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【速報】アメリカ合衆国がガザの即時停戦を求める安保理決議案を回覧中とル・モンドなどが報道

SNSのXを見ていたところ中東に詳しい高橋和夫さんが気になる記事を紹介していた。ルモンドの記事だが「アメリカ合衆国が安保理にガザの即時停戦を求める決議案を回覧している」と紹介している。仮にこれが事実であればかなり衝撃的なニュースと言える。これまでアメリカ合衆国はイスラエルの自衛権を最大に擁護しアラブの提案に拒否権を行使してきたからである。ただし情報は極めて曖昧だ。逆の見方をすればネタニヤフ首相がラファ侵攻を急いでおりアメリカ合衆国が慌てて対策をしているという可能性もある。我々が考えるよりも状況が緊迫している可能性があり何もないことを祈るばかりである。仮にイスラエルが各国の制止を振り切ってラファ攻撃を強行すればガザ情勢にもアメリカの国際的立場にも極めて深刻な条項になることが予想される。

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ルモンドの英語版によると情報の発信源はブリンケン国務長官だ。サウジアラビアのメディアに対して「強いメッセージ、強いシグナルを送ることになる」と語った。同じ内容はアラブニュースでも報じられておりル・モンドの誤報ということはなさそうだ。

記事にも触れられているが、これまでアメリカ合衆国は独自の和平提案に固執しておりアラブの後ろ盾を受けたアルジェリアの提案などを拒否権を使ってブロックしていた。しかしながらこの和平提案は破綻していた。イスラエルは交渉から離脱し代表団を引き上げていた。ラマダンの開始後にもう一度イスラエルが直接ハマスと交渉していたなどと伝わっており「もしかすると今回こそは……」という期待もあったわけだが、その期待は打ち砕かれている。

アメリカ合衆国が立場を変えてアラブ側に立ったというのならこれは文句なしに良いニュースと言える。しかしながら、ル・モンドの記事の内容はかなり曖昧だ。

第一に今回のブリンケン国務長官の訪問はエジプトのカイロでの和平交渉をセットするのが主な目的だとされてきた。つまり従来通り独自和平に固執するならば国連安保理での決議など必要ないのである。

さらにこの提案は一度各国から拒絶されている。ル・モンドの一節である。

According to diplomatic sources, this text had little chance of gaining the Council’s approval and a new version was circulated to Security Council members on Wednesday. The amended draft stresses “the need for an immediate and durable ceasefire to protect civilians on all sides, enable the delivery of essential humanitarian aid, and alleviate suffering… in conjunction with the release of hostages still held.” No vote has yet been scheduled on this text.

外交筋によるとこの文書は安保理の合意を得る可能性は非常に低かった。そこで修正案が出された。この水曜日に出された修正案は人質解放や人道物資の運び込みなどするために確実な停戦が必要であると強調するものになっている。今のところ修正文書が投票にかかる予定はないとされている。

この背後ではネタニヤフ首相とアメリカ議会の間ではかなり緊密なやりとりが行われていたようだ。複数の共和党員は「ネタニヤフ首相と会談を行った」と述べた。ネタニヤフ首相はハマス殲滅の取り組みに対して強い意欲を見せたとされている。

一方でネタニヤフ首相は上院民主党側にも演説をさせてほしいと依頼し断られていたようだ。この記事では「上院共和党は要請を受け入れた」としているので、ネタニヤフ首相は上院の共和・民主両党に対して昼休みに演説をさせてほしいと依頼したようだ。このニュースはチャック・シューマー上院院内総務がネタニヤフ氏の提案を断ったことだけが共同通信のニュースとして日本語訳されている。

バイデン政権とネタニヤフ首相の間の関係性は極めて危ういものとなっている。ユダヤ系の有力者であるチャック・シューマー民主党院内総務はネタニヤフ首相を和平の障害であると宣言した。民主党はイスラエルとネタニヤフ首相を分離することで、イスラエル支援のユダヤ系の機嫌を損ねることなくネタニヤフ首相の暴走を食い止めたい。一方の共和党は民主党は左派の社会主義者たちに支配されておりイスラエルではなくパレスチナを支持しているとの印象をつけたいと考えているようだ。

今回のル・モンドの報道はサウジアラビアのニュースを受けた虹報道であり、あり確かなことは何もわからない。最も楽観的な見方に立てばようやくアメリカがガザ地区の人道状況を改善するために本気になったのだという気持ちになる。だが、逆に仮にネタニヤフ首相が国際的な批判を集めているラファ侵攻についてアメリカ側のレッドラインがどこにあるのかを確かめたいと考えているのかもしれない。仮にネタニヤフ首相がラファ侵攻を強行すればアメリカ合衆国の外交的な立場は大きく毀損されるだろうが、それでもネタニヤフ首相はそれをやろうとしているのかもしれない。

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