政権だった。つまり、問題の根幹にあるのは「日本がどこにも依存しなくてすむように自立しよう」という意思の問題なのかもしれない。
仮に自立の意思があれば人材投資に力を入れ産業育成も盛んにおこなっているはずだ。日本政府が危機感を持たないためにサイバーセキュリティの対応は遅れたままということだ。
つまり、この問題を突き詰めてゆくとどうやら日本政府が自律の意思を失い「他の国」頼りになりつつあるということなのかもしれないと感じた。
ただこれは政府だけの問題ではないのかもしれない。マスコミの問題意識も極めて脆弱なものでアジェンダの提起は行わない。記者クラブに依存して情報を貰えばそれなりに「ジャーナリスト」としてやって行けるという事情がある。