トランプ大統領がウクライナの両道分割について協議を始めると宣言し波紋が広がっている。そもそも情報が混乱しアメリカの安全保障が極めて脆弱な状況に落ちっていることがわかる。このエントリーでは落穂拾い的に周辺記事をまとめた。
トランプ大統領はプーチン大統領とウクライナの資産分割について話し合っていると言われていた。この中には原子力発電所(チョルノービリとザポロジェ)が含まれていた。後にREUTERSが「トランプ大統領が所有を示唆したのはザポロジェである」と理解されるようになった。つまりロシアからウクライナにではなくアメリカに資産を返却するという構想に変わったのだという理解だ。具体的にプーチン大統領がこのアイディアに賛同したのかについては語られなかった。
最新の情報ではトランプ大統領は領土分割について協議しているということになっている。ただこのニュースはさほど大きくは広がらなかった。そもそもトランプ大統領の主張が二転三転していて何を信じていいのかがわからなくなっているからだろう。
- 「領土分割」の協定協議へ 米大統領、ウクライナ巡り(共同通信)
- Trump says ‘dividing up lands’ within negotiations between Russia, Ukraine ‘is being negotiated as we speak’(the Kyiv independent)
- Trump says ‘contract’ being drafted on ‘dividing up’ land in Ukraine war (the Hill)
トランプ大統領の発言の歪みは様々な歪みにつながっている。
イーロン・マスク氏がヘグセス国防長官から「中国との戦争についてブリーフィングを受けている」という情報が出た。真偽不明だがニューヨーク・タイムズが報道したことでそれなりの広がりを持って受け止められている。外国と戦端を開くかどうかは大統領の専権事項なので「マスク大統領説」を強く印象付ける狙いがあるものと考えられる。
つまりトランプ大統領は状況をコントロールできなくなっているという印象をつける狙いがあるのだ。
実効性にも懸念が広がっている。
外交経験の浅いトランプ大統領がヨーロッパや中東と交渉をする際には共和党の伝統的にタカ派の人たちに依存しなければならない。ところがトランプ大統領は自分が署名した大統領令が司法から攻撃されると「あれはルビオがやった」と責任逃れをした。
なにか失敗があったときにはルビオ氏に押し付けようとしているということがわかり共和党タカ派との関係が「信頼関係ではない」ことがうかがえる。これまでもルビオ国務長官は眼の前でゼレンスキー大統領との会談を破壊され虚ろな表情で見守るしかなかったなどと指摘されており、彼が政権に残り影響力を持って仕事をするのは難しいのかもしれない。日本は共和党タカ派との接点はあるがMAGAとの接点はあまり多くない。
この情報空間の混乱は日米同盟にも暗い影を落とし始めている。極めて小さなニュースではあるが異様な報道を見つけた。
プーチン大統領やシリアのアサド前大統領に親和的で、なおかつ日本の「軍拡」は危険だと主張するギャバード情報長官が来日した。普通日本政府はアメリカとの盤石な関係をことさらに強調したがる。しかし今回は事前発表はなく「後になって実は来ていた」事がわかっている。日本側に公開できない理由があるのか、そもそも石破総理がギャバード氏と会えているのかはわからない。つまりギャバード氏は石破総理をスルーして別の人とあっていた可能性があるということになる。米に対する強い見捨てられ不安を抱える日本では即政局化しかねない。
米国家情報長官室(ODNI)は22日までに、ギャバード長官が日本やタイ、インド、フランスを訪問したと発表した。訪日した日時は不明。第2次トランプ政権の閣僚として初の訪日だった可能性がある。今月10日、日本などを歴訪する計画だと明らかにしていた。
ギャバード米情報長官の訪日判明 第2次トランプ政権閣僚で初か
トランプ大統領はウクライナとロシアが入った和平交渉はすぐにでも締結されるだろうと見ている。ロシアとウクライナはエネルギー関連施設の攻撃を手控えることで合意したと言われていたが実際にはクルスク州のガス施設に攻撃が加えられ双方が激しく罵り合っている。長期的な信頼関係よりも駆け引きを重んじるのはスラブ圏の常識的な反応と言える。つまり実効性を担保しない協定にはなんの意味もないということがわかる。