河野太郎氏が出馬会見を行った。党内に唯一残る派閥「麻生派」の出馬になる。これまで進歩派と言う印象だったが、実は唯一の派閥系候補者だ。
財務大臣経験が長い麻生太郎氏の影響を受けており、当然財政再建派と理解され、そのように報道されている。
安倍派崩壊を背景に国民に人気が高かった積極財政派は自民党総裁選から消えつつある。
河野太郎氏は「行政改革・規制改革を通じて成長をもたらす」ことを全面に打ち出したかったようだが、その理屈はロイターには通じなかった。
河野デジタル相、自民党総裁選に出馬表明 「財政規律取り戻す」
なおBloombergも同じような見出しで、決してロイターが偏向しているというわけでもなさそうだ。
財政犠牲の経済成長、「持続可能なはずはない」-河野デジタル相
ロイターはそれでも河野太郎氏の「規制改革を通じて日本を成長させてから財政再建を行う」というロジックは紹介している。まだ親切なほうと言えるだろう。一方のBloombergは財政を犠牲にすべきではないという部分だけを抜き出している。金利上昇を予想させ円高・日本株安につながる重要部分だからだ。
これまでの経緯から河野太郎氏にはリーダーシップはあるが周りが全くついてこないという評価が定着している。特に全国の保健所や市区町村役場などが関係するプロジェクトは軒並み失敗している。
また再生エネルギー関連にも混乱が見られる。千葉県では河野氏が連れてきた地方議会出身の国会議員が洋上風力発電所絡みの問題で自民党を離脱したが河野氏はいっさい「製造者責任」を説明をしていない。中国政府の関与が疑われる「再エネタスクフォース」問題の決着も曖昧だ。
周りがついてこれないなら周りの実力不足なのかもしれないが、やりっ放しプロジェクトが多いことから「責任が取れない」人なのだろうということがわかる。
国民の間にはすでに河野氏への期待はなく、経済系メディアもそれほど河野氏には期待していないようだ。
財務官僚出身の小林鷹之氏も岸田総理の減税提案は踏襲しないと宣言している。安倍派不在の自民党総裁選挙では財務省が主導する財政再建路線が明確になりつつある。
さらに、政治と金の問題でも河野氏らしい不見識さがよく現れていた。「責任の所在はあきらかにしなくていい」「お金さえもとに戻せば文句はないんだろう?」とばかりに裏金議員でもお金さえ戻してくれれば公認してやると言う姿勢を見せた。これには呆れるばかりだ。
当然、この提案は国民からは「結局自民党は反省などしていない」と見られるだろう。だが裏金議員たちからは「公認に追加でカネを取るのか」と見られかねない。ルールを曖昧にすると公認権で有利な裁定ができる。
例えばこんな事例がある。
福岡では麻生太郎氏と武田良太氏がライバル関係にあり「福岡三国志」などと面白おかしく報道されている。
複数選挙区では未だに公認権を巡る争いがある。プライドが高い麻生太郎氏の人格が引き起こしたと言う側面もあるが地元は麻生派・武田派に分かれている。
「麻生太郎vs武田良太」の“福岡戦争” 次期衆院選は複数選挙区で因縁の対決 地元「保守分裂避けられない」
この争いは地方選挙にまで及んでいる。影響が広がることを恐れた菅義偉氏が北九州入りを中止したこともあるくらいだ。
菅前首相の北九州入り急きょ中止 「麻生vs武田」の因縁が影響か
石破茂候補が「公認権については自分が独断で決めることはない」と宣言している。明らかなトーンダウンだが公認権について触れてしまうと党内の安定が崩壊しかねないと言う事情もある。自民党が強い地方では自民党の公認候補者=国会議員なのだ。
仮に「河野ルール」が適応されてしまうと武田良太氏が福岡三国志で敗北する可能性がある。このため当然ながら武田良太氏は今回の提案について「いかがなものか」と反発している。
今回の総裁選挙ではすでに平将明氏がネットで「総裁選では麻生派を潰すべきだ」と宣伝戦を展開している。平氏は石破茂氏に追従し麻生政権おろしの論陣を張り麻生氏にいじめられたと言う前歴を持っている。
このように今回の総裁選挙は「刷新感」を打ち出しつつも実情はドロドロとした人間関係が展開している。
河野太郎氏の「残念な人柄」も見どころのひとつなのだが、その背景にはゾンビのように唯一生き残った麻生派と公認権利権を巡る熾烈な争いがある。
いずれにせよ、安倍派が崩壊したことで上げ潮派と言われた積極財政派は絶滅しつつあり、財務省の意向に沿った財政再建派が続々と名乗りを挙げている。
自民党籍がない国民は一切関われない選挙だが、政治と金の問題の影で確実に自民党の政策は変化しつつあるようだ。