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高金利でもアメリカ経済が好調な理由と今後

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アメリカではFRBが金利を引き上げて経済を沈静化させようとしている。だがそれが必ずしもうまくいっているとは言い切れない。これまではミステリーのように扱われてきたが徐々にそのメカニズムがわかってきた。と同時に「これはおそらく持続可能ではないのではないか」と言うことも理解されつつあるようだ。

仮にこれが持続可能でないとしたらいつ「破綻させるか」が重要になる。バイデン政権のうちに破綻すればバイデン政権の「せい」にできる。

ロイター通信が「コラム:金利上昇でも来ない米景気後退、専門家の予想「外れた」訳は」と言う記事を出している。専門家のハードランディング予想が外れた理由を解説している。

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ロイターの記事を要約すると次の通りだ。

  • 超過準備が豊富なため金利の引き上げをしても市場に供給されるマネーの量に影響を与えない。実際には金融緩和政策が続いている状態と言ってもいい。
  • 金利が最低だった時期に固定で金利を支払っている人が多い。
  • バイデン政権が財政赤字を拡大され雇用と経済を膨らませている。

だがこの効果は薄れつつある。新型コロナ禍で供給された支援策の効果が徐々に剥落しているそうだ。また有利な条件を求めて変動金利でお金を借りていた商業不動産などはかなり返済に苦労している。

これを裏打ちする情報はいくつもある。アメリカはサブプライム層に住宅資金を貸し付けていた。これが破綻したのがサブプライムショックだった。オバマ政権で債務整理が行われ負担は政府に転移している。このため家計債務は2008/2009年ごろに一旦ピークを迎えその後急減している。さらに新型コロナ禍で家計債務は激減した。Bloombergの記事の最後にグラフがあり一目瞭然だ。

しかしながらこの家計債務が再び増え始めている。アメリカ人はローンを借金ではなく「信用力だ」と考える。このために借りられる枠があると積極的に借りようとする。この枠を使って積極的に消費するのがアメリカ流のやり方なのである。だから政府が家計の借金を肩代わりしても家計は新しい借金を積み重ねることになる。まだ経済を悪化させるところまでは至っていないが徐々に前の水準に戻る途中段階にある。

連邦裁判所はクレジットカードの延滞料金を抑えようとするバイデン政権の政策を違憲だと判断している。バイデン政権が再び膨らみ始めている家計負債を警戒していることがわかる。

The regulations, adopted by the CFPB in March, seek to cap late fees for credit card payments at $8, compared with current late fees of $30 or more. Although a bane for consumers, the fees generate about $9 billion a year for card issuers, according to the agency.

また初めて家を買う人たちに対する政府支援も検討している。既に住宅を持っている人たちは資産を増やすことができているのだが、ここに乗り遅れた人たちがいる。だが、こうした政策は全て家計から政府への負債の転移なのでインフレの原因となり将来の税負担になる。バイデン政権の場合はこれを富裕層が担うべきだと提案しているため共和党を支援してきた富裕層は出来ればバイデン政権ではない政権が誕生することを願っているだろう。

日曜日のABCニュースにも興味深い項目があった。全米の学校がレイオフを検討している。バイデン政権で始まった学校支援策の期限がくる。つまり政府の経済政策が切れると低所得の生活が破綻する可能性がある。

これが直接的に中間所得層の生活を破壊することはない。だが彼らは「いつかは自分達もそうなってしまうのではないか」と不安を募らせることになる。数々の裁判を抱えるトランプ氏に期待が集まるのはおそらくこのためだ。中間所得層はアメリカを再活性化させるためには低所得者や外国の支援ではなく「もっと抜本的な」改革が行われるべきだと考えている。そしてそれが何なのかと言う答えは持っていない。

トランプ政権は富裕層には都合がいい政権だ。伝統的な共和党支援者の富裕層は低所得者の面倒など見たくないと考えている。だがこれをストレートに伝えても富裕層と低所得者の対立を煽るだけである。だからこの構造を撹乱してくれる政治家が必要とされている。

おそらく今の問題は「これがいつ爆発するか」だろう。仮にこのまま11月を迎えてしまいなおかつトランプ政権に戻ると「トランプ政権になってから問題が再燃した」と思われかねない。おそらく共和党はバイデン政権のうちに問題を爆発させたいと考えているはずである。共和党の多くの議員がバイデン政権が要求する予算審議に応じないのにはおそらくそのような理由もあるのではないかと感じる。

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