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イスラエル軍が南部ハン・ユニスから撤退で逆に高まる緊張 合衆国はテロに警戒

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イスラエル軍がガザ地区の南部ハン・ユニスからの撤退を始めた。日本ではロイターなどの外国通信の伝聞報道が主になっていて事情がよくわからないが「イスラエルがバイデン大統領のメッセージを深刻に受け止めたのであろう」という受け止めが多い。つまりほっと一安心というわけだ。

だが、どうも様子がおかしい。この受け止めとは合致しない報道が多数見られるのだ。何もないに越したことはないのだし和平の進展はいいことだ。このまま平穏であればいいのにと願うばかりだ。

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イスラエルがガザ地区南部から撤退を始めたと読売新聞が伝えている。読売新聞はアメリカの強いプレッシャーを受けて人質解放のために撤退を進めているのであろうと分析している。日米同盟推進の読売新聞らしい観測だ。アメリカは平和の守護者としてガザの和平を推進する偉大な存在でなければならない。

だが共同通信は冷静にアメリカの高官(カービー米大統領補佐官)の発言を伝える。休暇と再編成を行うのだという。読売史観とは相容れない。停戦でなく休暇なのだから「大きな作戦の前に十分に休んでおけよ」ということになる。また作戦も非連続に切り替わるのだろう。国務長官は和平が進展していると強調したいがホワイトハウスはまた別の情報を掴んでいることになる。

ネタニヤフ首相も今後の作戦を示唆する。こちらはBloombergの報道でタイトルは「勝利まであと一歩」である。

イスラエル軍は「特殊部隊の第98師団はハンユニスでの任務を終えた」との声明を発表。「同師団は今後の作戦に備えてガザ地区を離れた」と説明した。

さらに、イスラエルでは全土でGPSが無効化されており兵士の休暇が一時的に取りやめになっている。仮に「人質解放のための戦線縮小」であればこの辺りの情報が全く一致しなくなってしまう。イスラエルは内部に激しいデモも抱えており混乱に乗じてデモが過激化するのも困る。

確かにワールドセントラルキッチンを主催するシェフはバイデン大統領と近い関係にあるのだから、知り合いのプロジェクトを邪魔されたバイデン大統領がネタニヤフ首相にたいしてついにキレてしまったという見方は成り立つ。またアメリカの抑制に対してネタニヤフ首相が「撤退」を「転戦」と言い換えている可能性もあるだろう。ガザに平和が戻るにはいいことだ。しかし、どうしても嵐の前の静けさの可能性を完全に拭い去ることはできない。

さらに、今回の緊張がガザ地区への備えなのかには疑問もある。アメリカでは月曜日に日食が観測される。観光業にとっては思わぬ稼ぎ時になった。外から大勢の人が集まる場所がアメリカ各地にできる。このためABCニュースでは「情報当局が警戒を呼びかけている」というニュースを流している。モスクワで起きたようなことがアメリカでも起きかねないという物騒な内容だ。

また中東に広がるアメリカやイスラエルの権益に対してイランが後ろ盾になっている勢力の攻撃がある可能性があるとCNNが伝えている。イスラム圏は現在ラマダンの最中である。この神聖な時期に人を動かすのは容易ではないが明ければ状況は変わる。つまりイスラエルは両面作戦に備えて部隊の再編成を行なっている可能性を否定できない。とにかく外交施設を攻撃されたイランは何らかの報復を必要としている。国内向けに説明ができないからである。

おりしも岸田総理の訪米が予定されている。現在、日米同盟の緊密化の議論が進んでおり「日米同盟が強固になれば日本の安全は保証されるであろう」と説明されることになるだろう。「多少の負担は止むを得ない」と続くのかもしれないが、今のところ国内に反対の声は聞かれない。

だが、ここでアメリカが何らかのトラブルに巻き込まれれば「日米同盟を緊密にすると日本も何らかのトラブルに巻き込まれるのでは?」とする懸念が膨らみかねない。支持率が低迷している岸田政権ではこの懸念を払拭できないだろう。

嵐が過ぎ去って「もう何もない」ことがわかってから訪米をすればこうしたリスクは避けられたのだろう。だが、以前から国賓級の訪問が決まっておりタイミングを動かすことはできない。岸田総理の支持率回復作戦の重要なピースであり、なおかつ日米対話の全てがこの時期をゴールに進展している。

岸田総理はリスクがあるとわかっていながらもこの火の中に飛び込まざるを得ない。訪米中に何もないことを祈りたい。

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