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すかし問題 河野太郎大臣肝入りの再生エネルギータスクフォースに中国企業の影 岸田政権は安全保障に関わる懸念を払拭できるのか?

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中国企業の影などと象徴的に仄めかされることがあるが、今回は文字通り影が透けて見えることになった。政府の意思決定に関わる資料に中国企業のすかしがはいっていたそうだ。

岸田政権に新しい疑念が浮上した。河野太郎大臣の肝入りの再生エネルギータスクフォースに中国企業の影響があるのではないかというものである。その後も次々の中国企業の透かしが見つかっていて影響は広範囲に広がっているようである。

この問題については国民民主党の玉木雄一郎代表と維新の音喜多駿政調会長が指摘しているが、安倍政権を熱心に支えてきた人たちの支持は限定的だ。彼らはリベラルには強気だがやはり権威に向かうのは怖いのだろう。

現在これを伝えている新聞は産経新聞だけである。読売新聞の渡辺主筆は数日前に40分程度の会談を行なっており岸田政権を支え安倍派幹部の処分に向けた流れを作るものとみられている。産経新聞と読売新聞では世論に対する影響力に大きな違いがある。

ただ太陽光発電を中心とする再生エネルギーは結果的に日本人家庭に高い電気料金を押し付ける仕組みになっている。また、その収益が中国に流れているのではないかという指摘は少なくない。今後この問題が解明されるかあるいは埋没するかはネットの人たちの力にかかっていると言える。送電線網を整備するために1兆5000億円の投資計画も予定されている。これもおそらくは何らかの形で電気料金に乗ってくる。精査は急いだほうがよさそうだ。

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発端 意思決定に関わる資料から中国企業のすかしが見つかった

ことの発端は「内閣規制改革推進室」のXの投稿だった。金曜日に開催された資料を内閣府がアップしたところ「何やら中国企業のすかしが入っているようだ」という問い合わせを受けた。当初内閣府はハッキングを受けたかもしれないと主張したそうだが、大林ミカ氏という人物の持ち込んだ資料であると判明した。

大林氏は自然エネルギー財団の数年前のシンポジウムの資料を流用したと説明している。大林氏は自然エネルギー財団は中国政府や企業とは一切関係がないと説明しており内閣府がそれ以上の調査を行うかどうかは不透明である。

その後も電力会社の社員と称する人が「他の官庁の資料からも透かしが見つかった」との報告をしていて再生エネルギーの意思決定の現場にかなり中国企業の影響が広がっている可能性がある。

後述するように洋上風力発電も贈賄企業の影響を受けており結果的に洋上風力発電のコストが上がっている。河野太郎大臣はこの件についても何らコメントはしておらず、結果的に安い洋上風力発電が実現できていない。岸田内閣の意思決定の歪みの可能性とは別に河野太郎大臣の管理能力にも疑問符がつく。

さらに自民党の若手小林鷹之議員からは「このタスクフォースは自民党の総意ではない」という見解も出ている。旧二階派の議員だが岸田政権(甘利元幹事長とも)から一本釣りしたとされており岸田政権の中枢に近い。経済安全保障政策を岸田総理と同じ「開成閥」で固めようとしたなどと噂されていた。おそらく政権中枢はネットで燻っている問題に注目してはいないだろうが、小林さんはことの重大さに気がついているようだ。アメリカとの密な連携を念頭に置いた経済安全保障と中国の影響を受けた再生エネルギー政策という対立構造はいかにも具合が悪い。

なぜこれが国益上の大問題なのか

国民民主党の玉木雄一郎代表は次のように書いている。我が国の電力供給網は外国とは独立しており安定供給ができている。玉木氏は大林氏の自然エネルギー財団はこれを破壊しようとしているのではないかと言っている。

今 問題の自然エネルギー財団の意図が、日本のエネルギー政策に影響を与え、ベースロード電源である火力や原子力を廃止に追い込み、不安定な再エネを増やすことで、ASGを通じた中国やロシアからの電力輸入に頼るよう仕向けることだとしたら、国家安全保障に関わる重大問題です。徹底調査すべきです。

ただこれを野党の立場から与党に認めさせることはできないだろう。仮に与党が中国の影響を受けていたとしても「はい我々は中国の影響を受けています」などというはずはない。自民党の小林議員は「政権の総意ではない」の発言の真意はこれを政権から切り離し「一部の議員たちの暴走」とみなすことなのだろうが、結局のところ「誰が国益に沿った考え方をしてくれているのか」を直接知ることができない。だからこそこの問題がどのように総括されるかや誰が総括の旗振り役になるのかは極めて重要だ。

大手新聞の報道は極めて抑制的

産経新聞は内閣府と河野大臣の「チェック不足」との見解を紹介した上で玉木代表が中国の影響を問題視していると指摘している。だが大手メディアでこれを伝えているのは産経新聞のみであり他の媒体は全く取り上げていない。

岸田総理は読売新聞などと組んでアベノミクスの葬送を行なっている。つまり清和会から保守本流である宏池会に乗り換えたことになる。

渡邉恒雄主筆は40分程度岸田総理と会談しており政権に不利になるようなことを書くとは考えにくい。

宏池会は長らく林芳正官房長官が親中国の議員団(中国友好議員連盟)の会長をつとめていて、もともと中国との関係が深い。宏池会系岸田政権が本気で中国企業の影響と中国系企業から政治家への金の流れについて調査を進めることができるかにも注目が集まる。

河野太郎大臣が「チェック不足でしたごめんなさい」といって終わりになるかきちんと精査されるかはネット運動の盛り上がりにかかっている。

エネルギー政策は我が国の安全保障に大きく関わる。また政府が国民にリーズナブルな再生可能エネルギーを提供しているのかも検証される必要があるだろう。「再生可能エネルギーは地球にやさしいから高くても我慢しなさい」では話にならない。SDGsは重要だが錦の御旗にはならない。

太陽光発電は結果的に日本の家庭に負担増を求めるスキームになっている

タスクフォースのテーマは太陽光発電のさらなる推進だった。

このテーマにはいくつかの問題がある。4月から政府の再エネ賦課金が値上げになる。電気料金が下がると太陽エネルギー発電業者の売価が下がるためにそれを家庭などが補填する仕組みだ。つまり家庭は再エネ対策という名目で高い電力を押しつけられている。

この問題はすでに別のエントリーで考察した。

政府が杜撰な計画を導入したためにイノベーションの促進が止まり家庭は高い電力を支払うこととなり市場競争も阻害されるだろうと結論づけた。とはいえ家庭はこの売価を前提にパネルを導入している。だから制度をすぐに止めることはできないだろう。

加えて結果的に中国にお金が流れる仕組みになっている

今回の件でSNSのXを「中国+太陽光」で検索をして驚いた。

産経新聞は国土安全の観点から熱心にこの問題について伝えている。現在は宮城県と青森県で2本記事が出ている。

自衛隊の基地の近くに中国企業が土地を買い占め自然エネルギーの生産拠点ができている。使用権を売却している土地所有者には拒否権がなく、不動産登記の必要もないため実体がよくわからなくなっているという。全国的に太陽光発電事業を展開している上海電力日本は「法律に基づいてきちんとやっている」というばかりで取材には正面から答えていない。

ただ、産経新聞なだけに「中国アレルギーがあるのではないか?」と思いたくなる内容ではある。つまり、これだけで再生エネルギーが中国資本を儲けさせるためのスキームであるとは言い切れない。

さらに国民民主党の大塚耕平参議院議員は太陽光パネルや風力発電機器を作っているのは主に中国であると主張する。つまり太陽光で儲かるのは中国企業であるということになる。

最初の議論では政府が「これくらいの水準のものであれば買い取る」と補償してしまうことでイノベーションが起こらないと書いた。ところがそもそも日本の企業は太陽光発電装置を作っていないというのだ。

大塚氏の主張は少し複雑だ。実は日本も太陽光パネルの技術を持っている。だが国が支援してくれる中国では量産化が進むが日本はそれが遅れているという議論になっている。このため今では太陽光発電モジュールも70%のシェアを中国に握られているという。

大塚耕平氏はこの問題を長年ブログで訴えてきたが大手メディアに取り上げられることはほとんどなかったようだ。大塚氏は国民民主党から離党し地方選挙に鞍替えする予定になっている。

ただし、国民民主党は連合に支えられている。電力総連は連合に加盟しており、連合は国民民主党を支援している。政治的なポジションがあるのは確かである。この点については留意をしておきたい。やはり何事にもポジションというものは存在する。

岸田政権は燻る疑念を払拭できるのか

ここまでは新聞や政治家の人たちが語っている比較的確度が高い情報である。実際に「再エネ+中国」で検索するとかなり際どい情報が飛び交っている。

まず、国民から吸い上げた再エネ賦課金は実は「大半は中国企業に吸い取られている」という人がいる。初めての議席獲得を狙う政治団体の中にもそのような主張をしているところがあるようだ。さらに大林ミカ氏の経歴についてもさまざまな情報が飛び交っている。

彼らが疑っているストーリーはざっとこんなところだ。

現在の政権は太陽光発電を推進し中国企業にお金を吸い取らせている。なぜかというと自民党は彼らから政治献金をたくさんもらっているからである。我々は騙されているのだ。

岸田政権は政治とカネの問題の解決に本気ではなくこれを政争に利用した。もちろん一義的にはきちんと説明責任を果たさなかった清和会・安倍派が責められるべきなのだろうが、安倍派が抑制されている間にアベノミクスの葬送を行ったことは確かである。

政治不信は疑いから確信に変わりつつあり「岸田政権が中国企業に貢いでいる」というような主張も「あるいはそうなのかもしれない」と思えるような状態になってしまっている。

ただし、今回の件でネット民意が鋭く反応しているとは思えない。リベラル叩き(社民党や立憲民主党が中国の影響を受けている)であれば大いに盛り上がったのだろうが、やはり政権への批判には躊躇があるようだ。

内閣府は当初ハッキングの可能性を主張 河野太郎氏の過去の対応には懸念も

国民民主党の玉木雄一郎代表は「調査が必要」としているだけだが、維新の音喜多駿議員は比較的長い投稿で今回の件について説明をしている。読んでみた。

音喜多氏はエネルギー政策は国家の安全保障の根幹だと規定したうえで「中国の電力会社の息がかかった資料」と断定している。断定の根拠は不明だ。だが内閣府の説明は大林氏自身の報告を鵜呑みにしたものでありとても信じられないという主張は大いに賛成できる。

音喜多駿氏の発言で最も注目されるのは「最初は不正アクセスがあったと説明していた」という点だ。内閣府の説明はその場凌ぎのいい加減なものだった。

河野太郎氏のSNSでの申し開きは聞かなくてもいいだろう。彼はもともと国民に何かを説明する気がなくブロックを多用している。都合がいい時だけ情報発信されても困る。

さらに再生エネルギーの管理能力の杜撰さには前科もある。

河野大臣は自らがスカウトした秋本真利氏を千葉9区に送り込んだ。結果的に風力発電がらみで業者から6,000万円を受け取った疑いで受託収賄容疑で逮捕されている。派閥がなく個人的なつながりにすぎないため議員の行動までは管理していなかったということなのだろう。

秋本氏が風力発電事業に与えた影響は小さくない。結果的に割高な洋上風力発電事業者が選定されているがこの問題が総括されているとは言い難い。

三菱商事はヨーロッパで積極的な投資を行い自らのリスクで実績をつみかさねていた。ところがその後で不自然なルール変更論が起こり政治的に露骨な三菱商事外しが行われた。ここに絡んでいたとされるのが秋本氏だったのだが、結局再入札が行われることはなかった。秋本氏逮捕の後も衝撃は広がり続けていて日本風力発電協会から三菱商事が抜けてしまった。ノウハウを持った事業体が抜けたことで結果的に我が国の洋上風力発電のコストは高止まりしている。

河野氏はこの一連の出来事や秋本氏の不祥事に対して何らコメントをしていない。改革派として大きな期待がありながら、ワクチン行政やデジタル行政で日本国民を振り回してきた。もともと脱原発志向の強い人でありメインテーマである再エネにだけは真面目に取り組んでいると思われてきたわけだが、秋本氏の不祥事に対してもコメントはしていない。もしかすると何か言っているのかもしれないがブロックされているので事情がよくわからない。

国民の無関心を背景に一部の人たちだけが優遇される政治に

もちろん、岸田政権の背後にネットが指摘するような中国企業がいるかはわからない。だが岸田政権が国民に説明をしてこなかったのは事実である。

無党派層が政治に関心を持たなくなると当然政治家は自分達を支援してくれる大企業に依存することになる。この中に仮に外国勢力に影響を受けた人たちがいたとしても政治家はもはやそれを気にしない。国民生活全般を豊かにしても自分達の議席が保障されるわけではないと考えるからである。

大手メディアが取り上げていないこともあり、現在のところネットの人たちの反応は抑制的である。やはり政府が相手となると軽々しく口を挟んではいけないという抑制効果が働いているのかもしれない。

コミュニティの崩壊の影響も大きい。安倍政権時にはコアになる人たちが理論を組み立てていた。ネットの人たちはコアになる人たちにつながっていて、その主張を引用し広める役割を果たしてきた。政権が清和会から宏池会に変わるとコアになった人たちは次々と撤退してしまいネット世論の弱体化につながっているものと思われる。

岸田総理は表面上は「憲法改正を急ぐ」として安倍総理の意思を受け継ぐ姿勢を見せている。だが実際に行われていることを見るとどうやら我が国の国益にはさほど興味がないのかもしれない。

となると国民が政治家の関心が我が国の国益に向かうように軌道修正をしてあげなければならないのではないかと個人的には感じた。

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