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イーロン・マスク氏がヨーロッパの極右政党を支持

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イーロン・マスク氏が介入したことでクリスマス直前のアメリカ議会は大混乱だった。結果的にトランプ大統領の意向は通らなかったが、マスク氏は自分の影響力の大きさに満足したのだろう。「いくらかマシになった」と発言したそうだ。

そんなマスク氏だがドイツの民族主義極右AfDを支持する表明を出しドイツの政党から反発されている。またイギリスのリフォームUKへの巨額献金も検討しているそうだ。ドイツは2月に総選挙が行われるためあからさまな外国の選挙への介入と捉えられかねない。

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アメリカ連邦議会下院で予算案が通過したのは閉鎖数時間前だった。結局上院の決議は閉鎖期限を過ぎた0時過ぎになり、バイデン大統領は先ほど署名を済ませた。テクニカルには政府の閉鎖期限を過ぎてから予算が通ったことになるが、職員の出勤停止や支出の混乱などは起こらないと見られているようである。

こうしたギリギリの攻防や土壇場の決着のことをSHOWDOWNというそうだ。攻防そのものを指す場合もあるし「攻防の結果の決着」を指す場合もある。いずれにせよアメリカの予算はギリギリに通るのがお約束になっており「予定調和的な馴れ合い」という側面があるが、それでも最後の最後までせめぎ合っていると見せたがるのがアメリカ流と言えるだろう。

院内総務を退任し残り任期を一般議員として過ごすミッチ・マコーネル氏は民主・共和党の罵りあいを「馬鹿げている」と一蹴した。

“I don’t care to count how many times I’ve reminded our colleagues, and our House counterparts, how harmful it is to shut the government down,” he added. “And how foolish it is to bet your own side won’t take the blame for it. Recent history doesn’t leave a whole lot of room for interpretation on that on.”

McConnell calls out holdouts on government funding, warns of “harmful” shutdown(POLITICO)

今回のドタバタ劇はトランプ氏と側近が議会に対して一定の影響力を持っていることを示すと同時にその影響が限定的なものであると示すことにもなった。トランプ氏が主張する債務上限問題は別途議論されることになったからだ。

ただマスク氏は自分の影響力に満足したようだ。結果に強い関心があったわけではなく「自分がどれだけ強い影響力を持っているか」を誇示したかっただけなのかもしれない。

マスク氏は所有するソーシャルメディア「X」で、「今の状況からして、議長は良い仕事をしたと思う」と書き、「何ポンドもの重さの法案が何オンスの法案になった」とした。

米連邦議会、連邦政府機関の閉鎖回避に「つなぎ予算」案を可決 (BBC)

このようにマスク氏もトランプ氏も無責任に介入しその後の混乱には一切責任を取らないことが多い。単に自分の影響力が大きいことを知って満足してしまうのだ。トランプ氏は高い関税を仄めかしヨーロッパに石油を買えと迫っているそうだが軍事費を5%にしろとも要求している。ヨーロッパがアメリカのような儀礼的なSHOWDOWNを行うかは未知数だが「スルーするのも難しい」という雰囲気になっているようだ。「議題になるのは明らか」と受け止められている。ただしこれも実利と言うよりは「交渉の天才」を見せびらかすためのSHOW OFFである可能性がある。

関係者は同紙に対し、トランプ氏が妥協案としてGDP比3.5%を提示する可能性があると指摘。国防費の問題と貿易交渉を結び付ける狙いがあるとの考えを示した。別の欧州関係者は、来年6月にハーグで開かれるNATO首脳会議で「3%以上への引き上げが議題になるのは明らかだ」と語った。

国防費、GDP比5%要求へ トランプ氏、NATO加盟国に―英紙(時事通信)

マスク氏の関心はヨーロッパの民族主義極右政党に移っているようだ。

マスク氏はアパルトヘイトが撤廃された南アフリカの出身でありアフリカ系が支配する現在の政治状況にネガティブな気持ちを持っているのかもしれない。ドイツの極右政党AfDを支援する声明を発表しドイツの政界から反発の声が上がっている。

またイギリスのリフォームUKにも巨額献金の意向を伝えているという。

英メディアの報道によると、同党のファラージ党首は16日、米南部フロリダ州にあるトランプ次期米大統領の私邸でマスク氏と会談。ファラージ氏は「金について話した。交渉中だ」とし、マスク氏が献金提供を「真剣に検討している」と述べた。会談には同党の財政責任者も同席した。

マスク氏、英右派政党に巨額献金? 「外国の干渉」懸念も(時事通信)

イギリスでは総選挙が終わっているがドイツは今月末に議会が解散され2月に総選挙が行われる。

そんな中、ドイツ東部のクリスマスマーケットにサウジアラビアの医師の車がつっこみ5人の犠牲者がでた。一部報道ではサウジアラビア出身の難民で精神科医だったと言われている。SNSではイスラム嫌悪の投稿を繰り返していたそうだが難民に対する処遇に不満があったともいわれているそうだ。

ドイツ・メディアは容疑者の名前を「タレブ・アル・アブドルモーセン」と報道している。ベルンブルク在住の精神科医で、2006年からサウジアラビアからドイツに移住し、2016年に難民認定されたという。

ドイツ東部のクリスマスマーケットに車突入 死傷者多数(BBC)

奇しくもAfDが躍進した東部でおきた事件ということもあり難民に対してネガティブな感情を持つ有権者が増えることが予想される。結果的にAfDが勝てばマスク氏の自尊心は大いに満たされるであろうがヨーロッパの米に対する反発は強まるだろう。

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