やはり「残念な人止まりだったか」と思った。国民民主党の玉木雄一郎氏である。長崎3区・島根1区・東京15区で補欠選挙が行われた。投票が終わった午後8時に開票結果が出ることをゼロ打ちというそうだが3選挙区ともにゼロ打ちとなり立憲民主党の勝利ということになっている。
立憲民主党が勝利を収めた一方で同じ連合が支持母体となっている「兄弟政党」である国民民主党は残念な結果に終わった。さらに言えば今回は玉木氏が焦って情報発信をすればするほどその残念さぶりだけが浮かびあがるという極めて残念な構図があった。
何かが決定的に間違っているわけではない。全て「なんとなく惜しい」のだ。
玉木雄一郎氏は大蔵省・財務省出身の官僚で経済政策の立案や法律について高い見識を持っている。憲法改正に関する議論も的確だ。だが、その魅力が地元以外の有権者に全く伝わらない。日本人は政治家に法律知識や高い見識を期待していないからなのだろう。これが必ずしもいいこととは思わないが、その中で戦う必要がある。
「国民はどうせ難しいことはわからないだろう」と考える玉木氏はSNSを使って新しい支持層を獲得しなければならないと強く思っているようだ。よく彼の支持者がビデオフッテージを流している。同僚議員に「炎上しても拡散してなんぼだ」というようなことを主張するビデオを見でドン引きした。おそらく支持者は良かれと思ってやっているのだろうがもうあれはやめた方がいいと思う。
ただこういう人は世間では珍しくない。
大企業出身のエリートでビジネスプランニングなどが上手な人が自分でベンチャー企業を起こすことがある。中には結果を出す人もいるのだがそうでない人も多い。玉木さんはこの「そうでない人」にそっくりである。
ビジネスプランニングの緻密さは大企業にいてこそ活かせる能力である。ところが民草に紛れて泥水を啜っている間に気持ちが荒んでゆき「あの人は乱暴な人なのだ」という評価だけが残る。
この手の人が次に考えそうなことが「アライアンス(提携)」である。表紙を立てて参謀になろうとする。この提携でうまくゆく社長も多いがここでも人を見る目がないという人がいる。
主語が国民民主党なのか玉木さんなのかはわからないが彼らが目をつけたのが小池百合子東京都知事と乙武洋匡氏だった。どちらも発信力に長けており「これは勝ち馬なのでは」と感じた人も多かっただろう。しかし結果的には「外からやってきた人たち」という印象しかつかなかった。
今回の時事通信の調査では自民党の支持者たちは維新・日本保守党・ファーストに分散した。保守の人たちの得票は分散したが立憲民主党が票数を伸ばしていないことを考え合わせると勝てるチャンスはあった。しかしながら今回の選挙では自民党が分配している利権に期待できないと考える実利層やこんなことでは「おてんとうさま」の下で自民党支持と言えないと考える人たちが選挙にいかなかった。このために結局リベラルが勝ったのである。
どうも様子がおかしい。
さらに、途中から選挙自体が荒れ始める。ページビュー稼ぎと見られる人たちが外から入ってきた。彼らは選挙中に警告を受けていたそうだ。玉木氏は「これで拡散力が期待できる」と考えたのだろう。選挙妨害に立ち向かうために乙武氏を応援してくださいというチグハグなメッセージを発信してしまった。選挙や民主主義全般のことを考えず「自分の都合」で動いてしまった。これも残念な動きだった。
おそらく玉木さんの「残念さ」は玉木さんが持っている「所詮SNSってこんなもの、所詮有権者ってこんな感じ」という侮りが彼の笑顔から滲み出てきたところにある。
有権者は「誰に票を入れたら自分に最も都合がい行動をとってくれるのだろうか?」ということを慎重に選んでいる。おそらく最も重要なのは個人的なつながりや利権なのだろうが、それが望めない人は「似たような属性」を持つ人を選ぶ。今回はつながりや利権に期待する人が投票に行かず、属性で選んでいる人は立憲民主党の候補を選んだ。こうした環境下では玉木さんも乙武さんも「外からやってきて小賢しく状況を利用した人」扱いとなり有権者からは有効な選択肢とは見られなかった。
今回の失敗はおそらく玉木代表を続投させるかという議論につながるはずだが、国民民主党はもう一度議員一人ひとりが「どこで戦うべきなのか」を決めた方がいい。
少なくとも玉木雄一郎さんはベンチャー起業家ではなく退屈な組織の中で若干尖っている経営企画室の人といった感じの人に見える、おそらくそれぞれの議員にもそれぞれの特質が生きる場所が見つかるはずである。この際、頭を下げて立憲民主党に入れてもらうというのも選択肢なのではないだろうか。
Comments
“残念な人どまりだった玉木雄一郎代表 乙武洋匡氏の得票は伸び悩み” への1件のコメント
私がこのブログとともによく読ませてもらっている、kojitaken氏のブログに玉木氏に触れた記事がありました。
https://kojitaken.hatenablog.com/entry/2024/04/13/103715
氏の見立てが正しければ、玉木氏が立憲民主党入りする可能性はゼロということになります。
kojitaken氏は右から左まで多くの政治家や評論家同士の関係性に言及していて、自分も氏の分析を参考にしています。氏は明確なリベラル派ゆえに玉木氏、泉氏、また音喜多氏いずれに対しても明確なアンチなのでhidezumiさんとは意見が異なりますが。
ちなみに上記ブログには、過去に防衛費増額に関するhidezumiさんの記事をコメント欄で紹介させてもらった事があり、kojitaken氏の記事にも引用されていました。