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ゼレンスキー大統領がロシアとの交渉を示唆 トランプ氏躍進の余波が外交に波及

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アメリカ合衆国大統領選挙の余波が外交・安全保障に波及している。今回はウクライナとイスラエルの事例について概略を見てゆく。バイデン大統領が主張していた「民主主義陣営の勝利」という神話的スキームが崩壊しつつあるが民主党陣営は次の指導者が決まっておらず今後これらの事態にどう対応してゆくのかが明らかになっていない。

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ゼレンスキー大統領がロシアとの直接交渉を示唆し波紋が広がっている。CNNによると具体的には「ゼレンスキー氏は今年11月の開催を見込む次回の平和サミットにロシアが代表団を送るべきだとの見解を示した。」となっている。本来ならば大統領選挙後にアメリカのウクライナに対するコミットメントを再確認する機会になるはずだった。だが、情勢は刻一刻とウクライナに対して不利なものになりつつある。

JDバンス氏は過去に「ウクライナで何が起きようが私は「知ったことか」と思っている」と語っておりウクライナ支援よりもアメリカ中間所得者支援を優先すべきだと考えている。アメリカ合衆国もトランプ支持者を中心に「今のアメリカ一人勝ちの経済状況をより強固にすべきだ」と考える傾向にあり、外国への援助には後ろ向きだ。

トランプ氏も自分が大統領になればすべての戦争は終わるのだという救世主願望を持っている。ウクライナへの支援を止めたうえで頭越しでロシアと直接交渉し「新領土についてアメリカは(認めはしないが)干渉しない」などと言いだしかねない。

共同通信によるとこの話には続きがある。ゼレンスキー大統領はすでに任期が切れていて現在は暫定状態にある。ゼレンスキー大統領の人気を支えているのは「戦争を継続するリーダーが有事のウクライナを支えるべき」という国民感情だ。

仮にトランプ氏が大統領になった場合にゼレンスキー大統領が戦争継続を主張するとアメリカの支援を失いかねない。とはいえロシアと妥協すると「これは話が違う」とウクライナ人から反発されかねない。政敵のクリチコ・キーウ市長は次のように発言した。共同通信が伝えている。

クリチコ氏は戦闘継続か領土問題での妥協かを巡り「今後数カ月はゼレンスキー氏にとって非常に困難な時期になる」と分析。「どんな決断をしても、大統領は政治的自殺の危機にさらされる」と指摘した。

領土でロシアに譲歩なら「国民投票必要になる」 キーウ市長、ゼレンスキー大統領にくぎ(産経新聞・共同)

クリチコ氏は「和平を結ぶなら国民投票をやるべき」と主張している。

一方のイスラエルでも動きがあった。アメリカ議会はネタニヤフ首相を招く計画を立てていた。このときはまだバイデン大統領は選挙キャンペーンを継続中で「次期大統領」になる可能性があった。

次の民主党候補はカマラ・ハリス副大統領ではないかといわれているがまだ決定はしておらず、したがって次の民主党がどのようにイスラエルにアプローチするかはわからない。ネタニヤフ首相は形式的にバイデン大統領と会談するが「すでにオワコン化」した大統領の言うことを聞く必要などない。したがって和平提案はすでに破綻したと言って良い。

ブリンケン国務長官は「蕎麦屋の出前」よろしくイスラエルの和平交渉は前進していると言い続けている。ブリンケン氏はアメリカンフットボールになぞらえ「勝利まであと10ヤード(9m)だ」と主張しているそうだ。

“I believe we’re inside the 10-yard line and driving toward the goal line in getting an agreement that would produce a ceasefire, get the hostages home and put us on a better track to trying to build lasting peace and stability,” Blinken said.

Israel-Hamas ceasefire close to the goal line, Blinken says

さらにイスラエル国会では「パレスチナ国家など認めない」という決議が出た。バイデン大統領派とみなされていた野党指導者ガンツ氏が決議に賛成している。これはアメリカが提案する戦後二国家体制に背く決議となる。

ガンツ氏はバイデン大統領寄りとされていたがこれもバイデン支持を当て込んで国内の政治闘争に勝利するための方便だったことになる。イスラエルの政治状況を読み解くのは極めて難しい。すべてがその場しのぎなのである。

イスラエルのテルアビブにドローン攻撃があり、その報復としてイスラエル軍がイエメンのフーシ派拠点を攻撃している。当然フーシ派は報復を宣言した。すでにレバノンのヒズボラとの間にも報復合戦がありイスラエルを取り巻く状況は更に混沌としてきた。

イスラエルでは「ネタニヤフ首相では人質の奪還ができない」とする抗議運動が散発的に起きている。ネタニヤフ首相は国内の反発を抑えるために代表団を派遣すると言っている。しかし「どこに派遣するのか(つまりそもそも誰と話し合うのか)」が決まっていないようだ。

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