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「クルド=テロリスト」の真偽とゾーリンゲンの刺殺事件

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Xに時折「クルド人はテロリストである」という極端な主張の投稿が紛れてくるようになった。

日本にも移民・難民排斥運動があり川口市の外から極端な意見を持った人たちが流れ込んできているようだ。

人権擁護の観点から日本においてこのような極端な意見が放置されるべきではないと考える。

しかし、世界情勢の変化は中東から遠く離れた日本にも及んでいる。

ドイツのゾーリンゲンで刺殺事件がありシリア系難民の扱いが問題になっている。

ゾーリンゲンの議論は日本の移民・難民政策にも少なくない影響を与えるだろう。

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クルド人は山岳イラン系の民族の総称だ。「民族」とはいうがお互いに意思疎通が難しい人たちもいるそうだ。このためまとまった国が作られることはなく、トルコ・イラン・イラクに分かれて住んでいる。

世界では3,500万人から4,500万人のクルド人がいると言われていて日本にも2,000人程度のクルド人がいるとされている。だが難民として定住権を得た人は殆どいない。ほとんどが曖昧なステータスで放置され、なぜか埼玉県川口市に集まっている。

大統領権限を強化したいトルコのエルドアン大統領はクルドやシリアなどの脅威を強調してきた。「トルコを守るためには強い大統領権限が必要である」というわけだ。

トルコは単一民族主義の時代が長くクルド人などいないと言う立場だったためにクルドの独立運動も過激化した。

クルド独立運動がテロであるかあるいは民族自決の独立運動であるかは人によって見方が大きく異なっている。これは事実ではなく「意見」なのだ。

歴史を遡るとそもそも「民族自決」運動そのものが西側に利用されてきた側面がある。西側はバルカン半島にいるオスマン支配下の民族を刺激しヨーロッパに組み込もうとした。現在もアメリカ合衆国がイラクのクルド人を引き入れイラクへの影響力を維持している。

日本がクルド人を受け入れているのは西側の政策似合わせているからだ。と同時に日本は難民定住には消極的でこれまでほとんど難民認定を受けたクルド人はいなかった。追い出しはしないが自発的に出ていってくれることを望んでいるのではないかと思う。

日本のサイレント・マジョリティは自民族の優位性を強調するためにに他民族を攻撃したい。一方で保守的な空気に反発する左派リベラルも一定数いて「非人間的な」体制に反発している。

例えば東京新聞は「日本社会に溶けこもうと努力をしている人が大勢いるのにクルド人ヘイトがなくならない」という記事を掲載している。

一方で産経新聞は川口市で起きている様々な騒乱を大げさに騒ぎ立て危機感を高める。産経新聞はクルド人が増えたのは民主党時代であると主張している。

東京新聞は「たくさんの申請者がいるのに1人しか難民として認められない」と主張するが、産経新聞は「難民が1名しか認められていないのだから、あとの人たちはカネ目当てなんだろう」と決めつけている。どちらも事実のように書かれているが「それぞれの意見」である。

当然、両者の主張が噛み合うことはなく報道から「どちらが正しいか」「何が真実か」を判断することはできない。

日本政府はアメリカやヨーロッパの反発を恐れ移民・難民の強制排除はしたくない。一方で国内世論に配慮し難民を受け入れたくない。一方で労働力は不足し始めているので技能実習に代わる制度を導入し労働力を「管理」しようとしている。

実はドイツやEUでも同じ状況が生まれている。アメリカやロシアが介入しシリアが内戦状態に陥っている。ドイツはシリアを危険地域に認定し多くのシリア人を受け入れてきた。

当然、様々な理由から難民として受け入れられないという人たちも出てきている。

今回、そのうちの一人がゾーリンゲンで無差別殺傷事件を起こした。これがきっかけになり「難民受け入れの法律は何度も改正されているのに地域の安全を脅かす人々を排除しきれていない」「当局は何をやっているんだ」という議論が起きている。

ドイチェ・ヴェレのまとめ

9月には東ドイツ地域で州議会選挙が行なわれる。極端な移民排斥を訴えるAfDは今回の事件を利用するだろう。

またロイターによると野党に転落したCDUの主力議員も「もうたくさんだ」と訴えている。ドイツでは暴動は起きなかった。だが移民・難民問題は政治的なアジェンダに組み込まれた。

もうたくさんだ!

ドイツ政府は難民の強制送還の厳格化を国民に約束した。「何もしない」では国民を納得させることはできない。

中東からロシアにかけた地域には多くの宗教が混在しており状況が極めて流動化している。これまでのような平和な状態は維持できず、お互いの勢力が小競り合いを繰り返しながら武力衝突を伴う均衡状態を作る「新しい常態」が生まれようとしている。1990年代にハンチントンが予言した「文明の衝突」の世界そのものである。

日本のクルド人の問題はこの「文明の衝突」と密接に接続している。

川口市は度々国に改善を訴えているが政府の対応はどこな煮えきらないものに終始している。国の曖昧な政策の責任を地方行政が押し付けられているのである。

ヨーロッパの事例から、移民・難民の同化が進まないと一部の孤立した人たちが極端な行動を起こす事もわかっている。だが包摂したからといって危険因子が消え去るわけでもない。

その意味では「どっちつかずの状態」においておくことが最も危険なのだが、日本政府はそれがよく理解できていないようだ。

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