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イスラエル・ハマス交渉は和平案なくいったん終了

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イスラエル・ガザ問題の和平交渉が最終的に決裂した。アメリカは関係各国と引き続き協議再開を目指す。バイデン政権は中途半端にイスラエルを追い込んだが支援停止にも踏み込んでいない。イスラエルはアメリカの顔色を見つつ限定的な攻撃を続ける。国連総会ではパレスチナを国連加盟国にするようにとの圧力が高まっている。これはロシアがウクライナ問題で国際的な批判を浴びたのと同じ構図である。アメリカが覇権国家だった時代は終わりつつある。

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イスラエル・ガザ問題の和平交渉が決裂した。アメリカは関係国と協議を続けており新しい枠組みでの協議再開を目指している。イスラエルは単独でも国土防衛を完遂すると主張している。アメリカの中途半端な支援姿勢がイスラエルの戦時内閣の心をさらに頑ななものにしてしまった。

バイデン大統領の設定したレッドラインは「ラファの全面侵攻」だから「限定的侵攻容認」と読みかえて既成事実を積み重ねる道を選んだ。ガザ地区の220万人以上の市民たちは劣悪な環境に置かれたままであ理、最悪の人権侵害は現在も進行している。

なぜこんなことになってしまったのだろう。バイデン大統領の外交政策が破綻した理由を考えた。

リーマンショックなどで生活を破壊された中流市民の怒りがトランプ大統領支持に結実する。SNSを使って直接中間層にメッセージを浸透させることができたのがトランプ氏の成功要因の一つだったことは間違いがない。またSNSでつながった市民たちが独自の「陰謀論」を発展させたことも要素としては大きい。河野龍太郎氏はグーテンベルクが中世を破壊したように生成AIは現代の秩序を崩壊させるだろうと言っているが、トランプ政権はSNSが作った政権とも言える。

バイデン政権はトランプ氏に流れた有権者を奪還することを期待されてた政権だった。このため軍事活動を縮小させたうえで中国を想定敵国にしてアメリカの内政をまとめようとした。つまり東西冷戦に代わる新しい物語を提供しようとしたわけだ。だがこれがうまくゆかなかった。

手始めにアフガニスタンから撤退したがこれがロシアのプーチン大統領に間違ったメッセージを送ることになった。これがイランやパレスチナにいるハマスなどを刺激し現在のような状況が生まれる。

起点はあくまでもアメリカ内政である。もっと具体的にいうと選挙対策と言っても良い。BBCは今回の支援停止の理由を三つ挙げているが、内政上の問題を三番目に持ってきている。若者がバイデン政権から離反しかねない。ロイターは支援停止の理由はワールド・セントラル・キッチン襲撃事件だったと書いている。ホセ・アンドレス氏は民主党政権と強いつながりがある。またアメリカ市民が殺されたことで初めてバイデン氏は「これはまずい」と感じたのだろう。パレスチナ人の置かれた状況にたいした興味がないことがわかる。

ただしこの関心の狭さは共和党サイドにも言えることだ。トランプ氏は「If you’re Jewish and you vote for him, I say shame on you.」と言っている。つまりバイデン大統領はパレスチナ支持なのだからイスラエルを支援したければ自分に投票せよというわけだ。

SNSの発展で我々は世界各地の情報を直接仕入れることができるようになった。だがその視野はかえって狭まっている。

国連総会ではパレスチナを国連加盟国にすべきだとする決議がまとまった。法的拘束力はないそうだがアメリカとイスラエルに対して圧力をかける狙いがある。ロシアがウクライナ侵攻で同じような状況に置かれていたがまさか1年後にアメリカがそのような状況になるとは誰も思っていなかったのではないか。

また内政上も苦しい状況に置かれている。アメリカの法律ではアメリカの提供する武器は市民には向けてはいけないことになっている。諸所の状況からイスラエルが市民をターゲットにしていることは間違いがないが、国防総省は「そのような証拠は見つからず従ってこれまでのように武器を供給していい」というレポートを出すことになっている。

この欺瞞に満ちたレポートを批判する人がアメリカ人の中に少なくないだろう。国際的にも国内的にもアメリカのイスラエル支援はかなり難しい状況に追い込まれている。だが長年覇権国家という自意識を持っていたアメリカ人が状況の変化を受け入れるにはまだ当分の時間がかかるはずだ。

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