フランス大統領選挙直前にマッキンゼーへの調査が開始される

今度の日曜日にフランスで選挙が行われる。その直前に「マクロン陣営に逆風」が吹いた。マッキンゼー・アンド・カンパニーが脱税容疑での捜査が開始されたのだ。一見関係なさそうな2つの疑惑なのだが検察のなかでは「一つのつながった物語」になっているようである。選挙直前の捜査ということでどんな意図があるのか気になるのだが、その辺りはまだ明らかになっていない。検察の意図がよくわからないという点がこのニュースの最も気持ちの悪いところである。






まず記事からご紹介しよう。時事通信が6日に伝え7日にAFPが日本語に翻訳している。非常に短い記事だ。

  1. フランス金融検察局(PNF)は6日、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領率いる政権のコンサルタント会社への巨額な支払いに関連する脱税疑惑について、捜査を開始したと明らかにした。
  2. 上院調査委員会は、2018~21年に米コンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company)などへの政府支出が倍増し、昨年には過去最高の10億ユーロ(約1350億円)に達したとの報告書をまとめていた。
  3. PNFの捜査チームは「無計画な広がり」を非難。マッキンゼーは、フランス国内売上高が3億2900万ユーロ(約440億円)だったにもかかわらず、過去10年間にわたり国内で法人税を払っていないと指摘した。一方のマッキンゼーは、これを否定している。

2と3の間に跳躍がある。確かにマッキンゼー・アンド・カンパニーが売り上げを海外に飛ばしているとすればこれはフランスの法人税を安くするためのテクニックだ。フランスの法律に反するとするならばそれは捜査されるべきなのだろうし問題があるならばそれなりの責任を取らせるべきだと言えるだろう。マッキンゼー・アンド・カンパニーが「知らなかった」ということは考えにくい。

だがこれと2がつながらない。仮にこれを「マクロン陣営の不正」と断じるためにはマッキンゼー・アンド・カンパニーが海外に「不正に隠した所得」をマクロン陣営に還流させていなければならない。この繋がりが証明できなければ、単にマクロン陣営がマッキンゼー・アンド・カンパニーに儲けさせてやっただけという事になってしまう。

フランスの選挙については以前にまとめた。マクロン大統領は投資銀行家の出身で庶民からは嫌われていた。これに反発した労働者たちはイエロー・ベスト運動を引き起こしたこともあった。そこでマクロン大統領は外交に主軸を移すことになる。プーチン大統領を説得するハイステークス外交を展開したことで国内問題からの逃げ切りを図ろうとしている。直前まで出馬宣言をせず、現在もそのほかの候補とは一切討論を行っていない。

今の所この逃げ切り戦略はうまく作用していると言われてきた。中所得者・低所得者対策に焦点を当てるルペン候補が猛追しているのだが今の所マクロン大統領の優位は変わっていない。

この話を聞いていて思い出した本がある。それがフランサフリック―アフリカを食いものにするフランスだ。フランスはアフリカの植民地を手放すのだが親仏政権との間には相互防衛を結んでいた。フランスの政権はアフリカ援助の一部をキックバックしてもらい選挙資金にあてていたという疑惑が持たれていた。

つまり海外に援助を飛ばしてそれを密かに受け取るというのはむしろ古典的な手法なのである。

こうしたフランスとアフリカの間の不適切な関係はのちに批判されることになりしばしば政争にも使われたようだ。マクロン大統領も不適切な関係を改め流という立場を強調しサブサハラからの軍事展開の縮小やルワンダの虐殺について謝罪はしないものの責任は認めるという態度で総括を進めてきた。

仮にマクロン大統領がこのような手法を使っていたと仮定すると「やはり大統領選挙にはそれなりの資金が必要でありどこかからお金を持ってこなければならないのかもしれない」と思える。庶民の中には「所詮マクロンも昔の政治家と同じだった」という印象を持つ人が出てくるかもしれない。

今回の捜査開始の狙いをもっとあけすけに書いているのが時事通信である。もともと野党の指摘で始まった問題なのだそうだ。

  1. 保守系野党の共和党が多数を占める上院は3月中旬、マクロン氏の就任後にマッキンゼーなど大手コンサル会社への発注額が2倍以上に膨れ、2021年には10億ユーロ(約1350億円)を超えたと指摘。
  2. さらにマッキンゼーが過去10年間、一度も納税していないと訴えた。

1と2の因果関係は証明されてはいないのだが「疑惑」としては十分なのだろう。こう考えると「一応捜査しましたが何も出ませんでした」ということになるのかもしれないし逆に「最も選挙戦に影響がありそうな時期を選んだ」のかもしれないと感じる。選挙への影響が注目されるが検察の意図はよくわからない。ただ迷っている有権者に最後の判断材料を与えるニュースになることは間違いがなさそうだ。

終盤になりマクロン大統領の発言は過激さを増している。ルペン候補を嘘つき呼ばわりし社会の分断を煽っていると決めつけた。またプーチン大統領を引き合いに出し、ルペン氏はプーチン氏との関係に満足顔だと語ってもいるそうだ。マクロン大統領が最後まで論戦を避けたのは得策だったのかもしれない。大統領が口汚い言葉で政敵を罵れば罵るほど彼の発言に疑いを持つ人は増えてゆくだろう。過激さを増してゆくマクロン大統領の発言は焦りの裏返しなのかもしれないなどと感じた。

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