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テクネイト・オブ・アメリカの下地づくり? トランプ政権がウクライナ東部割譲を容認

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ウクライナとアメリカの間の和平会談が始まった。今回特筆すべきなのはアメリカ側の特使がロシアの利益代表として振る舞っているという点だ。

当ブログでは冗談半分で「大国による世界分割の事前準備では?」と揶揄しているのだが自己催眠にかかってもおかしくないような状況が生まれている。

アメリカ合衆国には古くから自立生存圏を作ろうという「テクネイト・オブ・アメリカ」という構想がある。

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事前のインタビューにおいてアメリカのウィトコフ特使は「ウクライナの東部は住民投票の結果ロシアへの帰属が決まっているがヨーロッパが認めてくれない」と言っている。ウィトコフ特使がプーチン大統領に取り込まれたと考えることもできるが、トランプ大統領もこれに反対はしていない。

一方でトランプ政権は中国・日本・韓国/EU/メキシコを相手に貿易戦争を始めるのではないかと言われている。すべての国に相互関税をかけると事務手続きが煩雑になる上に物価に対する影響も図りしれない。結局開始までにはすべてを「精査しきれない」ということなのだろう。

またルビオ国務長官はこのところ「スケープゴート」として利用されることが増えており伝統的なアメリカの外交政策が対ウクライナでの交渉に生かされることはなさそうだ。せいぜいEUの批判の風よけとして利用されるだけだろう。

ウィトコフ特使は黒海の航行の安全についてもウクライナと協議したい考え。クリミア半島の併合を既成事実化し黒海の航行の安全が保証されればロシアは地中海を通じて西アフリカなどの鉱物資源にアクセスできるようになる。ロシアにとっては重要なテーマであるといえる。

“I think that you’re going to see in Saudi Arabia on Monday some real progress, particularly as it affects a Black Sea ceasefire on ships between both countries. And from that, you’ll naturally gravitate into a full-on shooting ceasefire.”

Ukraine, US teams hold talks in Saudi Arabia, US envoy hopeful on ending war(REUTERS)

アメリカ合衆国が「ロシアの権益保護」を自国にとって有利なものとみなしているということがわかる。

トランプ政権はグリーンランドにおいて「親族外交」を展開している。アメリカ合衆国の要人が訪れるとデンマークとの間に軋轢が生じかねないため「自分の息子」や「副大統領の夫人」を派遣しているのだ。

仮にトランプ政権がロシアと中国からグリーンランド周辺の北極海航路を守ろうとしていると考えるならば黒海でロシアの権益を代表する動きが説明できなくなるが、自国の生存圏を確保するために大国との間にディールを結ぼうとしていると考えると説明は容易い。

21世紀になってまるで1494年にスペインとポルトガルの間に結ばれたトリデシャス条約のような「世界山分け協議」が行われていることになる。当然ウクライナが主権国家であるという前提は全く重要視されていない。

これを展開すると「今は中国をライバル視しているが自国市場から排除した後は安全保障上の協定を結ぶ可能性があるのではないか」という疑念につながる。つまり日本や台湾の頭越しに勝手に境界線を作りかねないということになる。

今の時点ではこれは当ブログの妄想に過ぎない。しかし、アメリカから連日流れてくるニュースを見ると想像をはるかに超えるような憲法秩序の破壊が起きており、外交安全保障で何があってもおかしくない状況だ。

必ずしも共和党タカ派を支援する気にもなれないのだが、それでもMAGAから見れば「比較的マシ」な部類の人たちである。日本の石破政権も旧来の共和党のパイプに対する支援を通じて彼らの立場の強化を図ってほしいところだ。

しかしながら石破政権は支持率が急落しており予算の年度内成立も次第に怪しいものになってきている。日本がじっくり腰を据えた戦略的支援ができる環境が整っているとは思いにくい。

EUでは「脱アメリカ」に向けた動きが強まっているがカナダの総選挙もカナディアンナショナリズムを最重要テーマにした選挙になると予想されている。トランプ政権の意図がどこにあるのかはよくわからないがカナダを51番目の州にという発言が続いていて、これがカナダ政局に大きな影響を与えようとしている。

ピエール・ポワリエーブル氏率いる野党・保守党は、1年以上にわたり世論調査で2桁のリードを保ってきた。トルドー政権の失策を強調し、生活費の高騰や住宅不足への国民の不満を吸収してきたためだ。しかし、ここにきてトランプ氏が対カナダで威圧的な姿勢を強めたことで情勢が変化。カナダ国内では愛国心が高まり、「反トランプ」で結束する構図が鮮明になっている。

カナダ首相、4月28日の総選挙実施を発表-トランプ氏巡る対応争点(Bloomberg)

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