隣の人が境界線の杭を少しづつ移動させて自分の土地を広く見せようとすることがある。よくあるご近所トラブルだ。中国政府はどうやら日本に対してそういうことをやっているらしい。いかにもいじましい。
しかし日本政府はそれに対して毅然と対抗措置を取ってない。今回のブイ問題は産経新聞の独自報道だった。海上保安庁も石破政権では対処できないと思ったのかもしれない。
地方の支援に期待する石破政権が中国から観光客を呼び込み水産資源を買ってもらいたいという気持ちはわかる。だが、これはいくらなんでもみっともない対応という気がする。
岩屋毅外務大臣が中国を訪問し李強首相・王毅外相らと会談した。経済不況に喘ぎ外資を呼び込みたい中国では概ね歓迎ムードだったようだ。中国側では戦略的互恵関係を維持すると約束し合ったと報道されている。日本側は中国が海産物の禁輸を解いてくれることを期待してか富裕層向けの10年ビザを打ち出した。中国の機嫌を取りなおかつ富裕層が地方にお金を落としてくれることを期待しているのであろう。
「保守」と呼ばれる人たちは中国への擦り寄りとも取れる今回の動きに強く反発している。Xを覗いてみたが「日本の優れた医療制度をタダノリされる」と言う根拠のよくわからない懸念も寄せられていたが全体としてはまとまりのない騒ぎになっていた。
ただこうした群衆に期待する政治家もいる。先の自民党総裁選挙に出た小林鷹之氏は「ここまでビザを緩和する?」と違和感を口にした。保守層に顔を売ろうとしたのだろう。しかし却って「他人事なのか?」という反発を受けたそうだ。日本の「保守」のネットリテラシーも上がってきていて支持目当ての空疎なメッセージはすぐに見抜かれてしまうのである。
この投稿に、タレントのつるの剛士はXで「他人事?」と返信。ネット上では、ほかにもユーザーが「なに他人事みたいに言ってるんですか?マズイと思うなら行動で示してください。党内で止められないなら次の選挙は覚悟して」「自民党の議員できちんと批判して糾弾してください。なぜ組織や派閥に負けるんですか。こんなふざけた外交…」「小林議員がそう言ってくれたら力になります」「傍観してないで、何かしらのアクションをしてください」「いや他人事みたいに…疑問があるなら命懸けで止めてください」「国民を助けてください」と、さまざまなコメントが寄せられた。
コバホーク小林鷹之氏、中国人向けビザ緩和に言及も…つるの剛士やネット怒り「こんなふざけた外交…」(スポニチアネックス)
安倍総理時代の「毅然とした中国への対応」を期待している人が多いのだろうが、方を空洞化させ「中国の富裕層に頼らなくてはやって行けない」という惨憺たる経済状況を作り出したのもまた自民党であることを支持者たちは忘れている。
さらに、都市対地方の文脈において石破政権は明らかに地方を代表する政権だ。産業が空洞化する中、水産資源の売り込みと観光客の誘致くらいしか「打ち手」はないといった現状。
しかし、こうした中産経新聞が興味深い記事を書いている。台湾の東・先島の南の日本のEEZの中に中国政府がブイを設置したという。地図で見るとほんの少し日本のEEZの中に入っている。
- これくらいだったらバレないのではないか?
- 日本が中国との修好に期待する中ならなにも言わないのではないか?
という気持ちがあったのかもしれないと感じてしまう。公海はいくらでも広がっているのに他人が持っているものをことさらに欲しがるいじましさも感じる。
ポイントはこれが産経新聞の独自記事であるという点と海上保安庁からのリークだということだ。日本政府が公式に認めて抗議したのではない。あくまでも推測だが「日本政府に訴えても黙殺される」と感じたのかもしれない。今の政権は現場職員から信頼されていないのではないか。
縄県・波照間島の南西約140キロの日本の排他的経済水域(EEZ)内で、中国語の記載のある海上ブイが設置されていたことが25日、海上保安庁関係者への取材で分かった。
<独自>沖縄・波照間島沖の日本EEZ内に中国語ブイ 台湾有事視野の軍事目的か(産経新聞)
あとからこれを指摘された林官房長官は「撤去を求める」としているが、中国が応じることはないだろう。去年7月には境界ギリギリのところにブイを設置していたと産経新聞はわざわざ書いている。向こう側も「ギリギリだったら何も言わないんだな」と確認したうえで、今度は少し内側に置いているのだ。
経済成長の糸口が見つけられない石破政権は中国富裕層の経済力に頼るほかない。特に石破政権の支持基盤である地方は中国富裕層に大きな期待を寄せるだろう。おそらく中国はその足元を見ており「ご近所トラブル」のような感じで徐々に既成事実を作っているが、石破政権は強く出られない。いかにもみっともないことだ。
保守と言われる人たちもなにかあるたびにワイワイと騒ぐのではなく、もう少し体系的に政治家たちに働きかけるべきだろう。経済浮揚の糸口が見られないなか「いじましい隣人」に頼らざるを得ないというみっともなさが背景にある。