小池百合子氏が東京都知事選挙に立候補するのではないかとの報道が出た。ああいよいよなのかと思ったのだがご本人は否定している。何か変だな?とは思うのだがメディアの踏み込み不足のため情報が入ってこない。
そこで根拠はないものの、小池百合子氏が「衆議院選挙に立候補したがっているのではないか?」という仮説を置くとすんなり説明できると気がついた。
と同時に「小選挙区制度」のありがたみについても感じた。かろうじて翼賛体制が防がれている。中選挙区制の地方議会では既にオール与党化が進んでいる地域がある。
今回、立憲民主党の一部議員がパーティーを強行するのではないかという報道が出ていた。強行されれば支持者の離反を招いていたはずだ。草の根運動が否定されると当時に立憲民主党の持つ「プロレス体質」に支持者たちが気がついてしまうからだ。
順番に説明してゆきたい。
東京都知事選挙が行われる。既に安芸高田市長の石丸伸二氏の出馬が決まっているが自民党が独自候補を出さず小池百合子氏も出馬を決めていない。立憲民主党などは「対立構造を作る」ことだけは決まっているが候補者選びは難航しているようだ。いずれにせよ小池百合子氏が出馬しないことには構造が決まらないため報道機関は焦りを募らせている。
おそらくマスコミは「与野党対決」を期待しているのであろうがそうなっていない。絵がなければ選挙報道は盛り上がらない。
ここに「小池百合子氏の出馬が目前でマニフェスト作りを進めている」という報道が出てきた。だが東京新聞によるとご本人はまだ決めていないと答えている。
何かおかしい。
当初はなんらかの派手な演出でも考えているのだろうかと思ったのだがおそらくそれはないだろう。3期目なので今までの都政の継続を訴えればいい。自民党も出ない上に野党もこれといった候補者を見つけられていないのだからおそらく新しい演出を加えなくてもかなり高い確率で3期目の当選は見込めるはずである。
つまり小池氏が出馬をもったいぶる理由はない。「何か他に理由がある」と考えた方が良さそうだ。
現在、岸田総理が国会会期末に解散を選択するのではないかと言われている。都知事選の公示は6月20日であり国会の会期は6月23日まである。
自民党はおそらく岸田総理ではもたないだろうが政治と金の問題に対する対応が消極的なこともあり自民党の中から新しいリーダーを選出するのは難しい状況になっている。そこで総裁選挙立候補の実績もある小池氏が無所属で衆議院選挙に出馬し負けた後に請われる形で首班に指名されるというシナリオが生じてくる。
あくまでも根拠なき想像であり「マンガ」のような話ではあるが、いかにも小池百合子さん好みのマンガだ。選挙区はどこでもいい。東京都全体が小池さんにとっては庭のようなものなのだろうから、これといった候補者がいない地区を選んで出ればいい。
しかし周辺は小池さんに都知事を引き受けてほしいと考えるだろう。ファーストの会は小池さんの支援に期待する。また自民党も小池さん以外の候補では負けてしまうかもしれない。ここで立憲民主党が有力な候補者を見つけて首都で勝利すればいよいよ「岸田さんの元では選挙は戦えない、自民党は終わりだ」ということになる。そこで「マニフェストを作っています」と宣伝することで既成事実化を図っているのではないかと考えられる。小池さんはギリギリまで待ちたいが周辺はそうではない。
あくまでも無責任な想像でしかないのだがこう考えるととりあえずは今の状況に説明はつく。
と同時に、立憲民主党などが決め手になる独自候補を持たないまま対決構造を作ろうとしている様子を見て、衆議院議員選挙における小選挙区制度のありがたみも感じた。対決姿勢を作らないことには「格好がつかない」のだ。
多くの都道府県や政令市では「共産党を除くオール与党体制」が敷かれている。首都圏でも千葉県・千葉市などはそうした体制になっている。立憲民主党の議員もおそらくは総与党の一員に加わり利益分配の恩恵を受けたいと考えているはずである。
ところが今回は事情が違っている。岸田政権が陥落寸前ということもあり立憲民主党にとっては政権も担えるかもしれないというチャンスだ。ここで「自民党も乗る(かもしれない)小池都知事に乗りました」では格好がつかない。
ではなぜこんなことになっているのか。現在の小選挙区は1名しか当選者が出ない。このためどうしても現状維持を訴える与党とそれに挑戦する野党という構造で選挙を行わざるを得なくなる。本音では馴れ合いたいと考えていてもそれが許されない仕組みになっているのだ。どうしても野党一党は「政権に挑戦する」という姿勢を打ち出さなければならない。
ところが実際には立憲民主党の中には本質的には自民党と考え方がそれほど違わない議員が含まれている。
岡田克也幹事長は草の根市民運動を背景にした立憲民主党の議員を全否定していた。「地べたを這うようにして無党派のご意見を伺うようなことはやりたくない」というわけだ。東京など一部地域の市民運動に蔑視感情を持っているのかもしれない。
岡田氏は、年に5回の政治資金パーティーを地元の三重県四日市市と津市、東京、大阪、名古屋で開催しており、これらを禁止した場合は「(スタッフを)大幅に減らさなきゃいけなくなる。今までの活動のやり方も変えなきゃいけない。草の根でご意見を聞くようなやり方はできない」と説明。
佐賀2区が選挙区の大串選対委員長もパーティーなしには選挙活動が維持できない。立憲民主党には草の根市民運動を背景にした議員もいるがそうでない人たちも相当数含まれている。地方にはそのような議員が多いのではないか。
実は地方を中心に有力な企業などに依存したいという気持ちを持った議員は大勢いるはずだが、小選挙区制度という形があるためにかろうじて与野党対立という形が温存されている。小選挙区制度がなければ地方を中心に総与党化が進み結果的に翼賛体制のようなものが作られていたのかもしれない。
泉代表は今回パーティーを一時容認したことでこの「プロレス体質」を露呈してしまった。とは言え支持者たちはそれを見て見ぬふりをして自民党を打倒したいと考えている。支持者の本格離反が始まる前に食い止めることができたのは不幸中の幸いだったと言えるだろう。