西側の経済制裁にも関わらずルーブルがモスクワ市場で急進

西側の制裁にも関わらずモスクワでルーブルの価値が急進している。国内向けに「経済制裁は効いていない」と印象付けたいロシア政府に対してアメリカ合衆国は「戦費を犠牲にしてルーブルを支えている」と応酬した。

こうした「戦い」をよそに中国の人民元の価値が上がりそうだというニュースもある。エネルギー貿易で使われ始めているからだ。中露貿易だけでなく、サウジアラビアも人民元決済に加わる意向を見せている。

ウクライナ侵攻からまだ1ヶ月あまりしか経っていないいないわけだが国際金融をめぐる環境は我々が想像する以上に日々大きく変わっているようだ。






モスクワでルーブルの価値が急進している。このニュースを読んで「西側の制裁は効いていないのか」と感じた。ロイターの記事でも「西側諸国の追加制裁は材料視されていない」と書かれている。案の定アメリカ側はこれに対して「本来戦争に使うはずだった資金でルーブルを買い支えている」と応酬して見せた。制裁は効いていると思わせたいからだろう。

ところがこのルーブル急進の記事を注意深く読むと別の側面が見えてくる。

  • ルーブルの需要は「ウクライナ後」に落ち込みを見せている。
  • この記事はあくまでもモスクワ市場のものであり世界の市場でルーブルの価値が上がっているわけではない。さらにいえば国際決済からは締め出されているのだから海外の市場でルーブルの価値が上がるわけもない。
  • つまり「ロシア国内では西側諸国の制裁はあまり深刻に捉えられていない」だけだということになる。

と考えると、国内向けに強いルーブルを印象付ける狙いがあるのだろうと思われる。アメリカ合衆国が指摘する通りに「ウクライナでの戦争に振り向ける財源」が使われているとしたらロシア政府(つまりプーチン大統領)が対面を非常に気にしているということがわかる。侵略の進行よりも国内向けの印象作りの方がプーチン大統領にとっては優先順位が高いということになる。つまり戦争そのものがっこく遺髪用の道具だということになる。

ロシア政府が体面を気にする姿勢はロシア国債のデフォルト問題でも垣間見られる。ロシア政府は債権者の期待に応えるためにはなんでもやると宣言して見せたのだが、実際の対策はだからルーブルで支払いますというものである。つまりロシア政府は誠実に義務を履行しようとしているのにアメリカが妨害しているという構図をはっきりさせておきたいのだろう。

一方で人民元の存在感が増している。中国がロシアからの石炭と石油の購入を再開した。決済通貨は人民元だ。人民元決済の仕組みが整い貿易が再開されたものと思われる。さらにアメリカとの対立を深めるサウジアラビアも人民元決済を検討するというニュースがある。

このようにして人民元は次第にエネルギー調達分野で準国際通貨化しつつある。完全にドルと人民元・ルーブルが切り離されたわけではなくある程度独立したネットワークがかなり急速に整いつつあるのだ。西側に石油・石炭が売れなくなったロシアの資源は価格的には優位になっている。外貨不足と燃料の高騰に悩まされている新興諸国はおそらくこのマーケットに魅力を感じるようになるだろう。

国際社会が急速に分化していることが間接的にわかる事例があった。

国連人権理事会からロシアが締め出された。だが賛成国は意外と多くなかった。「国連に加盟する193か国のうち93か国が賛成したが、24か国が反対、58か国が棄権」したとAFPが伝えている。AFPはこれを「対ロシアでの国際社会の結束の弱まりが示された」と分析する。ロシアの軍事侵攻にシンパシーを感じているというより西側が主導する国際市場についてゆけなくなっている国が増えているのかもしれないと感じる。

もちろん先行きがどうなるかはまだ見通せないわけだが意外と深刻な経済のセグメント化がかなり急速に起きつつあるのかもしれない。ドル支配体制の弱まりは自由貿易で恩恵を受けてきた日本にとってはあまり好ましいこととは言えないだろう。

参考文献

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