8,700人と考え議論する、変化する国際情勢と日本の行方

ゼレンスキーは独裁者 トランプ大統領の中で「もう一つの歴史」が作られている

Xで投稿をシェア

ロシアの思惑とトランプ大統領を取り囲むインフォメーション・バブルが融合したようだ。「ゼレンスキー大統領がこの戦争を始めた」とトランプ大統領は主張している。アメリカとロシアはウクライナのゼレンスキー大統領を「独裁者」と呼び大統領選挙を画策しているという。

一方のヨーロッパ側も一枚岩になることが出来ていない。ナポレオン、ヒトラーという独裁者を防げなかったヨーロッパだが、今度はプーチン大統領にやられてしまうのかという気もする。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






今回は「トランプ大統領の言っていることは無茶苦茶だ」という記事を書く。トランプ大統領に期待する日本人も意外と多いためまず「無茶苦茶でないところ」を書いておこう。

アメリカ合衆国は資源と市場を兼ね備えた国である。これに対抗しようとしているのがBRICSだ。中国に大きな市場がありロシアとサウジアラビアは天然資源を持っている。この2つを切り離し日本・インド・オーストラリアを巻き込んだ中国包囲網を作ろうというのがトランプ政権の基本的な戦略目標であると考えられる。

今回の米露交渉にロシア側から参加するキーマンのドミトリエフ氏は中東とのパイプがある。またルビオチームにはウィトコフ中東特使が入っている。つまりアメリカの国際戦略はロシアとサウジアラビアを同列に扱っているものと考えられる。ルビオ氏はアメリカのガザ所有計画についてサウジアラビアの同意を取り付けなければならないという宿題も抱えていて「ガザのリゾート開発」にサウジアラビアを巻き込みたい。

結果的にまとまりつつある4つの原則はどれもロシアをアメリカ陣営に経済的に取り込む内容となっている。おそらく重要なのは3でありウクライナの戦争とゼレンスキー大統領はその障壁に過ぎないということだ。記述はCNNのもの。

  1. 両国首都にある大使館の機能の回復
  2. ウクライナでの戦争終結に向けた交渉を行うための高位のチームの任命
  3. ウクライナでの戦争終結が米国とロシアにもたらす可能性がある地政学的・経済的な協力についての協議の開始
  4. 今回の協議に関わる全員による協議の生産的な進展への尽力

トランプ大統領の言っていることは無茶苦茶だと言うのは簡単なのだがアメリカの国益推進にとっての阻害要因になっていると論評すべきであって「トランプ氏の言っていることが感覚的に気に入らない」という意見にはあまり説得力がないのではないかと感じる。

ミュンヘンの安全保障会談はバンス副大統領のヨーロッパを刺激する発言から始まった。単にヨーロッパを怒らせてただけに終わっている。これを引き継いだルビオ国務長官は「ロシアへの制裁は当面続ける」と宣言したうえで「将来的にはヨーロッパも協議に参加させる」と懸念の払拭に努めている。またトランプ大統領は米露和平に自信を深めているとされているが、ルビオ国務長官は長い交渉は今始まったばかりとの認識を示した。

ところがトランプ大統領の放埒な発言はこのルビオ国務長官の努力をすべて水の泡にしかねないパワフルさを持っている。

ロシアのプーチン大統領は一方的にウクライナ侵攻を始めたということは誰でも知っているのだが、トランプ大統領はゼレンスキー大統領が戦争を始めたと言っている。

さらにゼレンスキー大統領を「独裁者」呼ばわりしている。

トランプ氏は自身のソーシャルメディア「トゥルース」への投稿で 「ゼレンスキー氏は選挙を実施しない独裁者だ。ぐずぐずしていると、ウクライナはなくなってしまうぞ」と警告。「同氏は選挙を拒否している。ウクライナ国民の支持率は非常に低い。同氏が優れているのは、バイデンを”バイオリンのように”操ることだけだ」と述べた。

ゼレンスキー氏を「独裁者」呼ばわり、トランプ氏が舌戦で圧力かける(Bloomberg)

ヨーロッパサイドでは2日間にわたって協議が行われたが結論が出なかった。BBCは会議は失敗だったと評価している。今回の件であぶり出されたのはロシアとトランプ大統領の狂気ではなく「ヨーロッパが自分たちの安全保障において一枚岩になれない」という不都合な現実だったようだ。

フランスのフランソワ・バイル首相はプーチン大統領とトランプ大統領の考えられない同盟が生まれたと発言しているが、マクロン大統領は「プーチン大統領が交渉のテーブルに出てくることこそが成果である」と論評しておりこの期に及んでも不都合な現実を受け入れることが出来ていないようだ。

ヨーロッパはナポレオンの登場の前に一枚岩になれずヒトラーの台頭も防ぐことが出来なかった。小国に分かれて一枚岩になれない構造は21世紀の現代でも変わらないようである。

ABCニュースによると現在でもロシアは現在でもウクライナへの攻撃を続けているとされる。ウクライナの頭越しに最大の支援国アメリカとロシアが交渉を始めてしまい不安を抱えているウクライナ人も多いと報道されている。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで