先ほどアベノミクス批判の記事で河野龍太郎さんのアメリカ経済分析を利用した。ところがこの分析が間違っているのではないかと感じさせる動きがあった。雇用統計をきっかけに為替相場がドル安に動いたのである。失業率が市場予測より若干悪い内容だった。
これまでは簡単に仕事が見つかった。このため、安易に仕事探しを始めてしまった人も多いのではないかと思わせる内容だ。
ラディカル・マーケットの分析によると格差が拡大したことでプライム・エイジの労働参加意欲が減退した。だが、河野龍太郎さんの分析によると高齢者が退出したこととインフレによって賃金が上昇したことでプライム・エイジの人たちが労働現場に戻ってきていた。これが好調な企業業績を支えており従ってアメリカの経済は力強く成長するであろうという予測になっている。
これを踏まえると河野さんのように何らかの構造変化が起きてアメリカの経済は好調に推移するであろうと見ている人も多いのものの「これはやはり一時的なバブルではないか」と見ている市場関係者も中には多いのかもしれない。
だがやはりこれは一時的なものなのではないかと思える。
日経新聞が興味深い統計を出している。Googleトレンドで「仕事が見つからない」と検索する人がコロナ禍の前の水準に戻りつつあるという。しばらく人手不足の状態が続いたためちょっとした不満から離職してもすぐに次の仕事を探すことができるという状態が続いていた。だが、過熱感が和らいだことで「次が見つからない」という人が増えている可能性を感じさせる。労働者は周りの人の動向(例えば友だちの話)などをもとに状況判断をするわけだが、この状況は不完全なものであり時には行き過ぎることがある。不完全な情報はやがて補正されるので「いずれはもとに戻る」と期待できるだろう。
結果的に為替相場は動揺し一時151円台までドル安が進んだのち現在は152円後半までドルが回復している。
仮に「ユーフォリアに陥った求職者が困っている」だけであればおそらくこの数字はスタグフレーションを示すものにはならないだろう。このため消費者物価指数など次の指標に注目が集まっているそうだ。
このように現在のアメリカ合衆国の経済は「何だか今までとは違うがそれが何によって引き起こされているのかよくわからないために一時的なものなのか構造的なものなのか判別できない」状態になっている。
日本政府が打ち手を欠く状態になっているため円の価値はほとんどアメリカ経済の動向によって大きな変動を繰り返している。また新NISAなどの導入で為替相場によって国民資産が大きく変動するという状況も生まれている
。このため日本人もなぜか本来あまり関係ないはずのアメリカの経済について理解を深めなければならない。冷静に考えてみれば不思議な状況になっている。