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再エネ賦課金が月々836円の値上げ 割高な電気料金は自民党の経済政策が共産主義的なせいだ

再エネ賦課金というおかしなスキームがある。これが4月から値上がりする。月々かなり大きな金額を支払うことになるのだが、反発の声はあまり聞かれない。電気料金に組み込まれているために目立たないのだろう。

近年この手の「ステルス増税」が増えており日本の家計を圧迫している。

なぜこんなことになったのかを考えたところ自民党の政策が共産主義だからだという結論に達した。「そんな馬鹿な」と考える人が多いのではないかと思うがどう考えてもそうなる。

この問題を議論すると、そもそも「自由主義はどうやって経済を成長させるのか」という基本的な問題に行き当たる。いまの日本政府はそれがわからなくなっているらしい。

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日経新聞産経新聞が次のようにまとめている。

  • 経済産業省が再エネ賦課金を1キロワットあたり3.49円にする
  • 経済産業大臣が決めるので国会の議論は必要ない
  • 2023年度は1.4円だったので月に400キロワット使う標準家庭では836円の負担増となる
  • 2022年度ほぼ同じ水準に戻ったことになる
  • 賦課金はエネルギー価格が下がるほど電力会社の収入が減るため上がる仕組みになっている
  • 再エネ賦課金は再生エネルギーを既存電力よりも高く買い取る原資として利用される

ということで全体のエネルギー調達価格が下がっても電気料金はそれほど下がらないといういう制度になっている。漠然とこれは何か変だなあという気がするのだが、マスコミでこの制度の悪口を聞いたことはない。

再生エネルギー賦課金は日本における再生可能エネルギーの普及を目指しているが、実際には日本の電力は7割が火力に依存する状態になっている。

再生可能エネルギーの割合は2割程度という数字が定着している。2012年に始まった賦課金制度はそれほど再生エネルギー普及に役に立っていないように思える。

ただし日本は再生エネルギー後進国だという主張は「言いがかりである」という意見もある。

つまり色々情報を集めてもこの制度がいい制度なのか悪い制度なのかよくわからない。よくわからないままにダラダラと制度だけが続いている。健康保険に混ぜ込まれる予定の子育て支援金制度もこんな感じになるのではないかという漠然とした嫌な予感も踏まえつつその先の議論を探してみることにした。

ABEMAのYouTubeチャンネルが何回か太陽光発電について議論している。ひろゆき氏が「高いお金を出して自然を破壊している」「そんなに儲かるなら東京電力あたりがやっているはず」「馬鹿じゃないの?」と言っていて、なんとなくわかったような気になる。

普通の家庭に太陽光パネルを買わせて10年程度かけて元を取る仕組みになっているそうだ。この前提が賦課金と各種補助金なのだ。つまり一般家庭から賦課金をとって制度をかろうじて維持している。だからひろゆき氏が「馬鹿なんじゃないの?」と主張している。

さらに太陽光パネルには故障、災害、廃棄などのさまざまなリスクがありこうしたリスクによって費用が高くなる可能性がある。つまり賦課金と補助金を与えて小規模事業者や家庭にリスクを取らせるという歪んだ制度になっている。

議論を見ていてふと「そもそも10年以上も経っているのだからもっと価格の安い太陽光発電ソリューションが出てきてもいいのではないか?」と感じた。だが、技術革新は起きていないようだ。

10年前のスマホがどんなだったのかを考えてみればそれがどんなに異常なことなのかがよくわかる。おそらくこの辺りに制度全体の問題を解く鍵があるのだろうなと感じた。

また、リスクについての考え方が原子力発電所に似ている。原子力発電所も普及のために政府が電力会社にさまざまな支援をしているが、実は原子力発電所の事故や核廃棄物の問題など解決できていない問題がある。

これが顕在化したのが福島第一原子力発電所の事故である。リスクは東京電力と周辺住民が背負うことになったが、国もなんとなくダラダラと支援を続けている。ここで国が東電を見捨ててしまうと日本の原子力発電行政は崩壊するだろう。結果的に廃炉のコストが国民にのしかかることになる。再エネ賦課金は家庭に割高な電気料金を押し付けるばかりか「廃棄物」の問題が解決できていない。

今でも「太陽光パネルや発電系統が壊れたらどうすれば?」という話に解決策がないそうだ。テレビ朝日が問題をまとめている。2014年に補助金がなくなった時に廃業するところが増えたために相談するところがなくなったという問題や台風や雹など被害で損傷した時に解決策がないなどさまざまな細かい問題が指摘されている。太陽光パネルの寿命は20年から30年なので2030年代以降に大量廃棄が出てくるがこの対策が全くできていない。

政府が介入すると過剰供給の問題も出てくる。実はこれも解決策がない。九州電力はピーク時に買取を抑制し問題になっていた。

負担を社会全体に追わせ中途半端な政府の介入で市場を混乱させるというのは、どちらかといえばソ連の末期に見られた共産主義の行き詰まりに似ている。日本における政策は政府の介入を意味することが多く市場を歪めがちだ。これが自民党の政策が「共産主義的」だの意味である。

ここまで考えてるとひろゆき氏の「儲かるなら東電がやっているはず」問題が片付く。

政府が今の制度と品質を保証することで「これくらいのものを作っていればとりあえず売れるからいいや」ということになってしまう。つまりイノベーションが止まってしまうのだ。

そもそも新しい事業はどうやって普及するのだろう。まず、新しい製品は作ってゆくうちに大量生産ができるようになりユニット当たりのコストが安くなる。また、作っているうちにもっと上手く作れるようになり(これをイノベーションという)価格が低下する。市場が作られるとイノベーションによって採算ラインに乗り利益が出てくるというのが基本的な資本主義経済の仕組みだ。この時に市場はリスクも解決してゆく。つまり高性能化、価格低減、リスクの解決は全て本来は市場の機能なのだ。政府の役割は最初の市場を作る部分で終わるのが一般的である。計画経済ではイノベーションも価格の低減もリスクの軽減も起こり得ない。

日本のいわゆる「成長戦略」が逆にイノベーションを止めてしまっている。つまり政府の成長戦略は実際には「成長の芽を摘む戦略」になっている。

甘やかされて固定化した国内メーカーは次第に国際競争力を失ってゆく。この顕著な例が東ドイツのトラバントだ。ベルリンの壁が崩壊する直前には「東ドイツはまだこんなボロボロな車を使っているのか」と揶揄されていた。

ここから自由民主党は実は産業政策においては共産主義だということになる。自由民主党は共産主義などと言えば「何をバカなことを言っているのだ?」と思われるだろうが、考察を深めてゆくとどうしてもそういう結論になってしまう。

こんなバカな政策はすぐにやめるべきだと思うのだが、やめられない事情がある。最初に制度ができた時にはさまざまな支援金があったそうだ。

だが2014年に一度補助を打ち切ったことで多くの業者が潰れた。その後「太陽光発電はギリギリ元が取れるか」という状態になっているそうだ。つまりここで政府が梯子を外してしまうとそもそも太陽光発電パネルを入れた一般家庭が利益を得られなくなる可能性がある。

回収にほぼ10年かかるということなので一般家庭はあと10年はこの政策にお付き合いをして高い電気料金を支払うことになってしまう。

だから成長を阻害するシステムだと分かっていてももうやめるわけにはいかないということになる。

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