もともとはQuoraの書き込みを元に「大陸国家・海洋国家」について整理するつもりだった。だがロシアとアメリカの和平協議の内容を見てかなり驚いた。内心なぜ日本人は全く騒がないのだろうか?と感じたくらいだ。
もともとトランプ大統領とプーチン大統領は「すでに多くの要素で合意している」ということになっていた。だがこの時点では「プーチン大統領のオリガルヒ転がし」に乗ってしまったのだろうと軽く考えていた。
プーチン・トランプ会談が終わったあとで内容の一部が出てきている。おそらく日本のメディアでは意味不明の合意として扱われるだろう。プーチン大統領は「やっぱり戦争をやりたがっている」のに「なぜか海上停戦とインフラ停戦」だけが合意されているからである。
ホワイトハウスが1時間半以上に及ぶ会談後に発表した声明によると、両首脳は「エネルギーとインフラの停戦」に合意し、「黒海における海上の停戦、全面的な停戦、恒久的な平和」に関する協議を開始することで一致した。協議を中東で「即時」開始するとしたが、誰が協議を主導するかは明らかにしなかった。
プーチン氏、ウクライナ30日停戦に同意せず-エネ施設攻撃は制限(Bloomberg)
しかしBloombergは別の記事も出している。
16日夜には大統領専用機で記者団に対し、「特定の資産の分割」方法を両者が既に話し合っており、その中には発電所も含まれると語った。これはウクライナ南部ザポリージャ州でロシアが占拠する原子力発電所を指している。
米ロ首脳協議へ、ウクライナ抜きで進展も-トランプ氏が資産分割示唆(Bloomberg)
この2つを合成すると次のようになる。アメリカはロシアがウクライナ東部を勢力圏に収めることを容認する。一方でロシアはアメリカがウクライナ西部を勢力圏にする。これが「資産分割」である。資産分割には原子力発電所が含まれる。チェルノービルはアメリカ領でありザポリージャはロシア領だ。
さらにアメリカは黒海におけるロシアの航行の安全を保証する。ロシアはクリミア半島を確保し黒海を通じて海に出る通路が得られる。
つまりこれは非常に「大陸国家的・帝国主義的な生存圏分割協議」ということになる。Bloombergは「大陸国家的発想」という用語を避けつつウクライナが主権国家扱いされていないことを明確に書いている。
これらを考え併せると、ウクライナが関与しようとしまいと、多くの決定が既に行われた可能性がうかがえる。
米ロ首脳協議へ、ウクライナ抜きで進展も-トランプ氏が資産分割示唆(Bloomberg)
二大常任理事国の間で「主権国家を否定する動き」が出て来たということになり国連の体制が事実上崩壊したということを意味している。
日本はアメリカによる安全保障の庇護下に置かれ通商国家として戦後の繁栄を築いてきたという歴史があるが、この前提が崩壊したことになるのだが、おそらくメディアはこの問題を扱わず「予算を通すために自民党がどの政党を抱き込むか」という問題ばかりを取り上げ続けるはずだ。結果的に日本人はこの新しい動きから取り残されることになるだろう。
一方でヨーロッパとカナダはこの問題を深刻に受け止めている。またこの余波はガザにも及んでいる。イスラエルの戦闘が再開され極右が政権に復帰した。