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大阪万博がうまくゆかない理由の一つはどうやら「ゼネコンの英語力不足」らしい

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東洋経済が「大阪万博「請け負えばやけどする」ゼネコンの本音」という記事を書いている。大方政府の強引なやり方に巻き込まれることをゼネコンが不安視しているのだろうと思い読み始めた。だが、記事には意外なことが書いてある。それが「英語力不足」だ。東洋経済の記者はこれをあまり疑問視していないようなのだが、もしかするとこれが最も大きな停滞の理由なのかもしれないと感じた。

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東洋経済の記事は人件費や建築資材の費用が高騰することによって万博が儲からないプロジェクトになっていると書いている。ここまでは理解できる。また、万博側のプロジェクトマネージメント力不足についての指摘もある。これも従来指摘されてきた通りである。

ただ気になる箇所がある。記者もあまりこの点に着目していないのだが「言葉の問題」について触れている。

準大手と中小のゼネコンは海外で働いたノウハウがないため契約書を独自で結ぶ能力がない。そもそも「どこの言葉でやりとりするのか」と言っているところから「日本語でやってくれないと意思疎通ができない」と主張していることになる。「準大手」でさえ英語で契約書を取り結び顧客と折衝することができていないのだ。

「発注側の外国政府と国内のゼネコン各社が直接交渉することに、多くの会員が心配していた。どこの国の言葉でやりとりするのか。工事に日本の約款が適用されるのか。スーパーゼネコンならば交渉能力があるが、それ以外のゼネコン(準大手や中堅ゼネコン)は政府が間に入ってくれないと、交渉をうまくまとめられない」(日建連の山本徳治事務総長)。

例えば先方が何か無茶な要求をしてきたとする。日本側は「お客さんそれは無理ですよ、でもこういうやり方ならできますよ」と提案したい。しかし語学力がなければそもそもそれができない。そのために「まずは図面をもらって」「絶対にできるという確認が取れなければ」仕事を受けられないということになる。さらに契約書も日本式にしてもらわないと困ると言っている。つまり彼らは外国人とやりとりをしたくないのである。

このため建設会社側は「英語部分」を政府や事務局にやってくれと言っている。そもそも外国人とやりとりをすることをリスクだと考えているのである。

万博協会はここにきて、タイプXへの切り替え提案のほかに、協会が代わりに工事を発注する建設代行や、外国語対応が可能な窓口の設置など、複数の支援策を打ち出した。参加国とゼネコンの間を取り持って、工事の遅れを取り戻せるか。迅速な対応が求められる。

ただしこの記事は「英語はどうも苦手で」とは書かれていない。おそらく「語学ができないのは恥ずかしい」という気持ちもあり表立っては言い出せないのではないかと思う。

このニュースを聞いて一つの疑問が解決した。政府は保険を作って建設を促進するとしていた。「なぜ保険なのだろう」と疑問に思っていたが、おそらく英語ができない中小ゼネコン側がいざとというときに対応できませんよと言った真意をうまく汲み取れなかったのだろう。英語ができる官僚たちは「英語ぐらいなんとかなるだろう」と考え日本人が潜在的に持っている外国人に対する恐怖心を理解していなかったのだろう。だが準大手を含む業者は英語でのコミュニケーションも含めてよくわからないからリスクであると認識しているのだ。

建設会社が代金を回収できなくなるリスクを軽減することで、工事の契約を後押しする。

日本人がなぜ英語ができないについてはさまざまな説がある。近年になって英語力が落ちているという指摘もあるが、英語試験に参加する国が増えただけだなどという人もいる。つまり今更なぜ日本人が英語ができないのかをいまさら議論していても仕方がないしもう間に合わない。

ここまでくると、A案・B案・C案をあらかじめ写真にし「this one please」 と指差してもらえるような仕組みでも作らない限り受注する企業は出てこないのかもしれない。観光地のレストランで外人向けに導入されたあの写真つきのレストランメニューと同じような仕組みである。

ただ、こうなると1970年の万博の時の建設業者たちはどう対応していたのだろうかという気がする。今よりも英語教育は充実していなかったはずだ。言葉の壁をなんとかして乗り越えていたはずなので、今はそのような「気概」が失われてしまったのかもしれない。

二階俊博氏は「大阪のど根性で」と精神論を訴えていたのだが、意外と最後は根性の問題なのかもしれないと思う。

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