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政治と金の問題を巡り報道が錯綜 岸田総理の発言と報道をざっくりと整理してみる

政治と金の問題を巡り報道が錯綜している。分析の記事は別に出そうと思うのだが「そもそも何が報道されているのか」が混乱しているので改めて整理することにした。岸田総理の聴取はおそらく不発に終わっている。だが官邸はそれを言い出せず情報だけが先行しているのではないかと思う。このままでは処分の根拠が出せない。

この問題は思ったよりも長く燻り続けるのかもしれない。

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まず、読売新聞の渡辺恒雄主筆と岸田総理が会談を行った。この辺りから情報が錯綜してきた。この後に日本テレビが森元総理の関与が疑われるとする報道を出す。この日テレの断定口調がのちに大混乱を引き起こす。

岸田総理大臣から事情聴取を受けた安倍派幹部の一部が「キックバック再開の判断には森元総理大臣が関与していた」と新たな証言をしたことが分かりました。

【独自】安倍派幹部の一部「キックバック再開判断に森元首相関与」新証言

一方の時事通信は「3月にも会議が行われた」と報道している。よく読むと当事者の「疑い」を書いているだけなのだが、時事通信が拾って活字化したことで半ば事実として流通することになった。

一連の話し合いで安倍氏は還流への問題意識を深めたとみられ、22年4月に塩谷、下村、西村、世耕4氏との協議で還流中止を指示。しかし安倍氏の急逝後、4氏が入った8月の協議を経て、組織的な還流は続けられた。同協議を巡る4人の証言は一部食い違っており、どのように還流復活が決まったかは明らかになっていない。

安倍派、22年3月にも幹部協議 政倫審で明かさず―岸田首相、世耕氏らに経緯聴取

これを受けて辻元清美議員が総括質疑を行ったが、岸田総理は「聴取は続いているので内容を詳(つまび)らかにできない」と公表を拒否した。さらに共産党の質問に対し「後悔しない以上は全ての疑いは仮説に過ぎず仮説に過ぎないものに応える義務はない」と事実上の答弁を拒否をおこなっている。

田崎史郎氏の周辺取材によると確かに当初の岸田総理は森元総理への聴取を意気込んでいたようだ。だが次第にわかりやすくトーンダウンしていったのだという。田崎氏は「調査が終わったと言ってしまうと内容を確定しろと迫られるため調査を続けていると言い続けているのだろう」と見ている。また森元総理から岸田総理に対してなんらかのプレッシャーがかかったのではないかとも考えているようだ。

世耕弘成前参院幹事長が29日に会見をすると伝わった。が、実際には世耕弘成氏の会見のニュースは入ってこなかった。のちになって世耕氏が「記録は後から見つかったが、裏金については話し合っていなかった」とテレビ局が伝えていることがわかった。これが目立った記事にならなかったのは

  • すでに政倫審で記録がないと言っており
  • 時事通信の記事が出てきたことで裏金について話し合った可能性があると仄めかされたため
  • 「後で記録が出てきた」として主張を交代させた

からだろう。もはや世耕氏の発言を信じる人は誰もいないため改めて主張を報道する必要などないと判断されたためと思われる。世耕氏は政治家としては死んだと言って良い。

一方で西村前経済産業大臣が記者に対して3月にも会議はあったが参議院選挙について話し合っただけで裏金の話は出なかったと主張し時事通信の報道を打ち消しておりこれを共同通信が拾っている。

田崎氏は日本テレビの報道よりも朝日新聞の報道の方が確度が高いと見ている。伊藤惇夫氏は日テレの報道に追随する社はなかったが朝日新聞だけが追随したと言っている。

その朝日新聞の表現は次のようになる。

自民党安倍派の裏金事件をめぐり、岸田文雄首相が行った派閥幹部への聴取で、一度は廃止した還流の復活を決めた2022年8月以降について「派閥への森喜朗元首相の影響が強まった時期と重なる」とする証言が出ていたことがわかった。

「森喜朗元首相の影響強まった」還流復活した時期 安倍派幹部が証言

日本テレビの報道と朝日新聞の報道はおそらくは同じ事実の伝聞だがニュアンスが全く違ってくる。「関与していた」と「偶然時期が重なった」では重みが違う。

これに重ねて共同通信は「すでに森元総理の関与はなかったと判断した」とする報道を出している。すでに結果は出ていたが「何もありませんでした」とは言えないために辻元さんに「公表するかどうかは決めていない」と言い続けていたことになる。

派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、自民党が既に、安倍派(清和政策研究会)会長経験者の森喜朗元首相側から水面下で話を聞き取っていたことが分かった。資金還流が始まった経緯や2022年に復活した状況について尋ね、関与なしと認定したもようだ。

森喜朗氏側、既に裏金聴取 自民、関与なしと認定

一連の報道を精査すると次のようになる。

当初は岸田総理が意気込んで真相解明をやろうとしたが結局何も出てこなかった。さらに森元総理側からもなんらかの働きかけがあったのかもしれない。ところがそれを公表してしまうと「岸田総理はブレている」と批判されてしまうので公表ができない。公表ができない理由を聞かれても答えられないから「調査を続けています」と言い続けている。

しかしながら実際には公表しないことで報道が先行する。官邸は「総理が公表するからそれまで待ってくれ」と言いたいところなのだろうが公表の目処は立たない。だから報道を放置するしかない。

真相がわからないことで懲罰感情だけが徒(いたずら)に高まっている。当初は非公認程度の処分が下されるのではないかとされていたが、現在は離党勧告が出るのではないかという報道が出ている。数日の間に「政治責任に対する刑罰」がインフレを起こしている。

だが処分理由を読んで唖然とした。民意を見て量刑を決めているのだ。

当初は「選挙での非公認」を軸に処分する方向だったが、岸田文雄首相らによる追加聴取を受け「党勢低迷を招いた反省が足りない」と厳罰化へ傾いた。裏金議員への反発が根強い世論を考慮した。政権幹部が29日、明らかにした。

処分は4月初旬に行われているとされている。つまり執行部側は岸田総理の訪米の前に決着をつけたいと考えているようだ。だがこの分ではおそらく処分が出ても裏打ちとなる調査内容が報告されるとは思えない。さらに「世間の反発が思ったより根強いから離党してもらう」では処分される側も納得しないだろう。

そもそも本当に処分が出るのかすら疑問に思える。意外と一ヶ月ぐらいはこのまま揉めるんだろうなあという気がする。

岸田総理は派閥解消を決めたものの麻生元総理の逆鱗に触れて慌てて会食を申し込み関係修復を図っている。このため派閥は中途半端な形で残り今もその余波が続いている。今度も一度は突発的に自らが調査に乗り出すと決めたのだろうが結局は森元総理に怒られて萎れてしまったことになる。岸田総理の元でこの問題が解決することはおそらくないだろう。

また記者クラブが機能しなくなると日本の報道がわかりやすく崩壊することもわかる。各社がそれぞれの思惑で言いたいことだけを切り取って報道する様子はSNSのXの素人政治評論となんら変わりはない。

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