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背景のよくわからないドル買いが続き、1ドルが147円まで上昇

背景のよくわからない「理由なきドル買い」が続いている。これを書いている時点では1ドル147円台まで高騰した。ドル円相場が動くたびに補足説明が出るのだが最終的には「見方が交錯していてよくわからない」ということになっている。原油価格も上昇が続いておりガソリン価格にも影響が出そうだ。投資家は今後の金利の動きと為替相場に注目し、日々の暮らしに関心がある人はガソリン価格の上昇がいつまで続くのかを気にするだろう。

かなり先行きの視界が不安定な状況で確たる「答え」はないのだが、それぞれ関連報道をおさらいする。

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前回のおさらいから入る。アメリカの労働関係の統計が出た。統計は「やや悪化」だったので「これ以上の利上げはない」という観測が広がる。当然金利差はこれ以上は開かないのだから円高に作用する。実際に144円まで円が上昇(ドルが下落)した。

ところがその後なぜか真逆な動きが起きる。「労働統計は思ったより内容が悪くなかったのでは?」と正当化する観測が出た。だがその後「実際に何が起きているのかはよくわからない」と打ち消す報道が出ている。見方が交錯とは「人によってさまざまな意見があるが結局はよくわからない」という意味だ。ポイントになっているのは予想外の金利高(政策金利とは別に市場で金利が勝手に上がってゆく)である。7月から米国債の増刷が続いており今後もしばらく続くのではないかという予想がある。今米国関係の債権を持っている人にとっては下落だが、これから買う人にとっては「バーゲンセール」の可能性もある。

その後アメリカの連休明け(9月5日が労働者の日=レイバーデイで休み)の動向を待つのだという観測が出た。そこで東京相場の終わりごろに「147円を前に上値=147円は越えないであろう」という報道が出る。消費者物価指数が出るまで主なイベントがないからだ。

しかし連休明けのニューヨークでは147.6円台がついた。何らかの理由でドル買いが進んでいるようだ。こうなると後付けて説明が入れ替わる。利上げはもうないという理由は「金利が高い状態がしばらくは続く」と更新される。労働環境は悪化ではなく「今までの異常な状態が改善され堅調な状況が続く」と説明が変わっている。何が標準状態かがよくわからないのだ。

だが、この説明をすべて鵜呑みにするのも危険である。経済が好調であるならば株価は上昇を続けるはずである。つまり国債などの債権に資産を移す動機はなくなる。しかし中には「市場は過度に状況を楽観視している」とする投資家もいる。

投資をやっている人にとっては「釈迦に説法」だろうが、投資家は今後一段の利上げがあるか(これは米国債の一段の下落を意味する)既に最終局面に入っているか(これは米国債が現在最安値圏であることを意味する)を判断しつつ、経済の好調な状況が続くか(米国株を持ち続けても良いことになる)経済がこの後急速に悪化する(この場合は株を片付けて債権に逃避する)などの判断をすることになる。

資金に余裕のある人は短期的な上下に関係なく株を買えば「中長期的には上がる」のだが、手元資金に余裕がない人は「そういっても先のことが知りたい」と考えるだろう。後付けでどんどんと説明が入れ替わってゆく今の時期はかなり読み込みが厳しい局面と言えそうだ。例えば利下げがいつ始まるか(つまり債権価格が再び上昇を始めるか)の時期についても識者の意見は実にさまざまだし、その後の着地点(中立金利)に関しても合意はない。

一部の楽観視警戒論に見られるように市場の予想が外れるとパニック的な動きが生じる可能性もある。市場関係者と言っても冷静な人ばかりではないのだし、実際に市場関係者も説明に困るような現象が起きている。次のポイントはCPIが市場の予測通りになるかである。

政治的な問題に関心がある人にとっては別のトピックもある。原油の価格が上昇を始めている。アメリカの景気が引き続き好調である上にサウジアラビアが価格維持のために減産を延長することになった。自主減産は12月末まで続く。急速な変動によってガソリンへの補助の再延長が決まりつつあるが、ウクライナの戦争の影響を緩和するという名目で始まったこの政策はもう持たないだろう。地上波ではイロモノ扱いだった二重課税問題について解説するワイドショーも出てきている。

サウジアラビアは90ドルから100ドルくらいになれば減産を検討するのではないかなどと言われている。つまり今の高値の状態はしばらく続く可能性が高い。経済産業省や財務省の官僚はよくわかっているはずだ。

財務省陰謀論も囁かれるが、おそらく背景にあるのは過去最大に膨らんだ概算要求だ。防衛費と国債費が増加しているうえに、岸田政権が約束した子ども・子育て支援の要求額は今後も膨らむ可能性がある。このままでは減税要求が出かねないため、その端緒になりそうなガソリン諸税での妥協はいっさいしたくないのだろう。

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