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外圧でしか変われない日本の報道機関 フジテレビが中居正広氏の調査を始める

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SNSでフェイクニュースが規制されなくなりはじめており、テレビや新聞などの既存の報道機関の信頼性維持は国民の知る権利を保持するうえで極めて重要になりつつある。しかしながらテレビ局にはその自覚がなく身内の庇いあいに終始する。

中居正広氏問題に進展がありフジテレビが外部弁護士を入れた調査を始める。きっかけは親会社の株を7%持っているファンドの指摘だったそうだ。

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ファンドの指摘はかなり厳しいものだった。

書簡ではフジの対応を批判し、「企業統治に重大な欠陥があることを露呈している」と指摘。さらに「問題への対応が遅れたり、曖昧にしたりすれば、視聴率の低下やスポンサー離れにつながり、株主価値が一段と損なわれる恐れがある」と主張した。

フジテレビに調査要求 中居さん騒動で―株主の米ファンド(時事通信)

結果的にフジテレビは外部の弁護士などを入れた調査を約束させらられることになった。

様々な論点があるだろうが本稿ではなぜ日本人が外圧でしか変われないのかに焦点をあてたい。

質問をもとに議論が行われる多言語プラットフォームのQuoraでも様々な議論が行われているのだが日本人の議論には一つの特徴がある。

  1. 物事の捉え方が情緒的。
  2. 結果的に「誰が悪い」「誰が悪くない」という人物の議論になる。
  3. 最終的に色々あったがまあそれも良い経験だった。誰も悪くないという情緒的なまとめになる。
  4. このため学びが一切得られない

学ばないから変われないのが日本人だ。

例えば最近あるスペースの運営を巡り内紛が起きた。これを当事者に総括させてみると「誰が悪い・誰が悪くない」という議論が盛んに交わされたあとで「それぞれに言い分があるのだろう」と情緒的に終わることが多い。このため客観的にまとめて「こういう学びが得られますよ」と提示すると高い評価が付く。

つまり当事者は変われないのだがソリューションは求められているといういびつな状態だ。中には「一体何が起きていたのかようやく理解できた」というコメントも付く。

なぜ日本人の議論が情緒的に終わるのかを色々と考えてみたのだが「日本の国語教育が人の心情に焦点を当てた随筆(エッセイ)をベースにしている」からなのではないかと考えた。ただこれも「もともと情緒的だからエッセイベースの教育が好まれる」だけなのかもしれない。

結果的に「色々あったけど水に流して終わりにしよう」となりつつもわだかまりが残る事が多い。トラブルから学びも得られない。

一方でファンドの指摘は次のように分解できる。

  1. ファンドの目的は投資の最大化である。
  2. 最大化のためには視聴率低下やスポンサー離れはあってはならない
  3. だからこそ企業統治は重要だ
  4. しかしながらフジテレビの上層部はこの責任をしっかり果たしているとは言えない
  5. このためファンドは親会社に是正を求める

つまり「投資の最大化」という目的がありそれに沿った行動を求めている。厳しく感じられるかもしれないが組み立ては極めて合理的。

かつて、フジテレビは「面白くなければテレビではない」をスローガンに掲げており、今もそれに代わるミッションステートメントを出せていない。このため「面白い物をもってくれば何でもよい」とステートメントが変質してしまっている。

週刊誌が伝えるところをまとめると

  1. 面白くなければテレビではない
  2. 面白ければ何でもいい
  3. 数字を持っているタレントと太いパイプがあるヤツが一番偉い
  4. パイプを維持するためには何をやってもいい

と変質してしまっていることがわかる。結果的に「上納」が起きたのではないかと週刊誌は指摘している。

この昭和の古びたステートメントはすでに腐っている。現在のテレビはSNSに監視されている上に、様々な不確かな情報が飛び交う中で「取材に基づいた確かな情報が求められる」ようにもなった。

フジテレビ以外のテレビ局も同じような腐ったマインドセットを持っている。

  1. 国民の知る権利を確保するために取材に基づいた報道は大切だ
  2. しかしテレビは「警察・検察」や「政府機関が発表した」確実なものしか報道しない。

取材に基づいて確証が得られても「間違えたら批判されかねない」という気持ちが先に立つようになった。つまり確かな情報を届けるがというミッションが無難な報道を右から左に流すに変容している。これも社内で目的意識の共有が行われていないことが原因になっている。

本来ならば「組織はミッションの共有を通じて目的と行動を結びつけるべきだ」で終わりたいところだ。しかし実際に問題を情緒的に捉える当事者たちと話をしてみると「いやそうは言っても」と抵抗を示すことが多い。問題を客観的に捉えることはなく自己正当化の議論に戻り「誰も悪くはなかった」という結論に戻ってしまうのだ。

問題解決の議論をやったことがないため、一度染み付いた情緒的な物事の捉え方に引きこもってしまうのである。

こうしたマインドセットは世代が変わると突然変容することもあるので「未来永劫日本人は」というつもりはないが、「今のところ日本の組織は外圧によってしか変われない」だろうという予測が成り立つ。

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Comments

“外圧でしか変われない日本の報道機関 フジテレビが中居正広氏の調査を始める” への2件のフィードバック

  1. 細長の野望のアバター
    細長の野望

    今回、米ファンドが指摘しなかったら、中居正広さんの発表をだけで終わってしまっていたでしょう。なかなか、こういう現状を変えられないのが歯がゆいですね。最近だと、警視庁が大川原化工機の冤罪巡る公益通報への連絡放置していたというニュースを見て、個人レベルでは変えようとする善人が存在するのですが、それを台無しにする組織運営が色々なところで存在するんだなと思いました。

    1. ファンドのコメントにはoutrageという過激な表現が使われているそうなので「もしかしたらプロレス?」と言う気もしているんですよね。つまり、会社側は外圧があるから仕方なくやりましたとこの声明を利用できたわけです。ただ港社長がそのチャンスを活かすことはありませんでした。

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