このエントリーではアメリカの金融政策の行方と日本のドル円介入ラインについてざっくりと経済紙の記事だけを紹介する。現在ではドル円の介入ラインは155円近辺ではないかと言われている。
エミン・ユルマズ氏によれば、現在は米ドルと日本円がヨーロッパ通貨に対して下落する状態になっている。米ドルの価値が落ちているが円の価値がそれ以上に下落しており米ドルの落下に気がつかない状態といえる。
全体として悪性インフレの材料が整いつつある印象だ。
パウエルFRB議長は利下げを急がない姿勢を強調している。アメリカのインフレは落ち着きつつあるがいまだに不安定な状況が続いているようだ。金利が上がると現金の将来価値が下がる。このため金(不況でも価値が下がらないとされる)の現物価格が上昇し、国債の利回りが上昇しているそうだ。
アメリカの株価は説明のつかない上がり方をしていてそろそろ割高感が出ている。2023年の10月には国債の金利が上昇し株価が下がったことがあったが、同じような状況が生まれていることになる。ただこの時の株価下落はのちに回復している。この時に株を買っていた人は値上がり益を享受し慌てて売った人が損をしているのもまた事実である。
日本経済には別の事情がある。金利差が縮小しなければ円安の要因が温存される。日銀は円安是正を求められていた形跡があるそうだが同時に金融緩和政策の解除が市場にショックを与えかねないという事情があった。このため本来はやってはいけないとされるリーク(日銀は否定)まで行って事前準備に余念がなかった。
ところがこのメッセージングは全体としては「日銀は円安を是正するつもりはない」と受け取られたようだ。日銀が市場に対して差し出せるカードはないため財務省がなんとかしなければならない。現在の介入ラインは155円かそれ以上ということになっている。
アメリカでは国債金利が上昇している。つまり為替介入のために米国債を売ってしまうとアメリカに睨まれる可能性があるということになる。仮にアメリカの了解が得られなければ為替介入さえ難しい状況ということになるだろう。
さらに「経済の好循環が見られるために金融政策を変更しました」とトップが宣言してしまったために「大企業の賃上げが中小に波及する」と言い続ける他なくなってしまった。「政治と金」の問題に忙殺される岸田政権に国家運営の長期的視野などあるはずはないのだから、日銀と財務省は単独でこの状況をなんとかしなければならない。ただしその介入水準は155円近辺であるのだから円安による物価高はこのまま定着することになるだろう。
なおメッセージングに失敗した日銀と財務省は「冬季的な動きがあり本来とは違った動きになっている」として全ては投資家が悪いという印象づけを行っている。
もう一つ気になるのが原油価格の高止まりである。アメリカ経済はやや加熱気味であり高需要状態が続いている。また中東情勢が不安定になっておりこれも原油価格を押し上げる要因となるだろう。原油価格が高くなれば無理をして増産する必要はなくなるためメキシコは輸出の制限を行い高価格を維持したい考えである。
1970年代のアメリカの悪性インフレが原油価格の高止まりを背景にしていることを考えるとこの動きはおそらく日本にも影響を与えるはずだ。
だいたい「ざっくりと」関連ニュースをご紹介したが、とても「経済の好循環」と呼べるような状態ではなくなっていることがわかる。
こんな中、岸田総理に与えられたミッションは国民に対してさらなる高負担を求めるというものである。SNSで不満ばかりつぶやいていてもこの状況は変わらない。有権者が政治参加しない以上はその帰結を受け入れる必要がある。日本は国民主権の国家なので政治参加をしなかった代償はコストとして国民が支払う必要があるのだ。
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