ざっくり解説 時々深掘り

中国のハッカー集団APT31とAPT40が米・英・豪・ニの政府機関をターゲットにしたサイバー攻撃

今回のテーマはやはり中国は民主主義陣営を攻撃していたという話である。日本人のこの問題に関する意識の希薄さが懸念される。

ロイターに気になる記事が2本出ている。内容はそれぞれ各国の政府や政治家が中国のハッカーに狙われていると言うもの。APT31やAPT40という聞きなれない名前の集団がサイバー攻撃を仕掛けたとされている。

攻撃が行われたのは2021年ごろなので「なぜ今になって大騒ぎになったのか」という疑問も残る。どうやらイギリスの副首相が議会に報告を行い英語圏で協調行動をとることにしたようだ。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






アメリカとイギリスを攻撃した集団はAPT31と書かれておりオーストラリア、ニュージーランドを攻撃した集団はAPT40とされている。

ハッカー集団がその名乗っているわけではなく Advanced Persistent Threat Group(先端・持続的・脅威・集団)の略だそうだ。つまり名前がわからないので符号で呼んでいるということのようだ。各国はこれらの集団を中国安全保障省が運営していると見ている。中国は当然これを否定している。


BBCが1日の動きをライブアップデートで伝えており、何が起きたのかがわかりやすい。まずオリバー・ダウデン副首相が中国が2021年と2022年にあったサイバー攻撃を例示し中国政府が国会議員を偵察していると主張した。

APTは選挙管理委員会の名簿もターゲットにしていた。有権者名簿が盗まれた可能性はあるが副首相は「ターゲットはあくまでも政治家なので一般には影響はないだろう」とした上で、選挙結果が歪められた事実はないと付け加えている。

ターゲットになったサー・イアン・ダンカン・スミス元保守党党首は政府の制裁は全く十分なものではなく「ゾウがネズミを産むようなもの(大した成果ではない)」と不満を表明した。

さらに程なくしてニューヨークで7名の中国人がコンピュータ侵入の罪で起訴されたというニュースが入ってきた。その後、リサ・モナコ司法副長官が司法省とFBIが何百万ものアメリカ人のアカウントがハッキング計画に巻き込まれていると発表した。

アメリカとイギリスの政府はハッカー7名を訴追しフロント企業への制裁を発動した。中国政府の支援を受けホワイトハウス・アメリカ上院議員・イギリスの国会議員・政府の当事者など多岐にわたるターゲットが狙われたとしている。

その後、オーストラリアとニュージーランドの両国政府もATP40と呼ばれる別の集団から攻撃を受けたと発表した。

中国政府はどちらに対しても「言いがかりである」と反論する。

BBCは2021年にマイクロソフトが攻撃を受けていたと報道していたが、当時の報道には政府機関への攻撃は示されていなかった。このためどうして今になって攻撃を発表したのかについては疑問も残る。イギリスは政権交代が濃厚と言われる総選挙を控えている。

イギリスは今回2名を制裁対象としており、資産の凍結、イギリス人やイギリス企業の制裁対象者へのアクセスの禁止、入国の禁止などが含まれている。ニュージーランドは制裁を導入しない。

もちろん中国側には中国側の言い分がありそうだ。

攻撃対象になった議員は中国に対して批判的な議員だったと考えられている。イギリスは早くから新疆ウィグル自治区の人権状況に懸念を表明してきた。チベット人からチベット語を奪い中国語に置き換えてゆくというのは、イギリスなどの民主主義国から見ればエスニッククレンジングである。

だが中国側には「仕事に有利になるのだから早くから中国語を覚えて何が悪いのだ」と主張する人たちがいる。また、共産党政府に忠誠を誓ってもらうためには、中国人民としての自覚を身に付けなければならず、そのためには中国語を学ぶべきであるという考え方がある。

中国は国民一人ひとりの権利よりも統治を優先する国だ。一応各民族は平等で対等ということになっているのだが、多数派の漢民族の権利意識が強く少数民族は経済的に従属的な立場に置かれている。このため多数派の漢民族には「少数民族も漢民族に同化した方が幸せになれる」と考える人たちがいる。

一方でアメリカやイギリスは自由意志によって成り立つ民主主義を至上のものと考え、他人から干渉されることを嫌う。ましてや外国の干渉などあってはならないことである。

このようにアングロサクソン系の国と中華人民共和国は極めて相性が悪く、結果的にこのような衝突が起きているといえるだろう。

日本では「中国企業のロゴ」問題が一部で大きく取り上げられている。だが岸田総理の認識は極めて鈍く我が国の再生エネルギー政策に中国の影響が浸透していたとしてもそれを再調査するつもりはなさそうだ。中国の工作に対する感度が極めて低い内閣といえるだろう。

中国共産党は民主主義を「攻略可能なもの」と考える傾向があるのだから我が国は攻略されないようにそれなりの体制を整えて備えるべきである。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です