ざっくり解説 時々深掘り

ChatGPTやBingを使うと国際政治学の難しい記事も簡単に読めるようになる

Twitterに国際政治学の記事が流れてきた。フォーリンポリシーの「One World, Rival Theories」という記事である。国際政治理論の潮流にはどんな流派があるのかということを扱った英文の記事なので「読んでみたいなあ」とは思うのだが英語だしかなり長い。政治学の素養もないし「読むのは面倒だなあ」と思った。

ここでChatGPTでラクをしようという考えが浮かんだ。実際にやってみたところ10秒程度で要約と翻訳が完成した。これで国際政治の記事を読まずにまとめ記事が量産できるか?と期待したのだが、世の中はそんなに甘くない。まとめは間違っていた。

ただChatGPTが全く無能かというとそんなこともないようだ。使い方によっては非常に役に立つ。繰り返しになるが英語と政治学の素養がないにもかかわらず大体の骨子が理解できてしまうのである。ChatGPTとBingのチャットボットを使って記事をまとめてみた。

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記事の「一つの世界に複数のライバル理論」とは

  • 世界は一つのはずなのにそれを説明する国際政治学の理論はいくつもあるの?

いうような意味である。確かに答えが知りたくなる内容だ。

記事は具体的には、リアリスト・リベラリスト・アイディアリストという3つの分類をしており、それぞれに創始者・思想家・実践家がいるという構成になっている。

だが、ChatGTPの要約はそれとは若干異なっていた。ChatGPTによると記事は「世界は緊密に結びつくだろう」と言っている人たちと「世界は分断されるだろう」という人たちがいると言っているが、おそらくこれはこの文章の主題ではない。このため「要約を示しなさい」という学校の宿題にこれをコピペしてゆくと合格点はもらえないだろう。

気を取り直してGoogle翻訳で記事を読んでみよう。

国際政治の学派には、リアリスト・リベラリスト・アイディアリストと呼べる3つの流派がある。それぞれが「自分達の流派こそ世界の政治を説明できる」と主張するが、現在普及している理論を使って世界の動きを予測することは難しい。ただし国際政治学は複雑になりがちな国際政治に一定のフレームワークを提供してくれる。つまり、こうしたフレームワークを利用することで国際政治について議論したり理解することができるようになるのだ。

では、ChatGPTが文章の要約ができないからChatGPTは使えないのか?ということになる。そんなことはない。この記事自体にはしっかりした内容があるため、これをChatBotに文脈として与えた上でいくつか質問をすると記事の内容について理解を深めることができる。つまり優れた記事はChatGPTに優れた文脈を与えることができるのである。

ただ構成に若干わかりにくいところがある。この記事にはアイディアリストについての記載がほとんどない。代わりに構成主義と呼ばれる人たちについての言及が目立っている。これについて質問するとChatGPTは的確なまとめを返してきた。

構成主義とは国家だけでなく社会制度やアイデンティティなどの背景情報も国際政治に影響を与えるという立場の人たちだ。ChatGPTによると構成主義はメジャーな3つの学派には当てはまらないのだそうだ。

ちなみにBingでも同じ質問をしてみた。BingはBingはリアリスト・リベラリスト・建構主義(これはGoogle翻訳で「構成主義」と呼ばれていたもの)の3つについて説明していると言っている。ChatGPTは構築主義はアイディアリストと共通点は多いが厳密には同じではないと言っているのだがBingのチャットボットはアイディアリスト(理想主義)と建構主義を置き換えてきた。ただし、大筋で言っていることは同じだ。ちなみに建構主義も構成主義も「Constructivism」の略である。

つまり、こうして質問を重ねることで記事のざっくりとした構成を掴むことができる。ここまでわかればあとは各論について質問をすればいい。

例えば「リベラリスト」という言葉は現在ではかなり広い意味で使われておりまとまりがない、リベラリストは要するに「民主主義こそが素晴らしい」と言っているような人たちなのだが今ではいくつかの分派があるそうだ。これについてBingのチャットボットに聞いたところ理想主義・経済相互主義・民主平和論・制度主義などに別れるとまとめてきた。おそらくこれらの主義について詳しく聞いてゆけばさらに深い理解が可能になるものと思われる。

このように「記事を読まずに要約だけしてほしい」という人には不向きなサービスだ。だが、記事を読んだが構成がよくわからないという人にはかなり役に立つサービスになっていると言えそうだ。

しっかりしたコンテクストのある文書を読ませてそのドリルダウン(深掘り)をしてゆくと記事への理解度が深まるのである。「なんとかとはさみは使いよう」などというが、全てのクリエイティブな仕事を奪うというわけではなさそうだ。むしろ誰が使うかによって大きな差が出てくるサービスになっていると言えるだろう。さらに言えばChatGPTに読ませるべき構成のしっかりした文章を探してくることも重要と言えるだろう。

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