先日のル・モンド紙の報道のその後を追っている。アメリカ合衆国が提出した安保理決議案はロシアと中国の拒否権によって否決された。合衆国はイスラエルに対して「ラファを攻撃しなくても目標は達成できる」と説得を続けているがイスラエルは聞く耳を持たない。せめてもの慰めは少なくとも週末には悲劇は起こらないということだ。来週、アメリカとイスラエルが会談することになっている。
サウジアラビアのメディアがブリンケン国務長官の情報として「即時停戦を含む決議案を準備している」と伝えた。フランスの一部メディアがこれを引用報道していたがのちに「決議を促す」というものだったと分かった。結局、これは金曜日に採決に回されたがロシアとアメリカが拒否権を発動したため採決されなかった。
もちろんウクライナで戦争をやっているロシアがアメリカに対して「偽善」を非難できるのかという問題はあるのだが、それでもアメリカ合衆国の外交上の限界が示されたことには間違いがない。国連大使は弱々しくロシアと中国を非難することしかできなかった。
米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は、「率直に言えば、激しい言葉の割にロシアと中国が外交的に恒久的な和平を推進したり、人道的な対応に有意義な貢献を行っているわけではないことをわれわれは知っている」と述べた。
アメリカ合衆国はイスラエルとの直接対話に賭けているよう。だが依然好転の兆候はない。ブリンケン国務長官は「ラファ攻撃をしなくても状況は改善できる」とイスラエルに働きかけている。
一方でネタニヤフ首相は「アメリカが反対しても我々はやり遂げる」と宣言しており協議前からかなり重苦しい空気が漂っている。あえてブリンケン国務長官の顔を潰して見せることでバイデン政権の顔に泥を塗っている。イスラエルが存続するためにはアメリカ合衆国政策当局者の支援が必要なのだが「どうせ11月になれば状況は変わる(実際に政権交代があるとすれば実際には1月になる)」と思っているのかもしれない。
ネタニヤフ首相はおそらくバイデン政権が自分を追い出そうとしていると考えており、おそらくバイデン政権が続く限り直接交渉でイスラエルを説得することは難しいだろう。最後の手段が国連安保理決議だったが、これもアメリカの国内政局を踏まえて弱々しい表現となり中国やロシアをねじ伏せる迫力を持たせることができなかった。
あえて希望的な材料も挙げておきたい。サウジアラビアとイスラエルの国交正常化交渉再開というニュースが出ている。しかしながら「進展があった」と積極的に情報発信しているのはブリンケン国務長官だけである。交渉の条件としてパレスチナ国家の樹立が入っておりネタニヤフ首相がこれを飲むとは思えない。
せめてもの救いは少なくとも来週の協議を前にしてイスラエルが極端な選択をすることはないということくらいだろう。つまり今週末はかろうじて何も起こらない可能性が高い。