ざっくり解説 時々深掘り

どうかひどい円安になりませんように マーケットは祈るような気持ちでFOMCを見つめる 日本経済が陥ったアメリカ依存の漂流

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  • 「天は自ら助くるものを助く」という諺がある。中村正直が明治時代に訳した「西国立志編」の冒頭の文章だそうだ。日本経済もまさにそのような状態に陥っている。
  • マイナス金利解除において日本のメディアには欠けていた議論があった。それが生産性向上の議論だ。日本のメディアには「する議論」が欠けている。
  • 日本のインフレは外部要因によって起きている。このためマイナス金利解除後の日本経済の命運はFOMCが握っていた。
  • 結果的にFOMCは現状維持となった。ドル円は一時151円まで急騰し、その後現状維持のニュースで円高に触れた。だがその流れは直ちに巻き戻され現在はまた円安が進行している。ドル円相場も方向性を見失っているようだが、少なくともマーケットが遅れていた急速な円安という悲劇は避けられた。
  • 一般投資家はかなり混乱していて「なぜ教科書通りに動かないのだろう」とただただ困惑している。メディアの情報が意思決定に全く役に立っていないのだ。
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一日中テレビで日銀の「歴史的な金融政策変更」に関するニュースを見ていた。

見ていて不安に感じたことがある。これを見てもどう行動していいかさっぱりわからない。司会者たちは一様に「最後には自己判断で」とまとめている。

質問回答サイトQuoraを見ると状況はかなり混乱しているようだ。マーケットの動きが教科書と違っており、不安を募らせた人たちが断片的な回答を求め盛んに質問をしている。さらにこれに対して断片的な一行回答がつく。そして時々思い込みに基づいた長くて取り止めのない回答がついて結局よくわからないままになってしまうのである。

日本のメディアが提供する情報は課題の理解には全く役に立っておらず、ただただ混乱を助長している。どうしてこんなことになったのか。


時事通信のまとめを読んでその理由がわかった。中小の賃金が上昇するかに注目が集まると書かれている。人々は「どうするか」ではなく「どうなるか」に注目している。ああそうなのかと考えて読んで見直してみた。「どうなるか」の議論しか出てこない。

賃金を上げるためには儲かる市場を探して儲かるものを売らなければならない。つまり賃金を上昇させるためには付加価値を高める必要がある。これが「する」の議論である。

BBCは今回のインフレが内因性のものであれば良いニュースになり、外因性のものであれば悪いニュースになるといっている。つまりこれをいいニュースにするも悪いニュースにするも日本人次第だといっている。

ところが日本では「どうなるか」の議論ばかりが進んでおり誰もどうするかの議論をしない。あえて無視しているのではなさそうだ。そもそもそんな発想がないのだろう。

政治さえも「どうなった」をアピールにつなげたいと考えているようだ。デフレからの脱却が実現すればそれが解散や補選にとっていい影響を与えるだろうというような書き方になっている。

「デフレ脱却宣言」に踏み切れるかは、首相の衆院解散戦略にも影響しそうだ。政府は消費者物価指数などの指標を判断材料に挙げるが、高官の一人は「指標は指標として、宣言するかどうかは政治的判断だ」と指摘。首相は19日、記者団に「総合的な判断を行わなければならない」と述べるにとどめた。

その結果として誰も何もやらないということになっている。だから状況から脱却できない。

誰も何もやらないとどうなるのか。アメリカの金融政策に依存することになってしまう。日銀発表後の金融や経済に詳しい人たちの感想をまとめるとざっと次のようなものだった。

  • 確かにマイナス金利は解除された。
  • この後財政再建は待ったなしだろう。
  • だが金融緩和策は維持されるようだ。結局日銀は大規模な利上げはできない。
  • そうなるとFOMC次第では急速な円安が加速することになるかもしれない。
  • そうなったら困るが日本側に打つ手はない。

結果的にFOMCは現状維持だった。このためドル円相場には大きな変化はなかった。最悪の悲劇は避けられた。

日銀の政策変更前には「思い切った利上げがあるかもしれない」という予測がありやや円高・株安に触れていた。だが日銀政策変更後には「結局ほぼ現状維持」ということになりドル円と株価は元の水準に戻った。FOMCの発表の後はやや円高の方向に触れたが150円を割り込むことはなく数時間経って揺り戻しが起きている。これを書いている時点では151円30銭程度をうろちょろしている。

FOMCの内容は2024年に関しては現状維持となった。一方で2025年の利下げ回数が4回から3回に減っている。つまりこれまで想定していたより金利が高い状態が長期間維持される可能性が出てきた。インフレの抑制が難しくなっており、やや悪いインフレが長く続きそうな予想だ。

今後、日本が「なる議論」から「する議論」に転換できない限り日本経済はこのままアメリカの金融政策に従属することになるだろう。

「する議論」が一向に進まない日本のメディアの論調はかなり混乱している。

マイナス金利が解除されれば円高方向に振れるはずなのになぜそうならないのか?ということが真剣に議論されている。ここでは毎日新聞の記事を上げたが、テレビ局も盛んにそのような記事を流し続けている。

質問サイトQuoraでもそのような質問が氾濫している。もはやメディアは情報整理には役に立っていない。ただただ状況理解を妨げているだけというような状態になっている。

日本人にとって政治問題は天気予報のようなものだ。誰も天気と政治をコントロールできると思っていないのである。

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