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8月5日の日経平均は12.4%の下落 年初来の儲けがすべて帳消しになり街はパニック

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月曜日のテレビは日経平均が下落しパニックに陥った投資家たちの様子を盛んに流していた。オリンピックのメダルラッシュと暑い夏報道一色だったところに突然株価下落のニュースが飛び込んできたからだ。

当ブログの読者はあまり慌てなかったのではないか。金曜日にアメリカの株価が大きく下落したことから日経平均に波及することは明らかだった。

冷静に考えると実際には状況が平時に戻っただけで何も変わっていないのだが、普段から国際ニュースを見るようにしないと世界の終わりが突然やってきたかのような錯覚にとらわれる。

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そもそも1日でどれくらいの時価総額が失われたのか。

2024年2月に日経新聞が「時価総額とは」という記事を書いている。

東証の時価総額は931兆円(2024年1月末)だった。このときの日経平均が33,000円程度。これがピーク時に41,000円(7月中旬)となる。つまり半年かけて1.25倍に膨らんで半月で巻き戻ったことになる。2023年に株を買っていた人は何も失っていないが新NISAきっかけで株式市場に参入した人は割高の株を押し付けられていた。ここで慌てて売った人は単に割高で買った株を手放したことになる。新NISA参入組は「兆円単位」で資金を失った可能性もある。その分誰かが利益を確保しているのだから彼らはいいカモだったということになる。

急激な株価変動は信用取引を行っていた個人にもかなりのダメージを与えた可能性があるという。追証(追加証拠金)を払えない限りポジションを解消する必要がありこれがすべて損失となる。

株価の膨らみはドル円相場だけで大方説明ができる。145円から160円という変動幅と株価の膨らみは同じ規模である。

2023年との違いはおそらくNISAの制度変更とインフレ対策だろう。国内の新規参入組が増えたと同時に海外投資家がインフレ回避資産として日本株に注目したのが2024年だったということだ。当時、日本は当面利上げはしない国と考えられていた。インフレ経済では資産は目減りするのだから冷蔵庫(金利の低い国)で運用するのが良い。

日本では植田総裁の発言は「円安を嫌う政治を忖度した発言だがそこまで急激な利上げはできなだろう」と理解された。だが見出しが英訳されて伝わると額面通りに評価する人たちが出てきた。日本流の婉曲な表現は通用しない。

日銀総裁の発言にそこまで大きな影響力があるものだろうか。実はビットコイン屋イーサなどの暗号通貨メキシコペソにも円キャリートレード巻き戻しの影響が見られるそうだ。新興国中心にこの手のトレードが流行しているという。あまり情報リテラシーが高くない人たちが日銀の利上げのニュースに過剰反応してポジションを崩した可能性もありそうだ。

河野太郎氏や茂木敏充氏などの総裁選を意識したスタンドプレーが植田総裁の意思決定に影響を与えた可能性がある。これがたまたまアメリカ合衆国の景気後退懸念と重なったことで急激なポジションの変更が起きたことになる。

タイミングとは恐ろしいものだ。

今回のパニックは複合的連鎖反応によって引き起こされた人災の可能性が高い。

野党は政府に説明を求める意向だそうだが、日本政府と日銀が今回の構造を理解できているかは極めて怪しい。特に日本銀行は日銀文学と言われる曖昧な表現を使い市場に影響を与えないように留意してきた。これが本来はあってはならないとされるメディアリークと重なることで曖昧さに拍車がかかり海外投資家を誤解させる要因になった可能性も否定できない。

ただし、アメリカの株価は2022年と比べるとまだまだ高い領域にある。このため「過剰反応だからそのうち上がるだろう」という期待は持たないほうがいいかもしれない。バークシャー・ハサウェイなど現金を積み増したと言う報道や国債の価格高騰も資金の株式市場離れを意識させる。

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