イスラエルがガザ地区への攻撃を再開した。一部報道では一気に400人が亡くなったとされる。一部国家指導者同士の世界分割の影で人の命はまるで石ころのように扱われている。
表向きの理由はハマスが人質を解放しないからというものだそうだが、そもそも人道支援を最小限に絞ってきたことからガザを開放する意図などなかったことは明らかだ。
アメリカ合衆国とロシアは主権国家ウクライナの頭越しにウクライナ資産分割協議を始めたとBloombergが伝えている。ウクライナはロシアとアメリカ合衆国がお互いの生存圏を分けるための象徴として扱われているように見える。
ロシアはケロッグ外しを行い中東問題担当のウィトコフをカウンターパートに選んでいる。これもロシアとアメリカが「ロシア・中東」を一つのペアとしてみていることの表れと言えるだろう。
イスラエルはこのメッセージを正しく捉えたようだ。イスラエルが生存圏を確保するためには周辺に「フリースペース」がなければならない。シリアのような主権国家も認められないしましてやパレスチナの国家など許されるはずもない。
大陸国家・帝国主義化・生存圏などの概念は「どこか陰謀論めいて」いるが、それでもこの概念をいれると彼らが念頭に置いている世界秩序というものが何を意味しているのかがよくわかる。
一夜にして400人がなくなったそうだが、イスラム教世界はラマダンの最中だった。
- イスラエルがガザ地区に空爆、400人以上死亡とハマス発表 停戦発効後で最大規模(BBC)
- イスラエル、ガザでの戦闘を再開 何が起きたのか(CNN)
- イスラエル、ガザ空爆で事実上停戦終了-人質解放まで戦闘継続の意向(Bloomberg)
イスラエルの生存圏戦略とはどのようなものなのか。
イスラエルはイスラム教国に囲まれた国だ。しかしイスラム圏にはシーア・ペルシャとスンニ・アラブという異なる勢力がある。シーアを敵視することで敵の敵は味方ということにしたいのではないかと思える。
これに呼応するようにアメリカ合衆国はイエメンのフーシ派を攻撃している。しかし、フーシ派はイランのプロキシーとして扱われている。
トランプ氏は、「イランから資金提供を受けているフーシ派は、米軍機に向けてミサイルを発射し、我々の部隊と同盟国を標的にしている」とソーシャルメディアに投稿。フーシ派の「海賊行為、暴力行為、テロ」によって「数十億ドル」が失われ、人命が危機にさらされていると付け加えた。
米軍、イエメンのフーシ派拠点を空爆 子供含む53人死亡とフーシ派発表(BBC)
ただし、トランプ政権が純粋に「大陸国家的発想」で攻撃に参加しているとは思いにくいところがある。BBCの記事には「通商航路の確保」いう極めて海洋国家的な表現が出てくる。おそらくヘグセス国防長官は今何が起きているのかを理解していない。彼は明らかに蚊帳の外に置かれている。
いずれにせよ日本にとっては「アメリカが主権国家体制から徐々に離脱しつつある」ということがわかる。
「明確にしておきたいのは、この作戦は、航行の自由と抑止力の回復のためだということだ」と、ヘグセス氏はFOXビジネスのテレビ・インタビューで語った。
米軍、イエメンのフーシ派拠点を空爆 子供含む53人死亡とフーシ派発表(BBC)
同じことが台湾と北朝鮮に対して起きる可能性が生まれているということになる。アメリカ・中国・ロシアがどの地域が自分たちの勢力圏に当たるのかを直接協議するという世界だ。このときにヘグセス国防長官をカウンターパートとしてあてがわれも日本政府は何ら意味のある交渉は行えないだろう。このような環境下では日米同盟など単なる紙切れに過ぎないのだし、日米同盟の適用範囲に尖閣諸島が入るかなどどうでもいいことだ。