スーダンの金鉱山が支えるロシアの軍事侵攻

CNNがEXCLUSIVE(独自)としてスーダン情勢を伝えている。ロシアがスーダンから金(きん)を奪っておりそれがウクライナ侵攻を手助けしているというのだ。CNNの情報ソースにはおそらく偏りがあると思うのだが、それでも破綻した国家が「あってはならない戦争」の資金源になっている様子がよくわかる興味深いレポートになっている。






スーダンはアフリカ第3の貴金属産出国だそうだ。そのスーダンから金が密輸されている。制裁違反ではあるがスーダン政府は軍をコントロールできていない。軍がロシアへの密輸に加担しているのではないかとCNNは見ている。

金が軍に収奪されると政府にはお金が入ってこなくなる。そればかりかスーダンの民主化運動がロシアの支援のもと抑圧されるという悪循環が生まれる。

なぜそうなったのか。きっかけは南スーダンの独立だったようだ。石油利権を手放し金などの貴金属採掘に依存せざるを得なくなった。アメリカからの制裁は徐々に緩和されたが相良祥之さんがロイターに寄せた記事によるとオマル・アル・バシル政権は持たなかったようだ。

スーダンで政変が起こったのは2019年4月11日だった。当時75才で30年に及ぶ強権支配体制を維持してきたオマル・アル・バシル大統領が軍によって解任された。2018年12月から続いてきたデモに軍隊が便乗した形だった。デモの直接のきっかけはパンの値上げだったというが、背後には利権構造の変化に伴う権力基盤の弱体化があったのではないかと思われる。

当時の記事を読むと暫定軍事政権が作られ憲法が停止され国境が閉ざされた。だが、民衆は当時この軍による革命を支援していたようだ。国連は「事態を注視する」としたが実際に行動は起こさなかった。

ロイターの別の記事はこれをアラブの春の失敗と見ている。民衆はアラブの春で独裁を打倒したが議会制民主主義のもとでの社会改革は進まない。そこで軍に頼るようになり民主化要求が軍によるクーデターによって完成するという不思議な形が生まれた。こうした傾向は、エジプト、スーダン、アルジェリアで起きている。この時点でチュニジアは「唯一アラブの春」が生き残った国とみなされていた。だが「チュニジアでアラブの春が終わった」で書いたようにのちに大統領が直接権力を掌握し議会を退けるという独裁体制に向かっている。北アフリカの民主主義は全部枯れてしまった。

朝日新聞によると軍はバシル氏に近かったイブンオウフ国防相が選ばれたため「バシル政権のコピーだ」として軍制への反発が起きた。だが「時すでに遅し」という感じだったようである。結局国民の困窮はそのまま放置された。

その後、スーダンはイスラエルを承認しアメリカからの経済制裁は解除された。トランプ政権の「外交的成果」と言われている。しかし長年の制裁で経済は弱体化しており、さらにそこに新型コロナ禍がやってくる。

2021年10月にまたクーデターが起きた。軍がそのまま政権を握るのではなく、民主化勢力を抱き込もうとしている様子がわかる。そしてそれが行き詰まるとまた別の誰かがクーデターを起こし民主化を要求する国民を弾圧するという繰り返しができているようだ。

普通の「民主主義が破綻した国」では、こうしたことが政党の間で起きる。ある政党が連立に失敗すると支配権を握ろうとして新しい選挙を要求し連立政権を離脱するというのがおきまりのパターンだ。だがスーダンではこうした議会政治がそもそも成立せず、選挙の代わりに軍の特定勢力がクーデターを起こすのだ。その度に死者が出る。

軍の支配に抵抗するためにバイデン政権は民主化を求めて支援を停止した。相良祥之さんの記事はこれをエコノミック・ステイトクラフトと言っている。経済力によって政治を外から支配しようというやり方である。記事には「エコノミック・ステイトクラフトには一定の効果があったようだ」と書いている。軍はアメリカに妥協し一定の民主化を進めたからである。ただこの記事が書かれたのはウクライナの戦争が始まる前である。

予備知識なしにCNNを読むとスーダンには政府があるにも関わらず「軍」がロシアと結託して密輸を決行しているように思える。さらにそれは破綻国家が勝手に引き起こした惨事のようにも感じられる。だが実際にはそもそも政府が成立しておらず軍も一枚岩ではないのだろうという予測がつく。

さらにCNNが触れていないのは「支援を打ち切り外から圧力をかける」ことの是非である。結果的に政府は弱体化し、その隙をついて軍が直接ロシアと結びつき「新しい闇ビジネス」が生まれている。CNNによると、これはウクライナの戦争を継続する力になっておりスーダンの一般庶民の弾圧にも使われているのだが、実はアメリカの関与がこうした事態を引き起こしている可能性がある。他国の政治への圧力のかけ方が極めて乱暴なのだ。

さらにこの記事にはわからない点がある。軍の勢力がオリガルヒと結びつき国家資源を私物化しているようだという点まではわかった。相手になっているのは新興財閥オリガルヒだ。軍はスーダンの金をマネタイズできない。オリガルヒが盛んに金を持ち出しているということは「どこかに売り先がある」ということなのだろう。では、なぜ西側が経済制裁を行っているにも関わらずオリガルヒたちは金を資金に変えてウクライナの戦争につぎ込むことができているのだろうかという疑問が湧く。

西側の指導者たちの説明によればロシアは国際金融から遮断され、ロシアは国家デフォルト同然の状態にあるはずだ。この制裁が実は全く効果がないのか、あるいは何か別の仕組みがあるのかはわからないままだ。

CNNも一体どの程度の金が「政府の目を盗んで密輸されているのか」をつかむことができない。そもそも国家が機能しておらず全体像がよくわからないのだろう。

スーダンが国家としてまとまりをもてない理由の一つは複雑な民族構成がある。アフリカ系の中にもナイル・サハラ語族とニジェール・コンゴ語族が入り混じっている。また4割はアラブ系だが純粋なアラブ系だけではなくアラブ化したアフリカ系を含むという。一応の公用語はアラビア語と英語だがアラビア語が多数派言語というわけではない。話し合いの基盤を持つことが難しく、石油や金と言った利権を誰が握るかによって権力基盤が決まる。

アメリカは民主的な国家基盤を持つことが難しい国に単に圧力さえかければ「民主化」が成功すると本気で考えていたのだろう。だがこれは「民主主義は圧力の中からは生まれない」という当たり前の結論を導いただけだった。

結局、一般のスーダン人が犠牲になり、ロシアへの協力者を増やしただけだった。一方、ロシアは「国家の威信を守るため」と言いながら民衆を犠牲にし「後ろ暗い密輸」に手を染めているようだ。

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