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ウォーレン・バフェット氏すら株取引を躊躇しているというのに……

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Bloombergに「バークシャー、アップル株の保有をほぼ半減-現金保有は過去最高」という記事が出ている。ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイが大量のApple株を手なばしているというのだ。バークシャー・ハサウェイは「慌てて次の株を探すことはない」と言っている。ウォーレン・バフェット氏のような投資の天才が「急いで株を買うべきタイミングではない」と言っているのだ。

一方で政府の新NISAに踊らされた日本人の個人投資家は株式に殺到し急激な株価低下に大慌てしている。素人がプロに勝てるはずもない。この対比にはどこか滑稽さも感じられる。

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バークシャーは現金が積み上がっているとBloombergが伝えている。つまり投資先のない資金が増えているという。現在は国債の価格も上昇中だ。つまりプロの投資家たちは株式から現金と債権に資産を移行させているのだ。

バークシャーは、株価が上昇する一方でディール活動が停滞する中、積み上がる現金の用途に苦慮している。バフェット氏は5月に開催された年次株主総会で「リスクがほとんどなく、大きな利益を得られる」案件だと考えられなければ、現金の使用を急ぐつもりはないと述べていた。

バークシャー、アップル株の保有をほぼ半減-現金保有は過去最高

このポジションの見直しの影響で日本の商社株が下落するのではないかと言われている。Reutersのこの記事からはすでにバークシャー・ハサウェイが商社株を手放したのかあるいは警戒感だけが積み上がっているのかはよくわからない。

著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイの投資先として注目を集めた商社株の下落が象徴的との受け止めが市場では聞かれる。バークシャーは日本株投資の資金の大半を、相対的に金利が低い円建てで資金を借り入れて調達しているとみられている。

アングル:転機迎える日本株、緩和トレード終焉か 日銀タカ派姿勢で(Reuters)

このように株式市場ではポジションの急激な変更が始まっており余裕のある投資家は新しい投資先探しを手控えている。

なぜこんなことになったのか。

まずFRBが「景気下落のシグナルを読み間違えたのではないか」という懸念がある。サーム・ルールは過大評価されていると言う声があるものの、アメリカのアナリストたちの間には警戒感が広がっているようだ。中国やヨーロッパの景気が低迷する中で唯一の牽引役だったアメリカ合衆国が景気後退局面に入ると世界の経済状況は激変するだろう。

次にアメリカの大統領選挙を控えて次の政権の経済政策が読みにくなっている。特にトランプ大統領になると経済・金融政策はかなり混乱することが予想される。また、トランプ大統領の保護主義政策は世界経済にもネガティブなインパクトを与えるだろう。11月以降の新しいルールが読みにくい。

最後に中東で戦争危機が高まっている。イランもアメリカも全面戦争は望んでいないと考えられており金融市場は危機を織り込んでいないが不透明さは確実に積み上がっている。

ゲームのルールが急激に変化する中、Bloombergは「新局面に突き落とされた米株市場、次のローテーションでは何を買うか」と書いている。要約すると引き続き高収益が期待されるハイテク株を売る必要はないが(とはいえ新しく買い増しすべきでもない)バリュー株ではなく高配当が期待できる株式をポートフォリオに加えるべきだとしている。つい最近まで「ハイテク株に割高感が出ているのだから小型株を買うべきだ」なとど説明されていたがこの動きは7月中旬にはすでに失速していたそうだ。ずいぶんといい加減なものだなと呆れてしまうが、これが現実だ。

このように素人が「株式で短期で勝とう」などと考えると大やけどをする可能性が高い。ここはしばらくはティッカーなど見ないほうがよいのかもしれない。市場は株価急落に備えて国債へと回帰している。2023年10月にも同じ動きがあり米株は急落した。このときはすぐに株価が回復し結果的に10月の米株はバーゲンセール状態だった。だが今回も同じことが起きるとは保証できない。

なおハイテク株に関しては気になる動きがある。それがIntel問題である。一口に半導体と言っても古い技術から新しい技術への端境期にある。

春先にIntelのCore系CPUを積んだPCが突然壊れると言う現象が多発した。Alderon Gamesの指摘に対して当初Intelはマザーボードが過剰な電流を流しすぎるせいだと説明していたが、後にIntelのCPUの設計に問題がある事がわかっている。IntelはCPUの交換に応じることにしたが当初の対応の不味さから「このままIntelを信用してもいいものか」との懸念がでている。

IntelはAI対応に失敗していると言われており赤字が続いていた。これに加えて本業の最新版CPU(具体的には第十三世代と第十四世代)に設計ミスが生じたことで「本業でもまともに新製品が出せない」という評価が定着する可能性がある。赤字に対応するために15%の人員削減と配当の停止を発表したために株価は20%下落した。

Intelの事例を見るとかつての勝者でも技術革新に行き詰る可能性があるということがわかる。投資家は今後も技術革新が起きるだろうと予想して最先端企業の株を購入している。これがプレッシャーとなり無理な開発競争が行なわれその結果として企業イメージが損なわれるという事例だ。

こうしたニュースを知らずに「名前を知っているハイテク株の値段が下落しているから今が買い場である」などと考えてしまうと大怪我することになる。だが今回の不具合問題は長い間ゲーム業界の噂の域を出ていなかった。

このように貯金でなく株による資産確保が行なわれうようになると、業界動向から安全保障情勢までに目を光らせる必要が出てくる。仕事としてはほぼ経済アナリストと同じことをやっていることになるが、そもそも日本人の一般投資家がそこまでする必要があるのだろか?とどうしても考えてしまう。

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