ホンジュラスの前大統領がアメリカに引き渡される

ホンジュラスは中米の最貧国だ。他の国が反米左派と軍部の間で内戦を繰り返すのをよそにアメリカへの反抗を諦めたという歴史がある。内戦も起きなかったが経済は沈滞したままだ。そんなホンジュラスで前大統領がアメリカに引き渡されるという事態になっている。

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混迷するペルーでカスティジョ大統領の弾劾裁判が開かれる

人々の目がウクライナに注がれる中でペルーの大統領の弾劾裁判が大詰めを迎えた。カスティジョ大統領の証言が行われ評決が行われるようだと伝わっていた。結果的には失職は回避されたが賛成は55票で反対が54票と賛成票もかなり多かったようだ。ペルーは今劇場型政治の末路といった風情になっている。

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安いバナナの代償 – アメリカ合衆国に移民がやってくる理由はヨーロッパとは異なる

先日はヨーロッパとアフリカの関係を見た。ヨーロッパの豊かさが波及し人口が増えて教育程度も上がるのだが社会の中にそれを吸収することができない。そこに気象変動や疫病などが広がると難民の動きがでる。動きができるとやがて貧しいところから豊かなところに向かうという図式である。で

はアメリカにもそういう事情があるのだろうかと思って調べてみた。だが、アメリカは少し事情が変わっているようだ。単純化すると安い食料供給と労働力のために混乱しているのである。応分の分配のない民主主義は持続性に問題が出ることがわかる。

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ポピュリズムも内戦もなかったホンジュラスの不幸

トランプ大統領が中米からの移民をブロックしたという話を調べている。なぜ中米からの移民が多いのか疑問に思い各国の状況を調べ始めた。そこでわかったのは国が貧しすぎて国を捨てる人がたくさん出るという悲惨な現状だった。政治指導者が一つにまとまれず国は貧しいままだ。そこにアメリカが入り込んで状況を複雑化させている。

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中米の人たちはなぜ北を目指すのか

トランプ大統領はメキシコグアテマラと交渉してアメリカにくる移民を押し返すことに成功したようだ。グアテマラには関税で脅しをかけメキシコには国境封鎖も加えて脅しをかけたという。今後この二国はアメリカに変わって中米難民を吸収することになる。メキシコでは与党内から批判が出ているという。






しかし、なぜ中米の人たちは北を目指すのか。これは中米の歴史を調べないと理解ができそうにない。というよりそもそも中米にどんな国があるのかをほとんど知らないことに気がついた。600万人から400万人という小さな規模の国が多いのだ。

中米にはグアテマラ、ホンジュラス・エルサルバトル、ニカラグア、コスタリカという4つのレイヤーがある。ニカラグアは政府に対する抵抗運動が起きていて難民が南のコスタリカに流れているそうだ。コスタリカは軍隊をなくし内戦を回避した国である。軍隊の代わりに強い警察力がある。つまり独立した実力部隊を作らず政治が管理することにしたのだろう。

そしてホンジュラスも政情不安が続きこちらは北に移民が流れている。移民と言ってもほとんど難民に近いのだが明確な迫害が起きているわけではないので難民認定はされにくいのだそうだ。

この動きはSNSによって可視化されこぼれ落ちた人たちが集まってキャラバンを形成した。ただその規模はヨーロッパを目指した難民のような100万人という規模ではなく数千人である。つまり、単にトランプ大統領が可視化しただけなのである。

メキシコ政府は南部で仕事を割りあてると約束している。中米3カ国の人たちはメキシコであってもましな仕事が見つかるならばと喜んでいるらしいのだが、今後はメキシコの人たちとの間で軋轢が生まれることが予想される。メキシコにはインフォーマルという人が人口の半分もいるそうで、それに中米移民が加わることになるからである。

移民にメキシコ国内で十分な就職口を提供できてもいない。国際通貨基金(IMF)は同国の失業率を18年は3.5%と推定する。直近で最悪だった10年の5.3%から低下したが、実際の雇用環境は統計ほど良好でないといわれる。メキシコの就業人口の半数以上は税金を払わず社会保険もない「インフォーマル」と呼ばれる。最低賃金の保証もない。移民の一部はこの層と競合する形で職を探すことになる。

メキシコ、中米移民受け入れに転換 米に配慮

このように見て行くと、中米には政府の庇護が受けられない人たちが大勢いることがわかる。特にメキシコの南にある国々の人たちには多分「民主的な政府」とか「国」という概念はあまり理解されていないのではないかと思える。

そもそもこの地域はスペインから独立した後、メキシコ併合を経て分裂したという経緯があるそうだ。分裂してからも党派対立が絶えず相次いで内戦に突入した。そして、既得権が冒されることを恐れたアメリカが介入したために内戦が泥沼化する。コントラという反対勢力をアメリカが支援していたという歴史がある。

アメリカが求めた既得権は食料だ。地元の人たちは自分たちに必要な食料を作れずバナナなどの栽培をしなければならなかった。植民地時代のアイルランド人がイギリス向けの食料を作らされ自分たちはジャガイモしか食べられなかったのに似ている。つまり、実質的にアメリカの植民地といってもよい状態だった。アメリカはその既得権を守るために内政干渉も辞さなかったのだ。

労働力が農業に貼り付けられると興業も発展しない。こうした産業構造をモノカルチャーなどという。「暴力と貧困が渦巻く中米北部三角地帯」という文章を見つけたが植民地化され内戦が起きギャングに蹂躙され警察もあてにできないというその内情は悲惨極まりない。

ところがアメリカはこれに責任を取らなかった。これが差別感情の恐ろしいところだ。アメリカ人は自分たちは優れていて中米がうまく行かないのは彼らが怠けているからであるとみなすのだろう。さらに英語ができない人たちへの蔑視感情もあるのかもしれない。英語ができない=知性がないとみなす傾向が強い。アメリカが介入したことで地域情勢が混乱しているのだが、それをアメリカ人が反省することはなく「バナナ共和国」といって蔑んだ。

今回もアメリカ合衆国の混乱をグアテマラに押し付けようというような話なのだが、それが大統領の支持率をあげてしまう。差別意識を「これは国防の一貫なのである」と話題転換するというのはまさにポピュリズム的思考である。

アメリカの民主主義はポピュリズムで説明できる部分が多いようだ。アメリカ合衆国ではポピュリズムが政権を支え、南米では左派ポピュリズムが破綻し経済的に壊滅した国がいくつかある。ベネズエラからコロンビアに逃げ出した人も多いようだ。そして、中米はアメリカの介入によりポピュリズム運動さえ起こせず国民がついに国を逃げ出すという騒ぎになっている。

どうやら「ポピュリズム」にはある種の役割があるようだ。ポピュリズム運動のおかげで民衆を政治という話し合いのセクターに収めておくことができるともいえる。運営を間違えれば最後は悲惨だが、かといってなくなってしまえば内戦や棄民に発展する。単に「ポピュリズム」というレッテルを貼れば消えてなくなるという類のものではないのである。

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