イランでライシ大統領と外務大臣が乗ったヘリコプターが「ハードランディング」した。墜落の同義語として使われることがあるそうだ。ヘリコプターはアゼルバイジャンで行われたダムの記念式典から帰る途中にイラン領内で消息を経った。大統領と外務大臣の安否は不明でイラン国営ファルス通信は「ライシ大統領らのために祈るように」と呼びかけている。大統領に不測の事態があれば、地域情勢が不安定化する可能性がある。
ライシ大統領はアゼルバイジャンのアリエフ大統領と会談しダムや発電所の完成式に出席した。イランの北部にはアゼリ人が大勢住んでおりアゼルバイジャンとの関係が深い。イランというとペルシャ人の国という印象があるがアゼリ人が全体の1/4を占めるという統計もある。山岳地帯を貫くようにしてアラス川が流れていてこの地域がイランとアゼルバイジャンの自然国境になっている。今回のダムや発電所はこの流域にあり共同で資源管理を行うことになっていた。
その後、大統領と外務大臣はヘリコプターでイランに戻るところだった。時事通信の報道時点では「濃霧のため作業が難航している」と書かれているが、アルジャジーラの速報を見ても未だ「安否不明」の状況が続いている。
現地では濃霧のため空からの捜索は難しい。墜落地は東アゼルバイジャン州スングン銅鉱山の近く。舗装された道路がなく悪天候でぬかるんでいるため陸路での救援も徒歩となるそうだ。イスラム革命防衛隊が救援チームを組織しているが大人数での捜索は難しい状況だと伝えられている。
イランは国民が選んだ大統領と政府をイスラム教指導者が指導するという専制主義の国だ。このため大統領の死が直接体制の混乱につながるわけではない。現在副大統領が現地に向かっており大統領が急死した場合には大統領職を引き継ぐことになっている。
アルジャジーラによると国民は「非常に不安な状況に置かれている」という。すぐさま状況が不安定化するとは考えにくいが事故によってイランの体制が不安定化する可能性がないとは言い切れない。
BBCはホセイン・アミール・アブドラヒアン外務大臣についても触れている。イスラエル・ガザ情勢が緊迫する中で同盟国だけではなくアラブ世界や西側の外務大臣とのコンタクト先になっていたようである。また革命防衛隊とも緊密な連携を築いている。
別のエントリーで触れるように、現在イスラエルの状況がかなり不安定化している。ここでイランと西側世界のパイプが切れてしまうと西側はイランやイスラエルが何を考えているのかがわからなくなってしまう。これは、地域の不安定化につながり、我々の経済にも影響を与えることになりかねない。