岸田総理が円安を放置したままで6月に総選挙に突入するかもしれない。火の玉になった岸田総理が国民生活を巻き込んで政権維持がかかった選挙に突入するのではないかという印象を持った。
この結論だけを聞くと何だかよくわからないと思うので順を追って説明したい。
なお、このエントリーに為替介入の話を入れ込むと話が複雑化しそうなので(金融に興味がある人がどれくらいいるかはよくわからないが)介入の話は別のエントリーを立てたいと思う。
毎日、Quoraのスペースのために記事を整理している。先日の1ドル155円突破でコメント欄が忙しかったせいもあり「この話題を一度まとめておくか」と思った。結論だけを書くとアメリカの利下げが予定通りに行われるかが怪しくなっている。
ところがこれとは別に総選挙が6月に行われるかもしれないというニュースを扱った。ふと、これを合成すると経済対策が整理されないうちに総選挙突入という構図ができてしまうなあと感じた。おそらく、選挙情勢はかなり混乱するだろう。有権者は現在の金融・経済状況がよくわかっていない。にもかかわらず全く生煮え(あるいは調理すらされていない)政策集が提示された上で選挙に突入する可能性がある。選挙は大混乱するだろう。
前提条件はアメリカの金利の高止まりと為替介入の難しさだ。だが、これについてはこのエントリーに混ぜ込むと長大な文章になってしまうので割愛することとする。
日米金利差が縮まらないという前提のもとで「何らかの経済対策を立てなければならないのではないか」と言う声が自民党内から高まっている。 新藤経済再生担当大臣が日銀の政策決定会合に参加することからも具体的な円安対策が念頭にあることがわかる。
自民党の政策通も何らかの対応が必要なのではないかと言っている。越智氏は経済対策ではなく金融政策の政策通である。
ところがこの越智氏のインタビューに不穏な表現がある。
自民党の内部で「どのくらいの為替水準になったら検討を始めるか」と言うコンセンサスがないようなのだ。政策決定の担当者が水準について名言しないこと自体には違和感はないが、本当にコンセンサスがない可能性も否定できないのではないかと思う。
自民党はもともとを政策通と呼ばれる人たち(インナーと呼ばれたりする)がキーになる政策を主導する体制だった。だが安倍政権下で全員参加型に変わりつつある。民主的といえば聞こえはいいのだが政策について理解していない人たちが「常識」に基づいて口を挟むことが増えている。このため党内で政策議論をすると「エッジの効いた」あるいは「的を射た」政策はでてこなくなった。全ての政策が妥協の産物になってしまうのだ。安倍政権下の岸田政調会長はこの調整に苦労してきた。
今回の対策についてこの「妥協的なポジション」を代表しているのが片山さつき議員だ。ご本人は官僚出身なので政策は理解しているのだろうが「有権者はこう言う話を聞きたがっているんですよね」と言う安易なポジションを取ることが多い。今回は「利上げはやらない」「プレミアム商品券やポイント還元などを実施する」のがいいのではないかと言っている。
政府の追加支出はインフレ下ではインフレを加速させるためバラマキは悪手なのだが有権者はデフレ型の経済政策の続行を求めている。つまり片山氏の政策は支持される可能性が高いといえるだろう。
本来ならば党内のバラバラな意見をまとめ上げるのが岸田総理の役割だ。だが、おそらく既に総理の求心力は失われている。このため、将来に向けた増税議論を行いながらデフレ的な物価高対策も実行すると言うチグハグな経済政策が提示される可能性が極めて高い。
しかし、これはそもそも岸田総理が政策をまとめることができればの話である。
おかしな話が出てきた。
「岸田総理が解散を諦めた」「岸田総理は6月に解散を強行する」と言う相矛盾する説が出ている。木原誠二幹事長代理は都内の会合で「今選挙をやると政権交代になってしまうかもしれない=つまり自民党が下野するかもしれない」と危機感をあらわにする。岸田総理の側近であるとされておりその発言は総理の意向として注目される。東京15区の選挙情勢などをみながら自民党都連は逆風を感じていると言う事情もあるのだろう。
一方で、自民党は「氷代」と呼ばれる支出を6月に前倒しすることにした。つまり近々何かお金が必要なこと=選挙が行われるであろうということになり「岸田総理が選挙を強行するのではないか」ということになる。
こうなると木原氏が総理の意向を代弁する形で「選挙はできない」と言っていると言う呵責は消え、側近が諌めるのを無視して総理が選挙に突っ走ろうとしていると言う真逆の話に変わる。突発性決断症候群と言われる岸田総理ならこんなことも起こりかねない。
もちろんこれがすぐさま総選挙に直結するわけではない。時事通信の記事は気になることを書いている。補選を前に執行部の求心力を高める狙いがあるという。補選で自民党が負けた場合に一気に「岸田おろし」が広がる可能性がある。議員たちを黙らせるためには執行部が公認権をちらつかせるのが効果的だ。しかし裏を返せば選挙を持ち出して党内を恫喝しなければまとまらないほど自民党が弱体化していると言うことを意味している。
こうなるととても国民への説得が必要になる円安対策や経済対策などまとめることはできないだろう。経済対策がまとまらないまま岸田総理が追い込まれて解散を選択するというシナリオが浮上したということになってしまう。
仮にこのシナリオが選択されると有権者は一体何を選べばいいのかが全くわからなくなってしまうだろう。自民党に具体的な将来ビジョンがなければ当然野党もポジションの取りようがない。