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「アメリカ合衆国は景気後退局面に」は過剰反応の可能性

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本日は日経平均の大幅下落について触れ「これは政治的人災である」と書いている。日経平均の下落は12.4%という災害級変化であり何らかの原因があるはずだ。

この要因の1つがアメリカの景気悪化懸念と聞くと自動的に「アメリカでも同じ程度の株価崩壊が起きているのでは?」と思う人もいるのではないだろうか。だが、この「景気後退局面入り」は大げさである可能性がある。

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Reutersが「アングル:市場の動揺誘った米雇用統計、先行き安心できる4つの理由」という記事を書いている。ハリケーン・ベリルの影響とプライムエイジ(日本でいうと現役世代)の労働力回帰の影響などで失業率が急激に上がった可能性がある。このためサーム・ルールの史上初の例外になったというのだ。

ハリケーンの影響と言われても「そんなバカな」と思う人が多いかもしれない。実はアメリカの南部から東部にかけて春先から夏まで何度もトルネードを伴う嵐が襲っている。西部でも極端な高温と乾燥が続いていて山火事が続く。アメリカのニュースを毎日見ている人は春から夏にかけてのアメリカの異常気象についてよく知っていることだろうが、日本ではまとまった報道がない。

ただし、それでも急速な経済状況の悪化を懸念する人はいる。このため、9月を待たずに緊急利下げを行うべきだと主張する人も出てきた。今回のアメリカ経済の加熱の原因はおそらくコロナ禍の積極的財政出動に原因がある。資金回収局面になり新興国から資金がアメリカに逆流した。これがインフレ期待を引きおこすとと更にアメリカに資金が集まることになる。

ただ、急激なインフレのメカニズムが完全に解明されたわけではなく「過剰な多幸感」から「過剰な不安」にシフトしている。なお、この緊急利下げは市場には織り込まれていないので一層の円高が進む可能性もある。そもそもインフレを抑えるために金利を上げる政策そのものを批判している学者もいて収拾がつかない状況になっている。

新型コロナ禍による経済停止と未曾有の財政出動があり、そこにウクライナの戦争が重なっている。これまでの経済統計が役に立たなくなっている。例えて言えばカーナビが故障した車のようなもので一体どこを走っているのかがわからない。

こうなるとこれを政治利用する人が出てくる。これは日本もアメリカも同じことである。

トランプ前大統領はハリス氏が大統領候補になった瞬間に株価が下落したのだからこれはすべてハリスのせいだと主張している。因果関係がメチャクチャだが、アメリカ合衆国の政治言論は石丸伸二氏のYouTubeに踊らされた東京都民と同じような状態になっておりこの発言に一定の影響力がある。

トランプ氏は、「ハリスが選挙に勝てば、すぐに(株価などの)暴落が起きるだろう」と危機感をあおった。

米経済、「不況に陥る可能性」 雇用統計受け―トランプ前大統領(時事通信)

こうした様々な状況が重なりアメリカの株式の悪化は世界にかなり大きな動揺を与えている。日本側も自民党総裁選挙が円相場に影響を与えた可能性があるが、アメリカ側にも大統領選挙という不確定要因がある。

ただ、こうなると「今は過剰な悲観論で株式が不当に安くなっている」と考えたくなる。いわば逆張りトレードだ。確かにその可能性は高いが相場が不規則に動いているのは事実だ。よほどギャンブル好きの人が自己資金で相場にベットするのは構わないと思うが一般人向けの相場ではないことも確かである。そもそも機関投資家が現金や国債に資金を退避させているのだ。素人が手を出して良い相場でもなさそうである。

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