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バイデン大統領の新ロードマップについての状況アップデート

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先日、ガザ地区についてバイデン大統領から新しいロードマップが提示された。これについて昨日は「アメリカの選挙対策」であり「エジプトが外されたようだ」と書いた。1日経ってアップデートが出てきたので状況を整理したい。エジプトは何らかの交渉の結果、枠組みに戻ってきている。また積極的なコミットを断ったとされていたガンツ氏は考え方を変えて「支持をする声明」を出したそうだ。

ネタニヤフ首相は表面上はバイデン大統領の提案を受け入れたがそのままで飲まないと言っている。Yes but……作戦だ。つまり結論だけを書くと状況は何も変わっていない。

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日本のメディアがこの問題を取り上げなくなったことで「もう興味がない」という人も多いだろう。また「とにかく戦争はいけないことだ」と考える人たちは「なぜ誰も戦争を止めないのだ」と憤っていればいい。

問題は今何が起きているのかを知りたいという人たちである。おそらく「よくわからない」というところではないだろうか。例えば毎日新聞は次のように書いている。実はこの「成功する可能性がない」声明が出てから状況が変わっている。ネタニヤフ首相はバイデン氏の提案への支持を表明した。

バイデン米大統領が5月31日に「イスラエルの提案だ」として発表したパレスチナ自治区ガザ地区の停戦案を巡り、イスラエルのネタニヤフ政権が早くも消極的な姿勢を示している。イスラエル首相府は1日、イスラム組織ハマスの「壊滅」を実現する前に恒久的な停戦をするのは「成功する可能性がない計画だ」とする声明を出した。停戦案に反発する政権内の極右閣僚に配慮したとみられる。

アルジャジーラが毎日ライブアップデートを出しているので、ガザ地区とそのほかの地域の状況についてはそれを参考にするとよさそうだ。イスラム系のアルジャジーラはこの問題に世界の関心を惹きつけたいと考えていて定期的に「今この問題に初めて興味を持った人」向けにおさらいをしている。イスラム系なので偏向しているという印象を持つ人も多いのだろうが意外と「ちゃんとした」報道機関なのだ。

ただしイスラム系だけでは不満だという人もいるだろう。アメリカのアクシオスの記者がイスラエル高官とパイプを持っている。このため、アメリカとイスラエルのやり取りの詳細をつかむことができる。イスラエルの専門ページがあり関連記事はそこに集まっている。今回はバイデン大統領の提案の狙いとイスラエルの反応について書かれている。

イスラエル情勢は極めて複雑だが専門家は魔法のように情報を出してくるわけではないようだ。本来ならばアラビア語やヘブライ語もできたほうがいいのだろうが英語だけでもかなりの情報を精査することができる。

次のようなアップデートがあった。

  • 今回の提案にはハマスが約束を破った時にはイスラエルが戦闘を再開できるという「オプション」がついている。
  • ネタニヤフ首相はバイデン大統領の提案を大筋で了承した。全面的に支持はするが「修正は必要」としている。表面的には受け入れる姿勢を見せつつ実際には抵抗するというネタニヤフ氏がよく採用する戦略だ。アルジャジーラは時間稼ぎと指摘している。
  • 極右の政権協力者はパレスチナの自治そのものに反対していて戦時内閣からの撤退を仄めかしている。
  • ガザ地区への救援物資は滞っている。西岸でもさまざまな軍事活動が行われている。例えばイスラエル北部でもシリア・レバノンにいるヒズボラと戦闘が行われている。
  • 超正統派は兵役免除特権を剥奪しようとする最高裁判所に抗議運動をおこなっている。国道の封鎖などがおこなわれた。
  • ラファ検問所に対する協議が行われた結果エジプトが枠組みに戻ってきた。つまり昨日書いた「エジプト外し」は行われなかった。ブリンケン国務長官はエジプト・サウジアラビア・UAE・ヨルダン・トルコの外務大臣に説明を行った。またエジプトとヨルダンはアメリカと共同で声明を出しイスラエルとハマスに対して和平提案を受け入れるようにと訴えた。
  • 極右勢力が戦時内閣からの離脱を仄めかしてネタニヤフ首相を脅しているため戦時内閣に参加していないラピド氏は「セーフティネットは準備する」としてネタニヤフ首相に譲歩を要求している。
  • 戦時内閣に参加しつつ離脱を仄めかしているガンツ氏は先日の時点では今回の提案にはコミットしないとしていたが考えを改めたようで「バイデン氏を支持する」声明をだしたそうだ。

最後のガンツ氏の態度変容が最もわかりやすい。イスラエルのトップリーダーたちは戦争終結を望んでいない。アメリカとイスラエル民意の支援が得られれば「自分達が戦争の主導権を握ることができるかもしれない」とは考えている。つまり基本的にはイスラエル政局といえる。

ネタニヤフ首相個人について考えるならば「どうすれば彼が生き残れるか」というのが最重要課題である。仮にアメリカの世論が一枚岩であればバイデン大統領の提案に乗るしか方法はない。つまりラピド氏の用意する「救命ボート」で戦時内閣から逃げるしかないが、その救命ボートに穴が開いていないという保証もない。

彼がどう判断するかはひとえにアメリカの対応にかかっている。

アメリカの次期大統領を狙うニッキー・ヘイリー氏はイスラエルに乗り込みアメリカ人が嫌っているロシア・中国・イランが背後にいると指摘している。The Time of Israelの引用だ。と根拠のない指摘をしている。これが一部のアメリカ人が持っている世界観を代表していることは間違いがない。仮に選挙で共和党が勝てば「民意」は覆るのだから11月まで状況を引き伸ばしたいと考えても不思議ではない。

“China’s been funding Iran the entire time. Russia’s intelligence helped them know where everything was. Iran helped get them trained. So this isn’t Hamas. These are all murderers and accomplices,” she says in the empty lot where the Sderot police station stood before being destroyed in the attack. “If we really mean it’s never going to happen again, we have to be honest and truthful with ourselves who did this.”

民主党にもイスラエル贔屓の政治家はいる。アメリカ議会の超党派はネタニヤフ首相を議場に招き入れ演説を行なってもらう方向で調整を進めている。CNNには次のような記述がある。

ネタニヤフ氏は首相府を通した声明で「上下両院でイスラエルを代表し、我々を破壊しようとする者たちとの正義の戦争について、米国民の代表者と全世界へ向けて真実を語るという栄誉に大変感激している」と述べた。

バイデン大統領は停戦しろと言っているが民意は自分の味方であると解釈できる状況が整っている。だからバイデン大統領の提案は大筋では受け入れるがハマスが壊滅するまでは戦争は継続すると宣言できてしまうのである。

つまりこれは、基本的にはイスラエル政局だがアメリカの政局でもあるとういうことになる。政治家たちは民意を味方に引き入れようと必死で情報戦を繰り広げている。その一方で多くの市民たちが空爆の巻き添えになって亡くなってゆく。ガザ地区と西岸の住民たちは民主主義の犠牲者と言えるのかもしれない。

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